福岡の若手映画監督は語る。「映画は見るのも作るのも楽しい!」
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福岡の若手映画監督は語る。「映画は見るのも作るのも楽しい!」

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福岡で精力的に映画を制作する、萱野孝幸さん。シネフィルかと思いきや、実は映画作りの原点は工作好きの少年時代。「とにかくモノづくりの現場が幸せ」と語る彼の、映画づくりを取材した。

Q.なぜ映画を「見る」だけでなく「作る」ことになったのですか?

Q.なぜ映画を「見る」だけでなく「作る」ことになったのですか?

実は小さい頃から映像が好きだったわけではなく、もともとは小さい頃から工作が好きで、モノを作ることに時間を費やしていました。

大学で画像設計の勉強を始め、映像に興味が湧いたのはこの頃からです。大学ではモーショングラフィックスや実験映像、ショートフィルムやミュージックビデオなど、様々なものを制作しました。周りに映像が得意な人が多かったこともあり、一緒に制作していました。

「絶対映画監督になるんだ!」という強い志向があったわけではありませんでしたが、在学中から仕事として映像制作を請け負うことも出てきて、そのまま映画を作っている感じです。モチベーションは「とにかく作るのが好き」という一点です。

Q.長編映画『カランデイバ』は群像劇です。どのように作っていったのですか?

Q.長編映画『カランデイバ』は群像劇です。どのように作っていったのですか?

5つのストーリーが展開する3時間の群像劇として制作しました。2年くらいかけて、撮影時間としては延べ50日くらいかけました。脚本も独学で、漠然とした映画の完成形から逆算するように、たくさんのパーツを作り、それを組み立てるような作り方でした。

撮影していて気づくことがたくさんありました。群像劇の登場人物というのは、自分自身の身近なことだけを把握していますが、実は過去の幸せや周りの人からの愛、他の人からの妬みなどは、主観的にしか知ることがありません。それを監督である僕や観客は、ある意味神様のような視点で運命を見ることができます。だからこそ、群像劇は自分の中に哲学がなければ撮れないものなのだと感じました。撮り終えてみて、結果的に自分の中から出てきたものは「他人に対して寛容でありたい」という気持ちだったように思います。

Q.撮影はどのようなスタイルで進めたのですか?

Q.撮影はどのようなスタイルで進めたのですか?

細部までコントロールすることはしませんでした。「どうしたい?」と役者やスタッフに投げかけて、一緒に考えていくという方法を採用しました。

思いがけず逆光がきれいで急遽アングルを変えて撮ったり、役者がセリフを間違えたのが、実はその方が流れからすると理に適ったものだったり。美しいアドリブだと感じて、それを採用しました。映画って、偶然性が強く入り込む、まるで生き物のようだと感じました。

Q.長編2作目の『電気海月のインシデント』は、うってかわってハッカーを主人公にした映画です。この企画はどのようにして持ち上がったのですか?

Q.長編2作目の『電気海月のインシデント』は、うってかわってハッカーを主人公にした映画です。この企画はどのようにして持ち上がったのですか?

前作は一から自分で企画しましたが、こちらは「ハッカーが出てくる映画」という企画が先にありました。子供向けプログラミング教室の経営者でもあるプロデューサーからの依頼で、「とにかくエンジニアやプログラマーを目指す子どもたちのテンションが上がる映画を!」というオーダーでした。

僕自身も、今作では前作であえて無視していたことにしっかり取り組んでみようと思いました。それは「飽きずに見られる映画」ということ。前作の3時間の群像劇で、当たり前ですが、映画を退屈させずに面白く見せることの難しさを感じました。今回は「正義が悪と戦う」というわかりやすいプロットを作り、見せ方や語り口にねじれた面白さを出そうという試みです。

まったく未知のハッカーの世界を描くために、過去の映画の先行研究をしたり、ハッカーの手記を読んだり。最終的にホワイトハッカーとして活動している人と会って、話を聞くことができました。お話してみると、その人はとても理詰めで物事を考えていて、この感覚をどう映画に活かそうか?と考えました。

Q. 『電気海月のインシデント』は劇場公開されたそうですね。反応はいかがでしたか?

自分が学生時代から観客として通っている映画館で、自分が撮った映画がかかるのは、不思議でもありましたし感慨深くもありました。見て欲しかった中学生や高校生が楽しんでくれているのは、嬉しかったですね。

改めて、映画というのはアートでもありエンターテインメントでもありますが、同時にショービズであるという側面を体感した作品でもありました。「作って終わり」ではなく、どれだけ劇場でかかって、いかにたくさんの人に見てもらうか。配給という仕事の重要さを感じた1本でした。

Q.映画の制作にはお金がかかると聞きます。上記2作はどのようにして作ったのですか?

Q.映画の制作にはお金がかかると聞きます。上記2作はどのようにして作ったのですか?

『カランデイバ』は、僕のポケットマネーとクラウドファンディング、一部企業の協賛をいただいて集めた300万円で制作しました。とはいえスタッフ、キャストには十分なギャランティが払えたわけではなかったので、これは今後の課題です。

『電気海月のインシデント』は、先程もお話したとおり、依頼を受けて制作したもので、僕もスタッフもギャランティを得て制作をすることができました。これは本当に助かりました!

撮り続けるためにはお金が必要です。ただお金の調達の方法は一つではないので、いろいろな方法で映画が撮影できる環境を実現させたいですね。

Q.福岡で映画を撮るというのは、萱野さんにとってはどういう意味を持ちますか?

他の場所で撮影をしたことがないので、比較はできないのですが…。こと映画については、東京でなければ撮れないということはありません。福岡は生活費も安いので、暮らしながら撮るということには向いている街だと思います。

日本各地で「フィルム・コミッション」という名前で、撮影クルーを誘致する試みも行われています。そのような地域のサポートがあると、圧倒的に映画づくりがしやすくなります。そうして日本で撮られた映画から、注目が集まる作品が出てくればいいですね。福岡でも、もっともっと映画が撮られるようになればと思います。世界中で映画が作られているということは、健康的でとてもいいことですし。

Q.役者さんとワークショップも行っていらっしゃるのですね?

役者や役者志望、演出家に近い人など、様々な人が参加しています。福岡で映画が作られることが少ないということは、すなわち映画用の演技をする機会が少ないということでもある。なので、みんなで定期的に勉強しています。僕自身も、常に映画について考えるという環境を作りたくて、実施しているところもあります。

Q.今後のご予定は?

Q.今後のご予定は?

今3本くらい並行して脚本を書いています。1本は刺激的な短編、1本はこれまでになくパーソナルなことを題材にした長編、もう1本はこれまでにないビックリするようなもの。

世界中には憧れの監督を含め、様々な映画を撮る人たちがいます。自分も、その一隅に席を占めてモノづくりができていることを、嬉しく思います。脚本を書く時から撮影まで、全てが僕にとっては幸せな時間です。映画には可能性しか感じません。

映画監督 萱野孝幸

映画監督 萱野孝幸

フリー映像作家、ディレクター。九州大学芸術工学部を卒業後、福岡を拠点に実写、グラフィック、インスタレーション等の多ジャンルの制作活動を行う。

『カランデイバ』公式サイト

『電気海月のインシデント』公式サイト

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