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2年ぶり5万ドル超えのビットコイン、その背景と最新事情とは?

経済とお金のはなし 中新 大地

2年ぶり5万ドル超えのビットコイン、その背景と最新事情とは?

【画像出典元】「Jin Odin/Shutterstock.com」

こんにちは、フリーランスのコピーライター、中新大地です。

かつて暗号資産(仮想通貨とも)は、「デジタルのお金なんて怪しい」「ボラティリティ性が高くて投資対象や資産とするには向いてない」と言われてきました。
確かにその評判通り価格の乱高下や、取引所の資産流出や破産などの問題や事件を幾度となく経験してきました。

特に2022年に入ってからは冬の時代を過ごしたと言われるほど、市場価格はかなり落ち込みました。前年11月に暗号資産の代表格であるビットコインが、史上最高値6万8992ドル(1BTCあたりの価格)を記録したにもかかわらず、です。

しかし、そこから長く続いた冬も終わりを迎えようとしていると言われています。
今、ビットコインに何が起きているのか、気になる情報をいくつかご紹介します。
※本記事内容は情報提供のみを目的としており、投資を推奨するものではありません。投資判断は個々人の責任において慎重に行ってください

ビットコインの5万ドル超え、SECとの確執乗り越え掴んだ期待感

ビットコイン
【画像出典元】「stock.adobe.com/Backcountry Media」

2024年2月、ビットコインは2021年12月以来、約2年2カ月ぶりに5万ドル(約750万円)超えを経験しました。
大台を超えたことにより、「ここからさらに上がるのでは?」との機運も高まっています。

価格上昇のトリガーとなったのは、米証券取引委員会(SEC)によるビットコインETFの承認があります。これまでSECが暗号資産業界を目の敵にしていたのは周知の事実です。SECは顧客保護を掲げて多くの暗号資産企業と対峙。バイナンスやクラーケンなどの世界最大級の暗号資産取引所らは連邦証券法違反などで次々と提訴されました。

こうしたSECのやり方には横暴かつSECの管轄外の越権行為も含まれるとして、暗号資産企業らも対抗。やがてSECが訴訟に敗れるケースも見られるようになると、だんだんと風向きが変わってきます。

そんな中、遂に起こったのが、SECが断固として認めてこなかったビットコインETFの承認でした。2024年1月11日に承認されると、市場には大量の資金と機関投資家が流入。初日の取引高は約46億ドル(約6700億円)を記録するなど、大盛り上がり。
ビットコインに容易に投資できるようになったことに加えて、FRBの金融政策の転換と利下げへの期待感もその価格を支えています。

さらにビットコインは、ウクライナ侵攻において逃避資産として位置づけられ、金にも似た動きを見せたこともあります。

ビットコインは挑戦的かつ短期的な保有による利益を得る“投機対象”という見方から、明確な意図を持ち長期的な保有も視野にいれた“投資対象”あるいは重要な資産としての地位を確立しつつあります。

より広く、より当たり前に。ビットコインを活用できるサービスの増加

ビットコインを利用したサービス
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ビットコインを活用できるサービスの増加は、その普及と利便性を高める要因であり、市場の賑わいをも促進させています。

暗号資産取引所の増加は市場競争を活性化させ、投資家に多様な選択肢を提供しています。各社さまざまなサービスや特典などを携えて市場に参入。“日本最大級のフリマサービス”を謳うメルカリは、子会社のメルコインを介して連携することで暗号資産事業を展開。メルカリにおける商品購入時にビットコインを使用できる機能もリリースしています。

メルコインCEO中村奎太氏は『いつものメルカリで、いつもの購入体験の中に当たり前のようにビットコインが存在する状態を作ることで、日常的に活用できるものであることを知ってもらい、新しい価値をより実感してもらえると思います。(リリース文書より一部抜粋)』と語り、ビットコインの普及に努める姿勢を強調しています。

前述のビットコインETFによる機関投資家の参入だけでなく、こうしたライトユーザーの参入もビットコインや暗号資産へのイメージアップ、ひいてはその価格上昇に一役も二役も買うとみて良いでしょう。

やってくるビットコインの半減期、運命の2024年4月

ビットコインは2024年4月中旬に半減期を迎えます。
ビットコインの半減期とは、ビットコインの数を抑制するためにビットコインをマイニングした際にマイナーに支払う報酬を半分にするものです。半分になればビットコインのマイニングにかけるコストが見合わないと判断するマイナーも出てくるため、市場に出回るビットコインの数は減少。希少価値が上がることで、ビットコインそのものの価格も上がると言われています。

実際に2012年、2016年、2020年と過去3回の半減期の後には強気相場がみられ、今回も価格上昇に期待が高まっています。特にビットコインETF承認後の現在、2022年から続くいわゆる“暗号資産の冬”が終わりを迎えつつあるとの見方もあります。
スタンダードチャータード銀行に至っては、2024年末に1BTCあたり10万ドルに到達するという強気予測も。幾多の困難を乗り越えて成熟しつつある今のビットコインなら、それもあり得ない話ではないのかもしれません。

エルサルバドルのビットコイン法定通貨化とCBDC

ビットコイン
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2021年9月、エルサルバドルはビットコインを法定通貨に採用したことが、世界中で話題となりました。この試みは無謀と揶揄された一方で、暗号資産の実用性と国家経済への融合の可能性を模索する上で非常に参考になるという見方もありました。
エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領肝いりの政策で、国民にビットコインを保有することを推奨。国内にビットコインATMを設置し、国を挙げてビットコインへの投資・普及を行っていました。
ブケレ大統領はビットコインに1億3100万ドルを投資。実に360万ドルの純利益(純利益率は2.84%)をもたらしたと喧伝しています。
が、実際にビットコインを保有する国民は、人口636万人のうち約1.72%にあたる約10万9175人のみ。これでは法定通貨として機能しているどころか、ビットコインが国民に普及しているとも言えないでしょう。

もっとも、ビットコインなどの暗号資産が、国の経済を絶対に担えないと断ずるのは時期尚早です。現在各国で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入が検討されています。すでに議論の段階を終えて試験打開に進んでいる国も多く、お隣の韓国では2023年11月に10万人を対象に、「デジタルウォン」による商品購入を試験しています。

日本でも「デジタル円」の発行に向けた試験が行われています。2024年1月には関係する省庁の幹部や日銀の理事らによる連絡会議を実施。今年春を目標に法律上の課題を整理していくことで一致しています。

まとめ

ビットコインの価格が2年ぶりに5万ドルを超える中、暗号資産に対する人々の見方は変わりつつあります。SECとの確執を乗り越えたビットコインETFの承認や、周辺サービスの拡充、4月にやってくる半減期などの話題が、市場やビットコインそのものに対する期待感へとつながっています。

それでも、暗号資産が日本社会に広く普及しているとはまだ言えません。しかし、ビットコインを怪しいと安易に拒絶する段階はとうに過ぎており、これからは「どうすれば上手に扱えるか」を考え、実際に体験してみるべきタイミングに入っていると言えます。

皆さんも今一度暗号資産やその代表格であるビットコインについて、最新の状況など調べてみてはいかがでしょうか。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。