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えっ、子供の保険が知らない間に3億円補償に⁉/FP家計簿相談

うちの家計簿 世継 祐子

えっ、子供の保険が知らない間に3億円補償に⁉/FP家計簿相談

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FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿を、mymoで診断する【うちの家計簿】。今回は夫と子供2人の4人家族、パートタイムで働く34歳Yさんの家計簿です。

30代パート勤務Yさんの相談内容

次男が今年の春から幼稚園に入園するのですが、入園前に保険を勧められ、加入を検討しています。親の目が届かないところで、お友達にケガをさせてしまわないか心配で、そういった場合の子供の保険を準備しておきたいのですが、検討するときのポイントはありますか。

車のローンがまだ3年近くあり、なかなか貯金ができない状況なので、子供の保険もできるだけ無駄のないように加入したいと思っています。年収は夫が380万円、私が80万円程度です。

Yさんの家計簿は・・・?

収入合計は夫婦の手取り29万7700円、月あたりの児童手当2万円を合わせて31万7700円です。収入の約6%にあたる2万円を貯金しています。

友達にケガをさせてしまったり、物を壊してしまった場合の保険は

怪我をしたクマのぬいぐるみ
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幼稚園に入園して集団生活が始まり行動の範囲が広がると、誤って友達にケガをさせてしまったらどうしよう、と心配になりますね。日常生活の中で他人の「からだ」や「もの」に損害を与えた場合に補償される保険を「個人賠償責任保険」といいます。自転車に乗っていて、歩行者にケガをさせてしまった場合も補償の対象となります。

既存の保険で「特約」として加入していないかチェック

「個人賠償責任保険」は火災保険や自動車保険、傷害保険などに特約として付加されている場合が多いため、加入していることに気が付いていない方が多い補償でもあります。また、クレジットカードの付帯サービスのひとつとして、「個人賠償責任保険」の補償が付帯されている場合もあります。

すでに加入している保険に「特約」として加入していないか、クレジットカードのサービスについても内容を確認してみましょう。保険会社によっては「個人賠償責任保険」ではなく「日常生活賠償補償」などと記載されている場合もありますので補償内容の説明も注意して確認することが大切です。

Yさんはすでに3つの個人賠償責任保険に加入済み

Yさんの加入中の保険を確認したところ
①火災保険(対象:家財道具) 特約補償あり保険金額 1億円
②自動車保険         特約補償あり保険金額 1億円
③自転車保険         特約補償あり保険金額 1億円
合計3件の個人賠償責任保険に加入していることがわかりました。
① +②+③で合計3億円の補償がある保険に加入していることになります。

複数の保険会社から支払われるの?

お金を支払う男性
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Yさんのように複数の保険契約で同じ事故を補償する保険にしていた場合の注意点があります。この補償は実際の損害額を補償する保険のため、複数の保険会社から保険金が支払われ、実際の損害額よりもたくさん保険金がもらえるようなことはありません。

たとえばYさんは3件の保険に加入してそれぞれ保険料を払っていますが、Yさんが仮に5000万円の賠償責任を負った場合には、3つの保険会社から総額5000万円の保険金を受けとることになり、5000万円×3件=1億50000万円が受け取れる訳ではありませんので留意しましょう。

自転車での衝突事故などは1億円近い高額な賠償事例も発生しているため、保険金額が十分か内容を確認して、カバーしたい金額を補償できる保険に1つ加入しておけば十分であることを知っておきましょう。

保険金額も補償限度額が設定されているものもあれば、無制限で補償されるものもあります。補償限度額を確認した上で保険を選択することが大切です。

補償の対象となる人は?

一般的に「生計を共にする同居の親族」が補償の対象となります。Yさんが個人賠償責任保険に加入していれば、夫や同居している子供も補償の対象となります。また、同居をしていない場合でも親から仕送りを受けている、未婚の子供も補償の対象となります。

「生計を共にする同居の親族」に限定せず「同居の親族」であれば補償の対象となる保険もあります。保険会社、保険商品で保険金額や補償内容もさまざまですので、必ずパンフレット、約款などの重要事項には目を通し、内容を確認しておきましょう。「この場合は支払われますか?」など心配な事例について具体的に担当者に確認しておくと安心です。

保険加入時の注意点

Yさんは①の火災保険は現在のお住いの賃貸契約時に加入していましたが、補償の内容は理解しておらず、特約などが付帯されていたことに気が付いていませんでした。

②の自動車保険は車を購入したディーラーさんで加入をしていましたが、自動車保険は自動車の事故だけを補償するものと思っていたとのことです。

③は自転車保険の義務化に伴い加入されたとのことですが、対面での説明のないネット保険で時間をかけずに簡単に申し込みをし、補償内容にもあまり目を通していなかったため、自転車の事故のみ補償されると思い込んでいたとのことでした。

それぞれの保険の内容に問題があるわけではありません。
ただ、保険加入の入り口がそれぞれ違ったため、すでに加入済みの保険の内容を知らない方から新たに保険加入を勧められたことや、Yさん自身もすでに加入していることに気が付いていなかったことも原因になったと考えられます。

月々の金額が少額でも、重複して加入すると無駄な保険料を支払うことになってしまいますので、補償内容を確認して最適な保険のみを残し、必要のない特約は解約するなどして整理していただくのがよいと思います。家族で情報を共有しておくことも大切です。

示談交渉サービスの有無も確認を

交渉する男女
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示談交渉サービスとは、子供が友達にケガをさせてしまったなど、加害者となってしまい法律上の賠償責任が発生した場合に、保険会社が保険の対象となっている加害者のかわりに相手と示談交渉などの手続きを行うサービスのことです。

加害者と被害者の当事者同士では落ち着いて話すことや、冷静な判断や適切な対応をすることが難しい場合もあるため、示談交渉サービスが付帯された保険を検討することをおすすめします。

手取りの1割は先取り貯金を

車のローンを抱えていることもあり、貯金が手取りの6%にとどまっています。
子供が中学生になると教育費の出費なども増え、今よりも貯金が難しくなることが考えられます。まず手取りの1割は先取り貯金をするようにし、残りの金額でやりくりするように検討してみてください。

今貯金できている2万円に1万2800円を加えて貯蓄することを考えてみましょう。通信費も再度見直しを検討し、光熱費も電気代が安く済むLED電球に替えてみるなど無駄な使い方がないか確認してみましょう。レジャー費用も先取り貯金をしたあとのお金の中の予算で楽しめるものがないか考えてみてください。

アドバイスを受けたYさんの感想

まさかすでに同じ補償がある保険に3つも加入していたなんて。驚きました。「特約」の補償なんて気にしたこともなかったです。長女も幼稚園や小学校に加入するときに案内があったので、子供一人一人に加入するものだと思っていました。

「先取り貯金」ですね。児童手当分だけ貯めておけばいいかな・・・となんとなくそのままにしていたので先に貯金するようにします。いままでは先につかって、余ったら貯金しようと思っていました。順番が大事なんですね。

家計簿診断を終えて

貯金をするためには「習慣」付けが大事なので、まず手取りの1割という具体的な数字の目標をもって、余った分で生活するようにしてみてください。

「個人賠償責任保険」は1世帯で重複して加入している場合があります。「個人賠償責任」など、普段使わない言葉なので補償内容を想像しにくいこともあるかもしれません。

保険に加入する際は、補償の「支払い事例」なども確認しておくと加入後の請求漏れも少なくなります。加入していることに気が付いていないと、請求することもできません。保険の無駄も上手に省きたいですね。