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リバースモーゲージはヤバい?デメリットや注意点をFPが解説

かりる 白浜 仁子

リバースモーゲージはヤバい?デメリットや注意点をFPが解説

【画像出典元】「ronstik/Shutterstock.com」

シニア層の老後資金需要が拡大し、全国的にリバースモーゲージが改めて注目されています。一方で、「利用するとやばい」「債務が相続人に引き継がれるのでは」などといった心配の声もあります。注目度が高まる背景やニーズ、利用者にとってのメリットやデメリットについてみていきましょう。

低所得者や非課税世帯の生活支援が目的

リバースモーゲージとは、住宅を担保に資金を借り入れ、死亡後にその住宅を売却することで一括返済をする仕組みです。各都道府県の社会福祉協議会が取り扱う制度と、民間の金融機関が扱う制度の2種に分けられます。

社会福祉協議会が取り扱うリバースモーゲージは、市町村民税の非課税世帯など、低所得者を対象とした生活支援が目的です。一方、民間の金融機関で扱うリバースモーゲージは、生活資金はもとより、趣味や旅行、リフォーム資金など用途は幅広となっています。今回は、民間の金融機関が扱うリバースモーゲージをみていくことにしましょう。

リバースモーゲージはいわゆる借り入れですが、住宅ローンのような通常の借り入れのように、借入直後に元金と利息の支払いが始まるのではなく、生存中は利息のみを返済すれば良いため、自宅という不動産を活用して生前に使える資金を増やすことができるのが特徴です。

対象者は、金融機関によって55歳以上や60歳以上などそれぞれですが、いずれにしても高齢者を対象としており老後を豊かに過ごすための貸付制度となっています。

普及が進みそうなリバースモーゲージ

2005年に東京スター銀行が取り扱いを開始した当初は非常に珍しい制度でしたが、今では多くの金融機関が取り扱いを始めています。国土交通省の「令和3年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書(令和5年3月31日訂正)」によると、リバースモーゲージを「現在商品として取り扱っている」と答えた金融機関は154機関。さらに、「商品化を検討中」と回答した金融機関は358機関にも上り、今後もますますリバースモーゲージが普及していくことが想像できます。実際に、最近はCM・広告で目にする機会も増えており、筆者のFP相談でも、リバースモーゲージについて相談者から口火を切る場面もでてきました。

定年後も住宅ローンが続く人などが利用

打ち合わせ
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具体的に、リバースモーゲージはどのような人に役立つのでしょうか。たとえば、定年後も住宅ローンの返済が続く人が挙げられます。返済中の住宅ローンをリバースモーゲージで借り換えることによって、今後は利息の支払いだけで良くなるため、毎月の支出を抑えられます。お陰で、年金だけでやり繰りできるようになる人もいるかもしれません。

また、家が古くなりリフォームをしたいという人もいるでしょう。リフォームをすることによって手持ち資金が減ってしまうことが心配な場合は、リバースモーゲージを利用することで手元の資金を減らさずに自宅を住みやすくできます。

また、子どものいない夫婦や、子どもが県外で生活していて家を引き継ぐ人がいないなど、家を残す必要がないというケースもあるでしょう。リバースモーゲージを利用することで、今まで通り住み続けながら自宅を現金化することができ、その現金を趣味や旅行、車の購入、病気・介護費用などに活用することができます。

リバースモーゲージの商品内容は2タイプ

ここでは民間のリバースモーゲージについて紹介していますが、その商品性は大きく2タイプに分けることができます。

1つは、住宅金融支援機構の商品「リ・バース60」です。各金融機関が機構と提携して取り扱いをしており、住宅のリフォームや、住み替え、住宅ローンの借り換えなど住宅関連の費用に活用するものです。金融機関によって名称が異なる場合があり、例えばりそな銀行であれば「あんしん革命(不動産購入プラン)」という商品名となっています。

もう1つは金融機関独自の商品で、住宅関連費用はもとより、生活費や車の購入、旅行費用など使途を問わないタイプです。一括で借り入れる方法のほか、ATMで都度引き出せるなど、商品ごとに少しずつ内容が異なります。

もともとリバースモーゲージは土地付きの戸建てを対象としたものでしたが、今ではマンションも対象となりました。適用される金利は変動金利が一般的ですが、みずほ銀行が2023年4月から全国初の固定金利を導入しました。世界的な利上げが続く中、日本も近い将来金利が上がるのではという心配の声を受けてのようです。このように時代の流れをくみ取りながら、今後もサービス内容が少しずつ変化していくことが考えられます。

リバースモーゲージのメリットとデメリット

メリットとデメリット
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リバースモーゲージのメリットは、自宅に住み続けながら(売却しなくても)資金を調達できることが第一でしょう。自分が持つ資産をフル活用できるわけです。また、生きている間は、借入利息のみ支払えば良いのですから、年金だけが生活の支えとなる時期に負担が少なくて済みます。

また、配偶者がいる場合は「本人が死亡後も配偶者が住み続けることができる」としている金融機関が大半ですので、これも安心材料といえます。もし、精算時に借入額以上の価格で住宅が売却された場合は、金融機関が差額を返してくれるのも嬉しいところ。差額を受け取るのは、法定相続人です。

デメリットは、利息の支払いが死亡するまで続く点です。長生きした場合の利息負担の総額は徐々に多くなります。仮に借入額が1000万円で金利2.5%の場合、月の利息負担は約2万800円です。55歳時から90歳まで35年間借り入れが続くと、利息負担の総額は約870万円となります。もし、70歳時に借り入れるなら、90歳までに約500万円の支払いとなります。利用する年齢や、年金と生活費といった収支状況を考えながら利用額を検討すると良さそうです。

また借入額は、一般に自宅の担保評価の50~70%が上限となるため、いくらでも借り入れができるわけではありません。もっと大きな資金が必要な場合は自宅の売却を検討する必要があります。また、住宅の評価が引き下げられた時は、借入の極度額が下がるというリスクもあります。相続人が一括返済をしない限り住宅は売却されるため、基本的には相続人に家を残してあげることは難しいでしょう。ですので、トラブル回避のために事前に相続人に相談しておくことが必要です。なお、リバースモーゲージは、本人と配偶者のみの居所であるといった要件があるため、子や孫などの親族と生活している場合は活用できません。

加えて、もし住宅が借入額以下で売却となった場合、不足分を返済しなければならないデメリットもあります。これは、リコース型というタイプのリバースモーゲージの場合です。一方、ノンリコース型のリバースモーゲージなら、自宅が借入額以下で売却となった場合も不足分は請求されません。利用するリバースモーゲージがどちらのタイプかは、契約前のチェックポイントにもなります。

このように、リバースモーゲージは、人生100年時代を支える仕組みとして注目されています。何事もメリットとデメリットがあるため、活用時には両者を照らし合わせながら検討しましょう。