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円安が定着しそうな今、考えておいた方がいいお金の問題とは?

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

円安が定着しそうな今、考えておいた方がいいお金の問題とは?

1ドル=100円で説明する時代から1ドル=150円で説明する時代へ?

メジャーリーグで大活躍をしている大谷選手の年俸はもちろんドルベースです。これを日本で使う場合は当然、円に交換しなければなりません。海外のお金の話をするとき「○○ドル(日本円で○○円)」「○○円(1ドル○円換算)」のように表記することがあります。

10年位前だと、1ドルを100円で換算して表記することがよくありました。実際には1ドルが90~110円くらいであっても、換算が簡単で分かりやすいからです。1万ドルと言われるより「100万円(1ドル100円として)」のように書かれる方がピンときます。

最近は円安傾向にあることは皆さんもご存じのことでしょう。最近はこの為替レートが1ドル=150円で表記されることが多いようです。円安の傾向が顕著になっており、またその状態で落ち着き始めていることが一因のようですが、同じ1万ドルも「150万円(1ドル150円として)」となってくるとまったく違うインパクトになってきます。

1ドル=100円が150円までシフトしたということは、日本円では50%もの変化が生じたことになります。こうした為替の変動、ライフプラン3.0世代にとっては初めてのことでしょう。

私たちの生活やマネープランにおいて、こうした為替の変動はどう考えていけばいいでしょうか。

円安時代、輸入される商品の値上がりはもう避けられない

円安はまず生活を直撃します。近年の値上げの多くは、原材料が輸入に大きく依存している商品が該当しているからです。一昨年、iPhoneの値上げが発表されたとき、19%位の値上げ幅ということが驚きでしたが、実はそのほとんどが円安要因です。

日本の食料品の多くは原材料を輸入に頼っていますので、この数年で値上げが行われました。国内で生産される食料品についても、原油高や飼料の値上がりなどの影響により値上げする例が増えています。食パンのように、海外での小麦価格の上昇もあいまって、同一年に2回値上げをした例もあります。

電気代、ガス代、ガソリン代などが大きく値上がりしている背景も、円安の影響によります。エネルギー資源を大きく海外に依存していることが利用料金の値上げにつながっているわけです。公共料金については値上げ幅の上限を設定し、日常生活への影響を最小限度にする仕組みもありますが、今度は電力会社などが赤字になってしまい(値上げしてもなお!)、値上げ幅の再引き上げ申請に至っています。

このように、為替が円安に推移していることは日常生活に大きな影響を及ぼしています。為替の変動と同様には、日本国内の給与は増えていきませんから、節約の意識をしっかり持っておかないといけません。「今までと同じように買い物をしていると、今までより月5000~1万円くらい出費が増えている?」となっていたとしたら、それは円安による値上げのせいなのです。

なお、為替の影響だけではなく、海外の原材料費は高騰の傾向にあり、さらに海外の人件費も高騰していますので、今後為替の変動以上の値上がりもあり得ると考えておく必要があります。

投資において、為替はどう考えればいい?

もうひとつ為替について考えておきたいテーマは「投資」における為替の影響です。

海外を投資の対象に含めることは、分散投資の観点からは重要です。日本以外の成長率の高い国を投資対象に加えることで運用成績の向上が期待できます。同時に、日本というエリアだけに投資機会を限定せず、広く世界を投資対象とすることで、日本だけが経済的に低迷している時期にも資産を増やすチャンスが手に入ります。

一方で海外に投資をするということは、為替の変動リスクを負うことになります。購入時点と売却時点で為替のレートは同じではありませんから、海外資産の成長があっても円に戻したときのリターンは押し下げられることがあります(これは円高に推移した場合)。

一方で、海外の資産が値上がりした上に為替も円安に振れたことで、収益が膨らむということもあります。日本企業の多くが好決算であることも、円換算した利益が円安により膨らんでいることが一因です。

円安、円高の仕組みはここで改めて解説はしませんが、問題はこの為替の変動は「経済が成長すれば株式投資はプラスになる可能性が高い」のように、一方向で説明ができないということです。経済の教科書的には為替レートが円安に推移することは国力の相対的な弱さを表すとされますが、しばしば実態とは離れた動きをするのが為替レートです。

適切な為替レートはどのあたりにあるのかは常に議論があります。もしかすると、経済的に伸び悩んでいたはずの日本が、1ドル100円を切っていた円高の方が行きすぎだったのかもしれません。そうした評価は後世の学者の評価に委ねられるものであり、その場その場で私たちが判断することは困難です。

為替リスクをヘッジする投資信託商品などもありますが、この場合、原則として二国間の金利差相当のヘッジコストが生じます。結果として運用利回りが縮小する可能性があり、必ず安全というわけでもありません。

為替で利益を出す、というのは経済成長で利益を出すよりも難しいことです。それでも世界に目を向けて投資をすることは間違ってはいないので、海外に投資する金額をコントロールするなどしながら、上手に付き合っていくことが求められます。

為替に振り回されないような生活、投資を心がけたい

為替そのものでお金を増やす方法もあります。FX(外国為替証拠金取引)です。しかし、為替のリスクは本質的にゼロサムであり、誰かのリターンと誰かの損とが一対になっています。株式投資においては経済の成長を伴うことで投資家も企業も社会にもプラスのリターンが生まれますが(プラスサムという)、これとFXは対照的です。

また、入金額の数十倍での売買を可能とする仕組み(レバレッジ)もあいまって、為替取引は過剰なリスクテイクになりがちなことも問題です。多くの個人は資産をただ減らしてしまうことになりかねません。

日常の生活も、外国への資産運用も為替の影響を受けます。為替そのもので運用をすることはリスクが高すぎあまりおすすめはできません。

できれば為替は気にせず暮らしていきたいところですが、グローバルな時代に暮らす私たちは為替と無縁ではいられません。為替そのものはコントロールできないものですから、家計をしっかり引き締めたり、外国への投資割合のバランスを取るなどして、為替に振り回されないようにすることが大切です。

若い世代のみなさんは、これからの人生においておそらく、何度か円安の時期と円高の時期を経験することになるでしょう。それは5年や10年単位の動きになることもあります。今回の円安基調への流れを為替の変化に興味や関心を持つきっかけとしてみてください。