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ダマされたくなければ 、「社会の仕組み」を学ぼう

泉 正人先生のお金アカデミー 泉 正人

ダマされたくなければ 、「社会の仕組み」を学ぼう

「貯金ができない!」「お金に弱い!」という人、大歓迎の、泉先生のお金アカデミー。

ここでは毎回、お金のプロ・泉正人先生が、社会に出て約5年になる20代のA君、Bさんに、お金のことをもっと身近に、楽しく考えてもらえるようなレクチャーを行っています。お金について知ることができた人には、今よりももっと自由な日々が待っている!
みんなで一緒に「人生の貯金額」、どんどん増やしちゃいましょう!

20代は、信用を築く重要な時期

先生、大変です!

Aくん、どうしたの?

先日、車のショールームに行ったら、思わずクルマを買いそうになってしまいました…。

おやおや。でもAくんも社会人になって5年。周りには同じようにクルマや家など、大きな買い物をした話もチラホラ聞こえてきているんじゃないかな?

確かにそうですけど、僕には貯金なんてないし…。でもどうしてみんな買えるんだろう?そんなに貯金を持っているようには見えないんですが…。

それはきっと、ローンがあるからだよ。

ローンですか?

そう。前回のクレジットカードについての話の中で、僕たちは「信用」を担保にカードで買い物ができるという話をしたよね。ローンもまた、「信用」を使って多額のお金が借りられるしくみなんだ。それらは「信用経済」という「信用」を商品の媒介の手段とする経済の形態の中にあって、普段私たちが現金でやり取りをしている「貨幣経済」の対となるものなんだよ。

わぁ。今回も面白い話が聞けそう。

「信用経済」において、ふたりは自分がどれだけ信用されているか知っているかな?

信用されているかどうかって、わかるんですか?

たとえば、クレジットカードの中でも、持っているだけでステータスが証明される「プラチナカード」というものがあるのだけど、ふたりはカード会社の審査を通過することができると思う?

審査の基準はどんなものなのですか?

基準になるのは、Capital(資産)、Capacity(返済能力)、Control(自己管理)、Character(人間性)の、「4つのC」。基本的には、そのうちのどれかひとつでも欠けると、信用を失うことになるんだ。

たとえばカード社会のアメリカでは、クレジットカードの支払い履歴が重視されていて、この履歴によって住宅ローンの返済能力が判断されたり、金利が変わったり、あるいは就職・転職にも影響することがある。その流れは日本にも到来してきていて、2015年10月から始まった、国によるマイナンバー制度、これによって「信用経済」の重みはいっそう増す可能性があるよ。そのためにも僕らは「4つのC」を磨いて、信用を築いておくことが大切なんだ。

どうすれば信用を築けるんですか?

もっとも重要なのは「契約を守ること」。まずは「借りたお金はきちんと返す」といった基本的なことを忘れないようにしよう。その積み重ね、長年の実績によって信用が信用を生むことになる。

人間関係と同じで「信用」は、築くのは難しいのに失うのは簡単。クレジットカードなら、返済期日に銀行から引き落としできないことが一度でもあれば、その人の信用に傷がつく可能性があるんだよ。

うわ~!気をつけなくちゃ。

特典目当てに短期間に何枚ものカードをつくったり、カードをつくったのにまったく利用しなかったりすることも信用を失う原因になりかねない。クレジットカードの入会・退会・入金遅延などの情報は、個人信用情報機関に登録され、カード会社間で共有されているんだ。

そうなんですね!知りませんでした…。

信用履歴によっては、限度額が制限されたり、キャッシングを断られたり、新たにカードがつくれなくなったりもする。だからつねに「信用」を高めることを意識しておこう。信用される人は信用を呼び込む一方で、信用がない人は何をしても信用されない。そういう意味で、社会人になりたての20代は、信用を築く重要な時期でもあるんだよ。

こんなことも、「契約」だった!?

突然だけど、ふたりに質問。なぜコンビニの店員さんは、「○円お預かりします」と言うんだろう?

えっ!ただ丁寧に言ってくれているだけじゃないんですか?

