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学資保険や医療保険…子どものための保険、何を優先して考えるべき?

そなえる 権藤 知弘

学資保険や医療保険…子どものための保険、何を優先して考えるべき?

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新学年を迎え、子どもの保険をどうしようかと考えているご家庭も多いのではないでしょうか。今回は子どもの保険のあれこれについて説明していきます。

子育て世帯の保険料と死亡保険金の平均

子育て世帯といっても各家庭の状況は多種多様なため、生命保険文化センターが発表している2022年度の世代ごとの保険料と死亡保険金額の平均値を見ていきましょう。

年間払込保険料(全生保、性・年齢別)

生命保険および個人年金保険料を合わせた、一人あたりの年間保険料の平均値です。

表:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/2022(令和4)年度を参照し筆者作成

あくまでも平均値ですが、老後に向けての準備である個人年金の保険料を含むため、どの年代も高額になっています。

生命保険加入金額

続いて生命保険における年齢層別の死亡保険金額の平均値の違いを見ていきましょう。

表:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/2022(令和4)年度を参照し筆者作成

年代ごとに異なりますが、一般的に子育て世帯が多い30~50代のご家庭では一定の死亡保険金額を確保しているようです。ただし注意しなければならないのが、図の平均保険金額はあくまでも平均値であることです。そのため各ご家庭の必要保障額を満たしているかは不明です。

子どものための保険にはどのようなタイプの保険がある?

代表的な子どもに関連する保険を紹介していきます。

1.学資保険

子どもの教育資金を準備する方法に特化しているのが学資保険です。

2.医療保険

病気やケガなどで入院した際に給付金を受け取れる保険です。

3.傷害保険

ケガで入院した場合や通院した際に給付金を受け取れる保険です。

4.個人賠償保険

子どもが自転車事故で誰かを傷つけたり、何かを壊したりした際などの賠償が必要な際に使う保険です。

子どもの保険加入を考えるためのポイント 

保険
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子どもに限らず大人も含め、保険に加入する際は「何が目的で保険に加入するのか?もし保険に加入するのであればいつまで必要なのか?」ということをしっかり考えましょう。

そもそも論になりますが、保険は生命保険と損害保険に大きく分かれます。なんとなく「子どものために保険を」ということであれば、まずはなんのために保険に入るのかをハッキリさせましょう。

病気やケガなどに備える医療保険や傷害保険のほかに、学資保険のように将来の教育費を準備するための保険もあります。そのため、病気やケガに備えるものなのか、もしくは将来の教育費に備えるものなのかによって選択が異なってきます。

加入の目的

1)    入院保障がほしい
医療保険が該当します。病気やケガで入院した際に給付金を受け取れます。現在、子どもの医療費は無料になったり、入院時の負担が少額で済んだりするような助成制度が全国の全自治体で準備されています。助成制度を考慮すると積極的に加入する必要性は低いのではと考えます。

2)偶然の事故に備えたい
傷害保険が該当します。傷害保険は補償対象が偶然の事故などによるケガに由来するものに限定されます。したがって病気での入院には対応していません。

3)教育費を準備したい
教育費を準備する手段として、よく利用されている保険が学資保険です。人気の学資保険のタイプは、「子どもが誕生のタイミングで加入、0~10歳まで保険料を支払い、17歳や18歳で満期祝い金を受け取る」というものです。

以前は支払った保険料に対する満期祝い金の増え方が良かったのですが、近年の増え方は残念ながら芳しくありません。生命保険会社や商品によって少々異なりますが、子どもの年齢が0~10歳までの期間に支払った保険料が100万円とすると、17歳時に受け取れる満期祝い金は102万~106万円程度です。

このように「お金を増やす」という意識で選択するには少々物足りませんが、投資信託などと異なる点は、加入時に将来の受取金額が確定していることに加え、もし契約者(親権者)が亡くなったとしても満期祝い金分の教育資金が準備できることです。

4)個人賠償責任保険
不慮の事故により第三者にケガを負わせたり、他人の財産を破損させたりした時など法律に基づく損害賠償責任が発生するケースに対して、その損害を補償する保険です。お店で代金を支払う前に商品を落とし壊してしまったり、自転車に乗っていて歩行者をはねてしまったりといったケースを対象にしています。この保険は火災保険や自動車保険などの特約で加入していることが多く、同居の家族(保護者)が契約していれば、子ども単独で契約する必要はありません。

加入の期間

「子どもの保険はいつまで親が面倒を見るか?」ということも考えておきましょう。

1)医療保険や傷害保険
保護者がフォローするのは学校を卒業するまでで良いと考えます。社会人として収入を得るようになったら、子ども自身に考えさせましょう。

2)個人賠償責任保険
子どもが遠隔地の学校に行くために別居しているケースでも、生計が一ということであれば保険の対象です。学校を卒業し、別居で生計が独立した場合は対象外になります。その段階でなにかしらの賠償保険に加入しておくと良いでしょう。

子ども医療費助成制度とは?

全ての都道府県および市区町村で子どもを対象にした医療費の助成制度が導入されています。対象になる年齢や助成される金額は自治体によって異なりますが、中学校や高校を卒業するまで助成するという自治体が多いようです。なお助成されるのは医療費のみで、差額ベッドや食事代などは対象外です。

下記の表はこども家庭庁が発表したこども医療費に対する市町村による援助の実施状況(2023年4月現在)です。

表:こども家庭庁「こども医療費に対する援助の実施状況」を参照し筆者作成

お住まいの自治体では何歳まで助成があるかご存じでしょうか?自治体により異なりますが、大部分のご家庭では、中学卒業までは子どもの医療費についての心配は少ないと思います。そのため、子どもを対象に医療保険や傷害保険に加入する必要性はそれほど高くないのではと考えます。

もし子どもを対象にした医療保険や傷害保険の加入を検討するのであれば、お住まいの自治体の助成期間が終了するタイミングで良いでしょう。ちなみに保険会社によって若干の違いはありますが、乳幼児や小学生と高校生の医療保険の保険料を比較しても大差はありません。そのため「年齢がアップすると保険料が高くなる」といって慌てて契約しなくても大丈夫です。

子どもを対象にした保険、加入検討の優先順位は? 

