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2023年度の国民負担率は46.8%、諸外国と比べて高い?低い?

経済とお金のはなし 箕輪 健伸

2023年度の国民負担率は46.8%、諸外国と比べて高い?低い?

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毎年、2月になると財務省が日本の国民負担率を発表します。今年も2月21日に発表されましたが、2023年度の国民負担率は46.8%となる見通しであることが分かりました。発表されるごとにSNSなどでは大きな反発が寄せられる国民負担率。なぜ多くの国民は怒っているのでしょうか。各国の国民負担率と比較すると、なぜなのかが見えてきました。

国民負担率とは?上昇する理由は?

財務省は2月21日、2023年度(令和5年度)の国民負担率が、46.8%となる見通しと発表しました。国民負担率とは、個人や企業が稼いだ所得に占める税金・社会保険料の負担の割合を指すものです。税金には所得税や法人税、消費税などが含まれ、社会保険料には年金や医療保険料、介護保険料が含まれます。数字が高ければ高いほど、税金や社会保険料の支払いのために手取りが減っていることを意味します。

一昨年度は48.1%、昨年度は47.5%と2020年度の49.6%をピークにここ数年は低下傾向にある国民負担率ですが、長期的には高止まりの状態です。1975年度(昭和50年度)の国民負担率は25.7%でしたが、その後、じりじりと上昇していき、1990年度(平成2年度)には38.4%に上昇。15年前の2008年度(平成20年度)は39.2%でした。公表が始まって以来、一貫して上昇傾向が続いている国民負担率ですが、ここ10年ほどは40%を超える水準が続いています。

要因は日本の超高齢化社会にあります。高齢化社会により、国民負担率を求める際の計算式で分子にあたる租税負担と社会保障負担が増加する一方で、長らく続くデフレ下で分母にあたる企業や個人の所得が伸び悩んだことの結果が、今日の国民負担率です。

「令和2年版厚生労働白書」によると、20年前の2003年の日本人の平均給与は461.0万円だったのに対して、2018年は433.3万円と30万円近く下がっています。その一方、税金や社会保険料の負担は増大しています。消費税一つとってみても、2003年の税率は5%でしたが、現在は皆さんご存じの通り10%(軽減税率対象物は8%)。この短期間に実に2倍に上がっているのです。現役世代が負担する厚生年金保険料率は、2004年10月までは13.934%でしたが、現在は18.3%になっています。

国民負担率が毎年2月に公表されるたびにSNSでは、「五公五民(江戸時代の税制度)でどうやって子供産めって言うんだよ?」などと大荒れになります。しかし、それも無理からぬところではないでしょうか。

諸外国と比べてみると…

比較する
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国民負担率が高くなる一番の原因は少子高齢化です。それでは、日本と同様に少子高齢化が進むヨーロッパ各国と比べてみると、日本の国民負担率は高いのでしょうか。それとも意外にも低いのでしょうか。

財務省が公表した2020年(日本は2020年度)のデータによると、日本の国民負担率はOECD加盟国(36ヵ国)の中で真ん中より低い22番目となっています。国民負担率の世界ランキングのトップは、ルクセンブルクで84.6%。次いでフランス(69.9%)、デンマーク(65.9%)の順となっています。日本(47.9%)は、韓国(41.7%)、オーストラリア(37.6%)、アメリカ(32.3%)よりは高かったものの、フランス、イタリア(60.8%)、ドイツ(54.0%)よりは低くなっています。フランス、イタリア、ドイツといったヨーロッパ各国は少子高齢化社会に突入していますが、まだ日本ほどは進んでいません。そのことを考えれば、日本の国民負担率は「高すぎる」とまでは言い切れない状況のようです。

それではなぜ国民の不満がたまる?

不機嫌な顔の女の子
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日本の高齢化率は28.4%(2019年10月時点)と3割近くになっています。世界で一番高齢化が進んでいる国として有名な日本において、国際比較では国民負担率は決して高いとは言えないでしょう。それではなぜ、公表のたびにSNSが大荒れするなど、多くの国民から反発されるのでしょうか。筆者は、負担と受益のバランスが取れていないことに多くの国民が怒っているのではないかと考えています。

たとえば、フィンランドの国民負担率は59.7%と日本より高いですが、小学校から大学まで、すべての教育費は無料です。また、義務教育期間の9年間は給食も教科書も無料で支給されます。フランスでは、高校までの教育費は無償。大学に行く場合でも数万円の学籍登録料などを負担するのみで済みます。

一方、日本はそうした制度がありません。そのため、多くの人が「負担に見合った受益がない」と感じ、国民負担率の発表のたびにネット上では大反発が巻き起こるのではないでしょうか。少子高齢化の今、いきなり国民負担率を大幅に下げることは難しいでしょう。であるならば、少しでも私たち納税者が納得できるような使い方をしてもらいたいものです。