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「株式分割」、株価や配当はどう変わる?メリット・デメリット解説

ふやす 中村 賢司

「株式分割」、株価や配当はどう変わる?メリット・デメリット解説

【画像出典元】「Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com」

株式分割とは、既に発行されている株式を1株から2株といった具合に分割することを指します。分割する割合は決まっておらず、1株が10株に分割されることもあります。株主にとって保有している株数は増えるのですが、その価値が大きく変わるわけではありません。では、株主や企業にとって株式分割はどのような効果があるのでしょうか。今回は株式分割の現状や企業の狙い、株主や個人投資家にとってのメリット・デメリットについて解説します。

株式分割で、株の流動性アップ・NISAの利用促進に

最近、株式分割を行う企業が増えています。その理由は、2022年秋に東京証券取引所が、最低投資金額が大きい高額株の企業に対して、「50万円未満が望ましい」と最低投資金額の引き下げを要請したためです。

例えば、1株2万円の企業へ投資する場合、100株購入するには200万円必要となります。現行の一般NISAの上限額は年間120万円なので、単元株を購入する際、NISA制度を利用することができません。そこで、株式分割を行い、最低投資金額を下げることでNISA制度の利用促進にもつなげたいとの意図があるのです。

また企業にとっても最低投資金額が下がることで、株式の流動性を上げることができます。流通株式の比率は、東証市場における「東証スタンダード」から最上位の「東証プライム」へ上場するための基準の1つにもなっています。

株式分割すると、資産価値や配当はどうなる?

株式チャート
【画像出典元】「stock.adobe.com/Koonsiri」

株式分割は増資をするわけではないので、企業の時価総額は変わりません。また、100株が200株に分割された場合、1株あたりの価格は半分になりますので、株主の資産が増えるわけでもありません。

具体的には下記のようなイメージです。

(株式分割前)
保有株数:100株
株  価:20,000円
資産価値:200万円

(株式分割後)
保有株数:200株(1:2の割合で株数が倍)
株  価:10,000円(株価が半減)
資産価値:200万円 (資産価値は変わらず)

これでは投資家にとってメリットがなさそうですが、株式分割を発表した企業の銘柄は発表直後に株価が上昇することもありますので、株式分割は株主にとって良いニュースとなります。

他に株主にとってのメリットやデメリットにはどんなものがあるでしょうか。詳しくみていきます。

株主・個人投資家にとってのメリット

資産運用
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株主にとっても企業にとっても、株式分割の一番のメリットは流動性が高くなるということでしょう。最低投資金額が低くなることで、売買自由度が上がります。

株式分割によって1株あたりの株価が下がることで、これまでは株価が高く単元株(100株)で購入するには手が出なかったという投資家も購入する動きが増えるほか、その銘柄に注目が集まって売買が活発になると、株価上昇につながっていきます。

また、既に保有していて利益が出ている株主が、分割後に一部売却して利益確定させることもあります。

他にも、配当金を受け取れる保有株数が増えることもメリットです。株式分割をすると、1株あたりの配当金はその割合に応じて減るのが一般的です。しかし、株式分割は整数倍に限られていないので、100株につき1.1倍といったような分割が行われることがあります。このとき、1株当たりの配当金が据え置かれることもあるので、結果的に受け取れる配当金が増える場合があります。

価格変動幅が大きくなるリスクも

株式分割で流動性が高まることがメリットになると書きましたが、逆に投機目的の投資家が増えることはデメリットになります。一般的に株主が増えると株価は安定する傾向にありますが、投機目的の株主が増えると価格変動幅が大きくなってしまう要因にもなります。よって株価の下落には要注意です。

また、単元未満株が発生してしまうこともデメリットです。分割割合が1:2や1:3のように整数で分割されれば単元未満株は発生しませんが、1:1.1や1:1.5といった分割の場合は10株や50株といった単元未満株が発生します。証券会社によっては、その単元未満株だけ売却しようとしても通常の注文方法では売却できず、割高な手数料で売却しなければならないこともあります。

まとめ

株式分割が進むことで、来年から始まる新NISA制度を利用する個人投資家も増えるでしょう。株式分割のメリットを再度、整理してみます。

政府は「貯蓄から投資へ」を促進させるため、今後5年で現在約1700万口座あるNISA口座を3400万口座に倍増させる計画です。

その流れに乗り、株式分割を進める企業も増えてきました。具体的には、最低投資金額が50万円以上だった5社に1社が株式分割に動いているようです。今まで株式投資はハードルが高いと感じていた人も、来年から始まる新NISA制度を利用して株式投資にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。