番号が書かれた木のブロック
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医療費の助成を受けている期間は、医療保険や傷害保険などへの積極的な加入は必要ないと考えます。ただし子どもが入院するような場合、保護者が仕事を休んで付き添うということもあるでしょう。子どもが入院して、付き添いの関係で収入が減少したら困るかも、という場合は子どもを対象にした医療保険に加入するという選択もあるかもしれません。

いずれにしても、子どもを対象にした保険に加入するという場合、その優先順位はどうなるでしょうか?以下は筆者が考える優先順位です。

1.個人賠償保険

火災保険や自動車保険の特約として含まれていれば、別途の加入は必要ありません。第三者に迷惑をかけてしまったという場合のために準備しておきましょう。日本の社会保険制度では、医療の面には各種の手当てがありますが、損害を第三者に与えたといった場合のサポートはありません。そのため個人賠償保険など、第三者への賠償に備える保険には必ず加入しましょう。

2.学資保険

子どもの教育資金の準備と親権者の万が一に備える保険です。ただし保護者の死亡保険の保険金で教育資金をカバーできていれば、学資保険にこだわる必要はありません。近年は学資保険ではなく、NISAを活用し、株式と債券を組み合わせたバランス型の投資信託の積み立てで教育資金を準備しているご家庭が増えています。

3.医療保険

優先順位は高くありません。子ども自身の医療費というよりも、子どもが入院したときの保護者の収入の減少に備えるためという考え方です。また上述したように、入院中の食事代や差額ベッド代などは助成の対象外なので、そこをカバーするという目的で加入するということもあるでしょう。

保険にはそれぞれの使用目的や保障・補償の対象があります。各ご家庭によって優先されるものは異なるので、よく考えてみましょう。

子どもの保険についてよくある質問

次に、子どもの保険についてよくある質問や相談をご紹介します。

Q:子どもの教育資金を準備するために、学資保険の加入は必須でしょうか?

A:必須ではありません。よくあるケースですが、児童手当で受け取ったお金をそのまま学資保険の積み立てに充てるということがあります。この場合、お金が増えやすいかと考えると残念ながら難しいです。単純に児童手当を貯金した場合、約200万円を貯めることができます。また新NISAなどを活用して積み立てしても良いでしょう。いずれにしても「お金を増やす」という目的で、積極的に学資保険を利用するということは優先順位としては高くありません。

Q:子どもが学校からPTA総合保険のチラシをもらってきました。加入した方が良いですか?

A:いくつか種類がありますが、PTAが主体になって取りまとめしている保険があります。病気・ケガでの入院や通院・個人賠償保険などがパッケージになり、保険料も団体割引が適用されて手軽なものが多いです。お住まいの地域の子ども医療費助成制度や、ご家庭で個人賠償責任保険に入っているかなどを確認したうえで加入の判断をすると良いでしょう。

Q:子どもが自転車に乗るようになりました。自転車保険はどうすれば良いですか?

A:自転車も立派な軽車両で、事故の加害者になることも多いです。そのため全国の自治体で自転車保険の義務化が進んでいます。自転車保険の一般的な補償内容は、加害者になった場合の相手への賠償と自転車に乗っていた人のケガなどの治療費をカバーするといったものです。そのため自転車に乗る人には必須の保険ですが、火災保険や自動車保険で個人賠償責任特約を付与していれば、第三者への賠償という部分はカバーされています。したがって個人賠償責任保険(特約)に加入していれば、自転車に乗る人への傷害保険の部分が必要かどうかで判断しても良いでしょう。もし何も加入していないということであれば、自転車保険に必ず加入しましょう。

まとめ

個人的には、子ども自身のための保険はそれほど必要ではないと考えています。ただ、「子どものために何か入っておいた方がいいかも」という親心はもっともなものだと思います。その上で何かオススメがありますか?ということであれば、都道府県の共済組合や各地の生活協同組合(コープ)が用意している子ども向けの共済や、PTAが募集している保険で十分だと思います。子ども共済は病気やケガでの入院が保障され、個人賠償責任をオプションで付与するといった契約ができます。また営利企業ではないので、保険料も割安です。

いずれにしても「子どもが事故を起こし加害者になった。その際にきちんと相手に賠償をする」ということが担保されていれば、その他の保険は無理に契約する必要はないでしょう。また将来の教育資金を準備する方法も学資保険にこだわる必要はありません。子どもを保険に加入させる目的と必要性について、よく考えてみましょう。

子どもの保険に関するその他のQ&A

Q:乳児医療証とはなんですか?

A:各自治体では子どもの医療費の助成を行っています。助成を受けるためには、あらかじめ各自治体へ申請しておく必要があります。申請が許可されると「乳児医療証」か「子ども医療証」が発行され、医療機関に提示することで助成を受けることができます。

Q:配偶者の扶養に入ると保険証は変わりますか?

A:配偶者の扶養に入ると保険証が変わります。保険証に「家族(被扶養者)」と表示されます。また保険証の発行元は配偶者の勤務先になります。