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年金が月15万円なら所得税はいくら引かれる?免除される条件は?

そなえる 白浜 仁子

年金が月15万円なら所得税はいくら引かれる?免除される条件は?

【画像出典元】「stock.adobe.com/takasu」

年金は、老後の生活を支えてくれる大切な収入源です。ただ、給与と同じように税金がかかります。ここでは、年金にかかる所得税がどのくらいか、所得税が免除される年金額の目安や、確定申告の有無について見ていきましょう。

年金にかかる所得税の仕組み

給与に税金がかかるように、公的年金にも税金がかかります。将来受け取る公的年金の税金はどのように計算されるのでしょうか。

所得税は、収入にダイレクトに税率をかけるわけではありません。収入から、それを得るためにかかった必要経費を差し引き、さらに、社会保険料の支払いや扶養などの所得控除を差し引きます。その小さくなった「所得(課税所得)」に税率をかけて計算するのです。
収入から必要経費を差し引いたものを所得といい、公的年金は「雑所得」にあたります。

次に、計算の流れをもう少し紐解いてみていきましょう。

公的年金等控除とは?

公的年金における「所得」はどのように求めるのでしょうか。例えば、ケーキ屋さんの所得は、売上から経費として材料費や店舗の家賃などを差し引いて所得を求めますが、公的年金は、国があらかじめ定めた経費相当額となる「公的年金等控除」を基に計算するようになっています。

公的年金から、この経費相当となる公的年金等控除を差し引いたものを雑所得と言います。雑所得は、以下の「公的年金等控除に係る雑所得の速算表」を使って計算できるようになっています。計算方法は、65歳未満と、65歳以上で分けられ、年金額が多くなるほど控除が増えていきます。

〈公的年金等に係る雑所得の速算表〉

出典/国税庁HPより抜粋

年金も所得控除が適用される

所得控除とは、その人の事情を考慮して差し引くことができる控除です。例えば、AさんとBさんの所得はどちらも300万円だったとします。Aさんは、扶養家族が多く、Bさんは一人暮らしです。その場合、生活するための必要資金が異なるでしょうから、税金を負担する力にも差があることが想像できます。これを調整するのが所得控除というわけです。扶養家族がいる場合は、配偶者(特別)控除や扶養控除を差し引くことができます。

所得控除には、次のような種類があり、収入や家族構成などによってその金額は異なります。

所得税率とは?

所得税は、累進課税制度といって、所得が多くなるほど税率が5~45%と高くなる仕組みです。下表の税率をみると、所得190万円の税率は5%ですが、所得195万円になると10%となっています。一見すると、たった5万円所得が増えただけで2倍の税率が適用されるように思えますが、これはよくある勘違いです。

実際は、194.9万円までは税率5%が適用され、194.9万円を超えた1000円分だけが税率10%で計算されるという仕組みなので、2倍にはなりません。日本の所得税率は、原則、超過累進課税といって、一定額を超えたら、超えた分だけ高い税率が適用されるわけです。実務上は、以下のように控除額を差し引くことで、簡単に計算できる速算表が使われます。

〈所得税の速算表〉

出典/国税庁HPより抜粋

※平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付することになります(以下同様)。

年金が月15万円だと所得税はいくら引かれる?

ではここで具体的に試算をしてみましょう。年金が月額15万円の場合の所得税はいくらになるでしょうか。

所得控除は、誰もが差し引ける基礎控除48万円のみとします。
簡略化するため復興所得税は割愛します。

①公的年金-公的年金等控除=雑所得
(公的年金)180万円-(公的年金等控除)110万円=(雑所得)70万円

〈公的年金に係る雑所得の速算表〉
 

出典/国税庁HPより抜粋

 

