お金

【保存版】妊娠・出産で医療費控除の対象になるもの・ならないもの

そなえる 白浜 仁子

【保存版】妊娠・出産で医療費控除の対象になるもの・ならないもの

【画像出典元】「stock.adobe.com/Alena」

赤ちゃんが産まれる時に出産育児一時金や出産手当金がもらえることは知っていても、医療費控除を受けられることを知らない人は意外といるかもしれません。今回は、妊娠・出産の自己負担が多くなったときに受けられる医療費控除について紹介します。

医療費控除とは

最初に、医療費控除とはどのようなものか簡単に確認します。医療費控除とは、1~12月までの1年間に支払った医療費が10万円(または、所得の5%)以上となった場合に受けられる所得控除です。所得控除とは、税金を計算する上で所得から差し引くことができる経費のようなもので、所得控除が多いほど税金の負担が少なくなります。会社勤めの人は年末調整をするため通常は確定申告を行いませんが、医療費控除を受けられる人は、確定申告をすることによって給与から差し引かれた所得税が還付され、1年遅れで支払うことになる住民税も安くなります。

妊娠・出産費用で医療費控除の対象になるもの

診察を受ける妊婦
【画像出典元】「stock.adobe.com/metamorworks」

今回のポイントは、病気やケガの時だけでなく、妊娠・出産時にかかった医療費も医療費控除の対象となるという点です。具体的にどのような費用が対象かみていきましょう。

交通費は、原則として公共交通機関での費用が対象ですが、緊急性が高いなどでやむを得ずタクシーに乗った場合は医療費控除の対象になります。電車やバスの交通費などで領収書がないものは、ノートにつけて分かるようにすれば問題ありません。

妊娠・出産費用で医療費控除の対象にならないもの

一方で、妊娠・出産時にかかる費用の中にも、医療費控除の対象にならないものがあります。以下で確認しておきましょう。

薬局で買ってきた妊娠検査薬を使って自ら行う検査は対象外。差額ベッド代は、医師の指示によるもの以外は対象外です。また、出生前診断は、妊娠10週以降に赤ちゃんのDNAから健康かどうか検査するものですが、このような任意の検査は対象外となります。

医療費控除でいくら戻ってくる?

医療費控除
【画像出典元】「stock.adobe.com/umaruchan4678」

では、具体的に医療費控除を受けるといくら税金がお得になるのでしょうか。
計算の流れを確認した後に事例をみていきましょう。自分でも効果を試算できるようになります。

まず、医療費控除は、次のように計算されます。

医療費控除=(支払った医療費)-(補てんされる金額)-10万円

ここにある「補てんされる金額」とは、健康保険から支給される出産育児一時金や高額療養費、生命保険に加入している人が受け取る入院給付金などが当てはまります。

次に、所得税が還付額される金額や、翌年の住民税の軽減額を計算します。

所得によって還付金額は違う

所得税は、累進課税といって、課税される所得が高くなると徐々に税率も高くなります。ですから税金の軽減額は、医療費控除の額にその人が適用される所得税率を掛けると所得税の還付額が分かります。所得税の税率は以下です。

〈所得税率〉


 
なお、住民税は一律10%となっています。

返ってくる金額のシミュレーション

事例をもとに医療費控除の効果をみていきましょう。

医療費控除の金額は、
(支払った医療費60万円)-(補てんされる金額42万円)-10万円=8万円

つまり、医療費控除の申告をすることによって、

所得税・・(医療費控除8万円)×(所得税率10%)=8000円
住民税・・(医療費控除額8万円)×(住民税率10%)=8000円

合計1万6000円の税金の負担が減るということになります。

医療費控除の申請方法

医療費控除の申請
【画像出典元】「stock.adobe.com/Rummy & Rummy」

会社員は、通常、職場の年末調整で扶養控除や生命保険料控除などを申請し、税金の手続きをしますが、医療費控除に関しては確定申告が必要となります。ここからは、手続きについて見ていきましょう。

医療費控除の手続きに必要なものは

まずは、確定申告書と医療費控除の明細書が必要です。これらは税務署でもらえます。書き方が分からない場合は、税務署の職員に相談することもできますが、入力手順を案内してくれる「確定申告書等作成コーナー(国税庁HP)」がおすすめです。e-TAX(電子申告)なら紙での提出は不要ですが、会社員で利用しているケースは少ないでしょうから、その場合は、確定申告を印刷して税務署に持参、または郵送します。

本人確認書類はマイナンバー、または、通知カード+免許証などとなります。

夫婦共働きの場合は、所得税率が高い方で申告すると税金の軽減効果が高まります。医療費控除を受けるのを忘れていたという場合は5年まで遡って申告することが可能です。

まとめ

会社員は、確定申告が不慣れなケースが多いですが、意外と簡単にできるのでチャレンジしてみましょう。医療費控除は、ママの妊娠・出産費用だけでなく、家族が病院に掛かった場合や薬局で風邪薬を購入した場合なども合算できます。税の負担軽減分は、食事に行くなど家族が楽しめることに使うのも良いですね。