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【FPへの質問】生きがいも感じられる、定年後の収入を増やす方法は?

FPにききたいお金のこと 内山 貴博

【FPへの質問】生きがいも感じられる、定年後の収入を増やす方法は?

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今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、40代男性Bさんからの定年後に関する相談です。定年後、年金だけで生活が成り立つと考える人は少なくなりました。とはいえ70代、80代と徐々に働くことが難しくなれば、やはり収入の柱になるのは年金です。この柱にプラスαでもう1つ2つと収入源があれば豊かなセカンドライフを送ることができそうです。

今回は「生きがい」もテーマになっています。筆者も相談者と同世代の40代として強く共感できますので、これまで見てきたシニア層の成功事例や現在の社会の動きなどを踏まえ切り込んでいきたいと思います。

40代男性Bさんの相談内容

定年後の収入を増やすにはどうすべきかと考えています。事業を探して投資計画を立てた方が良いのか、パート等を探した方が良いのか。私には何のキャリアもありません。定年後、収入と生きがいがマッチする何らかの柱を確保し、生活と家賃・光熱費を補っていきたいです。

収入の柱はiDeCoやNISAで

ハイタッチする老夫婦
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相談者の方は40代とありますが、仮に45歳であっても老齢年金受給まであと20年あります。資産運用を行うには十分な時間があります。

毎月3万円を年利4%で積み立て投資を行うと、20年後には約1100万円もの資産が形成されていることになります。積み立て投資で時間が分散されることでリスクを抑えられます。国内外の株式や債券に分散投資をすれば年利4%は決して難しくありません。

投資信託であれば世界株などに分散投資をしたものも数多くあり、NISAの「つみたて投資枠」の対象になっているものもあります。そういったものを活用することで、今から1つ大きな柱を作ってみる、ということを意識してみてください。

「毎月コツコツ積み立てをしていただけでは生きがいにはならない」と思われるかもしれませんが、この投資自体を生きがいにして楽しく老後を過ごされている人もいらっしゃいます。

株の相場、世界経済を見るのが老後の楽しみに

筆者が関わったある70代の男性は、全くの投資初心者でしたが、60代の頃、退職金をきっかけに資産運用をはじめ、すっかり日々の相場チェックが楽しみになったそうです。「毎日、各国の株価や気になる企業の決算発表などを見ていたら、ボケ対策にもなりますよ」と満面の笑みで話されていたことが忘れられません。また「世の中と繋がっている気がして楽しいです」とも言われていました。

退職後、ともすると疎外感や虚無感を抱える人も少なくありませんが、このように投資と向き合うことが生きがいとなるといいですね。そして色んな気づきがあれば何らかの次なる活動のきっかけにもなるかもしれません。

国内株式の場合、銘柄にもよりますが配当金と株主優待を合わせて2~5%程度のリターンが期待できます。1000万円あれば、それなりの年間収入となります。投資信託も良いですが、自分で個別株式を探すことで投資の知識や情報がより必要となり、これが「生きがい」に繋がるかもしれません。

書籍やネット、場合によっては直接お店に足を運び、気になる企業の商品やサービスを体感する。そういった経験を通して個別株式に投資をする。そして、その企業から毎年配当金や株主優待を得ることもできる。運用できる金額が大きいほど、当然老後の収入源の柱として十分機能します。今からそういった生活を楽しみに積極的に資産運用と向き合ってみるのも一つだと思います。

地域に目を向けてみるのも一つの方法

子供に勉強を教えるシニア男性
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「何のキャリアもありません」とコメントされていますが、おそらく多くの人がそのように感じていると思います。でもこれまでの人生やお仕事を振り返ると、きっと色んな経験をされていると思います。そのようなものをお住まいの地域やゆかりのあった地域などに還元する、というのを検討してみてはいかがでしょうか。

今はどこも人手不足で困っています。加えて、働き方改革もあり、その流れは一段と加速しています。その最たる例が小学校や中学校です。先生の長時間労働なども大きな問題になっており、そういった流れの中、現在「部活動の地域移行」という大きな取り組みが全国的になされています。

学校の先生が部活動の顧問をし、土日の試合や遠征もずっと帯同するのではなく、全部または一部を地域に移行するというものです。地域によっては現在、「人材バンク」を作る動きもあります。「サッカー部を指導できるライセンスがある」といった人が対象ではありますが、おそらく今後は子供の安全面のために、ライセンスがなくても、球拾いやグラウンド整備などの練習のお手伝いができる人、遠征のための運転手など、一段と裾野を広げて人材を確保していく流れになるのでは?と見ています。

現在、積極的に部活動の地域移行を行っている自治体には国からの補助金も支給されています。そして指導にあたる人は時給制での報酬を得ることができます。部活動のみならず文化部も同様です。特別なキャリアがなくても何かお手伝いできることがあるかもしれません。若い子供達と触れ合いながら、学校の先生の負担も軽減され、色んな人に感謝され、しかも定期的な収入にも繋がる。素敵な時間の使い方になりそうですね。

できる範囲で、無理をしない範囲で

「事業を探して投資計画」ともありますが、事業を立ち上げ継続していくことは一般的にかなりのエネルギーが必要となり、一定のリスクもつきものです。事業を立ち上げて成功する人と失敗する人では、圧倒的に後者の方が、割合が高いでしょう。

大変有名な話ですが、ケンタッキー・フライド・チキンの創業者であるカーネル・サンダースさんの創業時の年齢は60代でした。この話を引き合いに「年齢は関係ない」という意見もあり、それも共感できるところです。ただ、よく調べてみると、カーネルさんは30代や40代の頃から色んな事業に挑戦されていたようです。

様々な解釈ができるため、一概に定年後の事業を否定しているわけではありませんが、やはり事業を軌道に乗せるためには相当な準備や努力が必要になると思います。体力なども考慮すると、無理をせず今回紹介した地域での活動など長く続けられそうなものを探す方が良いかもしれませんね。

20年後はもっと人口構造が変わり、シニア世代の活躍が求められる社会になると思います。そのためにはまずは健康でいることが大切です。体も家計も定期的に見直しを行いながらこれから過ごしていきたいですね。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。