②雑所得-所得控除=課税所得
(雑所得)70万円-(所得控除)社会保険料13万円+基礎控除48万円
=(課税所得)9万円

③課税所得×所得税率=所得税
(課税所得)9万円×(所得税率)5%=(所得税)4500円

よって、年間の所得税は4500円となります。

〈所得税の速算表〉

出典/国税庁HPより抜粋

年金生活となると、現役時より収入が大きく下がりますが、同時に税金も下がります。この事例で、さほど負担がないことが分かったという人も多いのではないでしょうか。

所得税が免除される場合とは

このように、収入がある人は原則、納税の義務がありますが、年金が一定以下なら所得税はかかりません。

<所得税がかからない公的年金の金額>
65歳未満 108万円以下
65歳以上 158万円以下

所得税がかからない理由は、これまでみてきたように、公的年金等控除や基礎控除があるためです。65歳未満の場合は、公的年金等控除は少なくとも60万円差し引けますので、基礎控除48万と合わせると108万円を年金から差し引けることになります。つまり、課税する所得はゼロというわけです。65歳以上の場合は、公的年金等控除が最低110万円ですから、基礎控除と合わせ158万円となり、こちらも所得税はかかりません。

自営業者や専業主婦で国民年金(老齢基礎年金)のみを受け取る場合、65歳から満額で79万5000円(令和5年度)を受け取ることになります。この場合、65歳以上で158万円以下ですので、所得税はかからないということになります。

また、公的年金とは、国民年金や厚生年金をいいますが、所得税の計算では、確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC、iDeCo)も公的年金と合算して計算するようになっています。

なお、障害年金や遺族年金は非課税です。

確定申告が面倒そう…「確定申告不要制度」があるから大丈夫!

考える女性
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収入がある人は、原則、税務署に確定申告をしなければなりません。ただ、会社員は職場が給与から所得税を源泉徴収し、年末調整で1年間の税の過不足を調整するため、通常は確定申告をする必要がありません。

年金生活になって急に確定申告をしなければならないとなると、負担に感じる人もいるでしょう。そのため、平成23年から「確定申告不要制度」が創設され、公的年金等の収入が400万円以下なら確定申告をしなくても良いようになりました。

公的年金等とは、次のような年金をいいます。

ただし、公的年金に係る雑所得以外の所得が20万円以上ある場合は、確定申告が必要なので、注意が必要です。

例として、給与所得があげられます。人生100年時代、今後は、長く働く人もますます増えることでしょう。その場合は、年金と給与についての確定申告が必要です。

その他、公的年金に係る雑所得以外の所得とは、どういったものがあるでしょうか。
主なものをみていきましょう。

なお、公的年金が400万円以下、それ以外の所得も20万円以下なら確定申告は不要ですが、それ以外の所得が20万円以下の場合でも、住民税の申告が必要なケースがあります。これは、所得税と住民税のルールの違いからです。該当するケースは、自治体に確認をしましょう。

また、公的年金は、支給時に所得税が源泉徴収されます。確定申告不要制度によって申告する必要がなくても、税金を納め過ぎている場合は、申告することで還付が受けられるので覚えておくと良いでしょう。例えば、1年間の医療費が10万円以上(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%以上)となった場合や、配偶者の国民健康保険料を支払っていて社会保険料控除が受けられるという場合です。該当する場合は忘れないように申告をしましょう。

もし申告を忘れても、5年前までさかのぼって申告できるため、後で気付いた時でも問題ありません。
また、確定申告は、2月16日~3月15日までですが、還付を受ける場合は1月1日~と、早めに届け出ができるようになっています。

年金生活者のうち、源泉徴収の対象になる人には毎年、秋ごろに「扶養親族等申告書」が届きます。この申告書は、翌年2月以降に支払われる年金から源泉徴収する所得税の計算時に必要です。提出せずに扶養控除が受けられなくなると、所得税が多く源泉徴収されます。万一、提出できなかった時は確定申告で還付を受けましょう。

まとめ

今回は、年金にかかる所得税についてみてきました。一般に、公的年金だけなら、申告の必要がなく、所得税もそれほど高くないことが分かりましたね。

最後に内容をまとめます。

公的年金の税金に関するQ&A

Q:保険会社で加入する個人年金の税金の計算はどうなりますか?

A:公的年金の場合と基本は同じです。しかし、個人年金の受取額から差し引ける経費相当額は公的年金等控除ではなく、実際に支払った保険料を基に計算します。

Q:住民税を計算する時の所得控除は、所得税と同じですか?

A:所得税と控除額が異なるものもあります。例えば、基礎控除は、所得税では48万円ですが、住民税では43万円です。