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日銀の利上げ、奨学金への影響は?返済金額はどのくらい変わる?

かりる 白浜 仁子

日銀の利上げ、奨学金への影響は?返済金額はどのくらい変わる?

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奨学金の返済は、借入額に加えて金利の支払いが発生するのが通常です。その奨学金の金利は、日銀の利上げなどの影響で返済中に利率が上がる返済タイプもあります。利率が上がると奨学金の返済はどれくらい負担が増えるのでしょうか。奨学金の基本的なことを確認しながら、シミュレーションして見ていきましょう。

奨学金の種類、対象者

奨学金といえば、日本学生支援機構(JASSO)の制度が有名で、多くの人が利用しています。JASSOの奨学金は返済不要な「給付型」と「貸与型」の2種類が準備されています。

給付型は住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯で、学ぶ意欲がある学生が対象となっています。授業料や入学金の免除・減免も受けられるため、家庭の事情によって進学を諦めなくて良いようになっています。給付額や免除額は所得の状況によって異なります。

次に貸与型を見てみましょう。貸与型は、無利子の第1種と金利が付く第2種があります。第1種は利子の負担がない分、所得要件が厳しく、成績は5段階評価の3.5以上でなければなりません。第2種は利子負担がありますが、所得要件が第1種より緩やかで、成績も平均水準以上あれば良いため利用しやすくなっています。

奨学金の利息(利率)の仕組み 

奨学金
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奨学金の利息は次の2つの算定方法があり、申込時にどちらか選択します。

・利率固定方式
・利率見直し方式

「利率固定方式」は、奨学金の貸与終了時に決定した金利が返還終了まで続きます。

「利率見直し方式」は、奨学金の貸与終了時に決定した金利が概ね5年ごとに見直されるタイプです。5年後の市場金利(世の中の金利)が上昇していたら奨学金の利率も引き上げられ、低下していたら引き下げられます。ただし奨学金の利率は上限が3%と定められているため、市場金利が上昇し続けても利率が上がり続けるわけではありません。

なお、利率の算定方法は申込時に選択しますが、変更することは原則可能です。ただし、貸与期間が終了する年度の定められた期日、つまり大学生なら4年生の4月から申し出ることができます。期限は年度ごとに異なるため、最終学年になったら早めに学校に確認しましょう。

奨学金の返済は貸与終了から7カ月目に返済がスタートします。3月に学校を卒業したら、10月から返済が始まるため、新社会人の生活が少し落ち着いた頃からという感じです。

日銀の利上げで奨学金の利率は変わる?

奨学金の金利は毎月公表されています。では、この金利はどのように決まるのでしょうか。奨学金の利息の算定方法は、利率固定方式と利率見直し方式があることは前述の通りですが、これらの金利は国債の利回りを指標に決められています。

利率固定方式の場合は「10年物国債利回り」、利率見直し方式の場合は「5年物国債利回り」が指標です。奨学金の金利の行方を知りたい場合は、日々の国債の利回りをチェックしておくとよいでしょう。

国債の利回りは世の中の景気動向に左右され変化していきます。本来は市場による国債の需給によって利回りが変化するものですが、これまで日銀が金融政策として一定の関与をしてきた経緯があり、金利が低く保たれていました。しかし、2023年頃から日銀の政策変更によって徐々に国債の利回りが上昇傾向にあります。

【シミュレーション】利率見直し方式、金利上昇で返済額はいくら増える?

5年ごとに利率が見直される利率見直し方式で返済する場合、金利上昇が続くと負担はどれくらい増えるのでしょうか。まずは現在(2024年8月の貸与利率)の利率固定方式の返済額を確認したうえで、利率見直し方式で金利が上昇した場合の負担をシミュレーションしていきましょう。

【前提条件】
・借入総額:384万円(月8万円×4年間)
・返還期間:20年
※据え置き期間の利息を考慮せずに試算

利率固定方式(金利1.210%・2024年8月利率)

金利1.210%で試算すると、月返済額と利息総額はこのようになります。

月返済額:1万8022円
利息総額:約48万500円

次に、利率見直し方式で金利が5年ごとに0.5%、0.75%、1%ずつ上昇した場合の返済負担と比較するとどうでしょうか。

利率見直し方式(金利0.5%・2024年8月利率)

①    5年ごとに0.5%上昇する場合
当初~:0.5%
6年目~:1%
11年目~:1.5%
16年目~:2%

月返済額:(当初)1万6817~(16年目以降)1万8111円
利息総額:約37万6000円

①のケースでは、最終的に2%まで金利が上がっても利率固定方式より10万9000円返済額が少ないことが分かります。

②    5年ごとに0.75%上昇した場合
当初~:0.5%
6年目~:1.25%
11年目~:2%
16年目~:2.75%

月返済額:(当初)1万6817~(16年目以降)1万8785円
利息総額:約46万9000円

②のケースでは、最終的に2.75%まで金利が上がりますが、それでも利率固定方式より1万6000円返済額が少なくなります。

③    5年ごとに1%上昇した場合
当初~:0.5%
6年目~:1.5%
11年目~:2.5%
16年目:~3%(上限)

月返済額:(返済当初)1万6817~(16年目以降)1万9239円
利息総額:約54万9000円

③のケースでは、最終的に上辺の3%まで金利が上がることによって、利率固定方式より6万4000円返済額が多くなります。

今後の金利上昇のペースは誰にも分かりませんが、まずは参考にしてください。なお借入金額が多くなるほど、返済期間が長くなるほど、金利の負担総額は重くなります。

利率固定式と利率見直し方式、どちらを選べばいい?

シミュレーションでも分かるように、利率見直し方式より利率固定方式の方が金利は高く設定されています。どちらがお得かは今後の金利動向次第のため悩ましいところです。

例えば「今後の金利上昇に不安を感じる」「金利上昇が続き、早い時期に今の利率固定方式以上に金利が上がるだろう」と考えるなら、利率固定の選択が安心です。「金利はそれほど上がらない」「上がっても急激に上昇するものではない」と考えるのなら、利率見直し方式を検討すると良いのではないでしょうか。

利率上昇で返済額が増加、対応策は? 

上昇
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返済負担が増えることを回避したい場合は、奨学金の利率が上がった時に繰り上げ返済をすると良いでしょう。前倒しで返済することになるため、返済期間が短くなり、結果として利息の負担総額を抑えられます。

しかし奨学金の繰り上げ返済をすることによって、手元資金が不足して他にローンを借りなければならなくなる可能性はないか必ず確認しましょう。奨学金は相対的に低金利のため、他にローンを組むくらいなら奨学金はそのまま借りていた方が負担は少ないという場合もあります。繰り上げ返済をする時は、今後のライフイベントを考慮して検討しましょう。

まとめ

ここまで、金利の上昇による奨学金への影響について見てきました。簡単にまとめます。

奨学金があることで安心して学びを得ることができます。次の世代にこの制度を繋いでいくためにも計画的に返済していきましょう。

奨学金に関するQ&A

Q:住宅ローンの審査に奨学金の借り入れは影響しますか?

A:年収や借り入れなどの諸条件を基に審査されるため、奨学金の返済額も影響します。

Q:固定方式と見直し方式はどちらが良いですか?

A:今後、急激に金利が上昇すると考えるなら、固定方式を選択すると良さそうです。