わたしもそう思っていました。

正解は、この言葉にも立派な「契約」の意味が含まれているから。その証拠に、お釣りがあるときには、お金をいったんお店側が預かり、その後、お釣りを返すことになるので「お預かりします」という表現を使う。もしこのとき店員さんが、「ちょうだいします」と言ったならば、それは契約として辻褄が合わないことになるよね。契約には、契約書や押印が必要なのではと思うかもしれないけれど、必ずしもそうではなく、わたしたちの「これください」という申し込みに対する相手の「はい」という承諾、口頭による合意が形成されて、契約が成立することもあるんだよ。

まさかこんなに身近に「契約」というものが発生しているなんて!

ほんと。「契約」なんて、自分には関係ない遠い世界にあるものだと思っていました。

「契約」は、そのほかにも、「電車に乗る」「クリーニングを頼む」「美容室で髪を切る」など、さまざまな場面で行われているんだよ。

へぇ~!

あと、「契約」と似ているものに、「明日の15時に代官山のスタバで待ち合わせしましょう」といった「約束」がある。ただ「約束」は、守られなかったとして、道義的には非難することができても強制的に守らせることはできないよね。一方で「契約」は「法律的に拘束を受ける約束」。一度契約が成立すると、その内容に基づいて、当事者は自分の義務を果たす必要があり、特別な事情がない限り一方的に契約を破棄することはできない。もしも無断で破棄すると契約違反になり、損害賠償などの制裁を加えられる可能性があるんだ。

小さな契約もちゃんと守る。その中で「信用」が築かれていくんですね。

そう。私たちは日常生活の中で、多くの「契約」をしていて、何気なくしていることでも重要な「法的行為」であることを意識する必要があるんだ。

それから「契約」には、「当事者は合意によって自由に決定することができる」という「契約自由の原則」がある。つまり、「契約」とは当事者同士の合意があれば成立し、その内容や形式は問われないということ。ただし、この原則は当事者同士の立場が対等な場合のみ。家主と借主など、明らかに立場の差があるような場合には、法律による修正が加えられている。

「契約」は、私たちの日常生活に欠かすことのできないもの。仕事においても同じで、契約をおろそかにしていては、社会人として周囲の信頼を勝ち取ることはできないよね。特にビジネスの場における「口約束」は信用の失墜に直結するミスにつながりかねない。契約をきちんと書面に残すことが大切だよ。

はいっ!

契約自由の原則

①契約締結の自由

 契約を結ぶか結ばないかを自由に決定できる

②相手方選択の自由

 契約の相手を自由に選んでよい

③契約内容の自由

 商品、価格などの契約内容を自由に決められる

④契約方式の自由

 口頭による契約でも契約書による契約でもよい 

お金の貸し借り、どうしてますか?

ふたりはお金の貸し借りをしたことがある?

飲みに行って、たまたまお金がなかった時に友達に借りたことはあります。でも、ちゃんと返しましたよ!

Aくん、この前、お給料日前に同僚のCくんにもランチ代を借りていたよ(笑)。

それもちゃんと返したよ!

それは良かった(笑)。でも、「金の切れ目が縁の切れ目」とはよく言ったもので、お金の貸し借りは人間関係を壊す原因になりがち。基本的にすべきではないかな。

はい…。

でも、どうしても必要に迫られた場合や、ことさら社会人になれば、「起業のための資金」など、大金が必要となる機会もあるかもしれない。そこで押さえておきたいのが「借用書」について。無用のトラブルを避けるためにも、お金の貸し借りの際は、きちんとした借用書を交わそう。

借用書って、どうやって作るんですか?

どんな用紙でもよいので、「借用書を作成した日付」「最後に貸し付けをした日付」「金額」「貸主の署名・捺印」「借主の署名・捺印」を入れる。基本はこの5つが記載されていれば、きちんとした借用書としてみなされるんだ。そのうえでケースによって、利息や返済方法、担保などの条件、遅延の規定、連帯保証人なども記載する。ただし、借主の署名(自筆)は借主にさせなければならず、貸主が勝手に書いたものは無効になるので気をつけよう。捺印については、三文判(安価な大量製品のもの)でも、拇印(親指の先に朱肉や墨をつけて指紋を押捺するもの)でも問題ないよ。

それなら僕にも作れそう!

次に、保証人と連帯保証人について、正しく理解しておこうか。

よくわからないまま親戚の保証人になってしまい、いつのまにか借金まみれになっていたというドラマ、ありますよね。

「保証人」は信用経済や契約において、とても重大な存在なんだ。もし友人の借金の保証人になって、その友人が借金を支払えなくなったりしたら、友人に代わって保証人であるあなたが借金を支払わなくてはならなくなるんだよ。

え!それって僕に何の責任がなかったとしても?

そう。友人がギャンブルや夜遊びにハマって借金を作っていたとしても、保証人が借金の肩代わりをする義務はゆるがないんだ。また「保証人」とは別に、「連帯保証人」というものもあることを知っているかな?

聞いたことはあるけど、違いは何ですか?

「催告・検索の抗弁権」があるか、ないか。「催告の抗弁権」とは、保証人が消費者金融などの貸し手に借金の返済を請求されたときに、「まず先に借り手に請求してください」と拒否できる権利で、「検索の抗弁権」とは、保証人が貸し手に借金の返済を請求されたときに、「借り手に借金返済の資力があり強制執行できる」と証明すれば、借りて本人の財産を差し押さえるよう求めることができる権利。それが「保証人」にはあって、「連帯保証人」にはないんだ。

ということは、つまり…。

「連帯保証人」は、借り手と同格の扱いとなり、借り手が返済を拒否したり返済できなくなったりしたら、貸し手はただちに連帯保証人に返済を求めることができ、連帯保証人はこれを拒むことができない。つまり保証人よりも連帯保証人のほうがリスクが大きいということなんだ。

怖いなぁ。僕は絶対、連帯保証人にはなりません!

社会には人情や義理では通せないことがあるからね。契約の重みを知って、自分の信用を安売りしないようにしよう!

お金を借りるなら「バンク」「ノンバンク」、どっち?

さて、「信用経済」についてだいぶわかってきたかな? ここでは、その「信用経済」のうえに成り立っている「消費者信用」について知っていこう。「消費者信用」が発達していない時代は、物を買うには現金払いしかなかった。けれど「信用経済」を基本とする現在の社会では、前回も触れたように、クレジットカードなどでも簡単にモノを購入することができるようになった。

泉先生、この前テレビで、「ノンバンク」っていう言葉を聞いたのですが、「バンク」と「ノンバンク」ってどう違うんですか?

いい質問だね! 金融機関にはいろいろなものがあって、中でも消費者にお金を貸し付ける金融機関には主に「銀行(普通銀行、信用金庫、信用組合)」と「消費者金融」「信販会社(クレジットカード会社)」がある。「ノンバンク」とは、消費者金融や信販会社のことを指すんだ。銀行などの金融機関は、貸し付けだけでなく、預金の受け入れも行って、この受け入れた預金が、消費者に貸し付ける原資になるんだけど、ノンバンクは預金の受け入れを行わない。貸し付ける原資は、銀行からの借り入れや社債の発行などで調達しているんだ。銀行とノンバンクでは、同じお金を借りるにしても手続きや内容にも違いがあるんだよ。

昔は「消費者金融」と言うと、最後の手段! というイメージがあったんですけど、最近は、全国規模の銀行の系列にノンバンクがあるし、お金を借りるハードルが低くなっているような気がします。

そうだね。確かに便利になったかもしれないけれど、その半面、多重債務者が多数生まれるなど、大きな社会問題にもなっているんだ。

お金が借りられるなら、銀行もノンバンクも同じ、というわけではないんですね。

利率の高いノンバンクの利用はなるべく避けて、もし起業するなどして資金を調達する場合は、信用できる銀行を最大限に活用しよう。

はい!

自分が利用している、あるいは利用しようとしているサービスが、どんな仕組みによって成り立っているのか、どんな仕組みでお金の貸し借りがなされているのかを把握することが、これからますます重要になってくるよ。

まだまだ勉強しなきゃいけないことがたくさんだ~!

まとめ

「社会の仕組み」を知っておけば、「ダマされる」ことから自然と距離を置くことができる。社会人になったら、仕事でもお金のことでもコツコツと信用を積み上げておこう。それが、「いざ」という時の切り札になるはず。

次回は「トラブルから身を守る方法」について勉強していこう。お楽しみに。