成功の秘訣は「want」思考。やりたいことへのエネルギーをクリエイティブの仕事に注ぐ!
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成功の秘訣は「want」思考。やりたいことへのエネルギーをクリエイティブの仕事に注ぐ!

もしかしたら、一度は見たことがあるかもしれないウェブCMの動画や、InstagramのPR写真。人の心に訴えかける作品を作り出すのは、クリエイターの松尾龍馬さん。企業CMやプロモーション動画、SNSの運用サービスにいち早く乗り出し、先見の明と独自のセンスでクリエイティブ業界の可能性を切り開いている。そんな松尾さんに、自身の意外な経歴と、今に至るプロセス、好循環を生み出すマインドについて話を伺った。

Q. クリエイティブ事業を始める前は、まったく違う職種だったそうですね?

Q. クリエイティブ事業を始める前は、まったく違う職種だったそうですね?

そうです、大手自動車メーカーで製造エンジニアをやっていて、その後独立してカーシェアのシステム運用事業を行いました。なぜ車業界だったかって? それは単純に車が好きだったからです。車やバイク、プラモデルが好きで、工具を使ってパーツを組み立てて完成させるのが単純にカッコいいなって思っていました。

もともとはロックンローラーになりたかったんですよ。学生時代にバンドを組んでいて就職する気はなかったんですけど、どうせ就職するんだったら何か自分の好きな車に携われたらいいなと。製造エンジニアとして勤めながら、30歳までに自分で何かやりたいという独立願望を温めていました。メーカーでの経験を重ね、自動車業界に革命を起こそうと、2011年に起業。28歳の頃でした。

独立の第一歩に、小型電気自動車を街中の至る場所に設置して、どこからでも借りられて、どこにでも返せるカーシェアのビジネスを立ち上げました。今でいう「メルチャリ」みたいなサービスですが、当時はまだ「メルチャリ」はおろか、「カーシェア」という言葉さえ一般的に浸透してない時代。そんな仕組みを小型電気自動車を使ってできたら世の中の移動手段が変わって面白いと思いました。…が、経営なんてやったことないし、起業後は手探りで失敗ばかりでした(笑)。

Q. 異業種から、クリエイティブ事業に転向したきっかけは?

Q. 異業種から、クリエイティブ事業に転向したきっかけは?

そこに行き着くには、もう少し紆余曲折がありまして。独立後3年間はカーシェアのインフラを作るために集中しましたが、肝心の小型電気自動車が量産されず、苦渋の決断でこの事業に見切りをつけました。
それからは、カーシェアのシステム構築で培った根幹を活かして、レンタカーの予約システムを販売することにしたんです。このレンタカー事業の一環で、旅行・観光をテーマにオウンドメディアを立ち上げ、初めて本格的な一眼レフカメラを持ちました。

ただ、レンタカーの予約サイトと旅行のオウンドメディア、業務システムの運営、それぞれに維持費やマーケティング費、広告費などがかかり…。月にかかる運営費は700〜1,000万円。資金が底をついてきて、いよいよ倒産するかどうかの危機に直面。

どうにか会社を存続できないかと考えて、目をつけたのがInstagramの運用でした。オウンドメディア用と個人用の両アカウントを持っていて、ハッシュタグ利用者数やフォロワー数はずっと増え続けていたので、これに振り切ろうと。ちょうど2015年にビジネスアカウントからの広告出稿が可能になり、企業がそこに目を向け始めたタイミングだったので、気運もあったと思います。二人三脚で事業を運営していた平川とともに、裸一貫でインスタ運用の新事業に乗り出しました。

【「ネッツトヨタ福岡」のインスタグラムの運営を担当 】

【「山口油屋福太郎」では、インスタグラムの運営と、商品のプロモーション動画制作も担当 】

Q. ビジネスの再スタートを切って、すぐに軌道に乗りましたか?

Q. ビジネスの再スタートを切って、すぐに軌道に乗りましたか?

今ならInstagramを使った広告にせよ、ビジネスアカウントの運用にせよ、いろんなところでされていますが、当時はまだまだ「え、インスタって何?」「どうやってフォロワーを増やすの?」と戸惑う企業さんばかり。写真や動画の世界観、投稿内容の一貫性とクオリティー、投稿頻度、ハッシュタグの付け方、フォロワーの増やし方など、有効的なノウハウを僕らは持っていたので、広告戦略としての活用法をレクチャーし、撮影を含めた運用代行を売り込みました。あの頃は競合相手がほとんどいなかったので、絶好のタイミングでしたね。

Instagramの投稿やプロモーション動画を使って広告展開したいという地元の老舗店、某有名メーカーとの取り引きが、早速始まりました。さらに翌年には、福岡市のオフィシャルアカウントの運用も担当。写真や動画、SNS運用に強い存在として注目されるようになり、仕事の引き合いがどんどん増えていきました。

【2018年制作/福岡城さくらまつりのプロモーション動画】

Q. カメラもそうですが、夢中になったらとことんハマるタイプ?

広く深くハマるタイプですね〜。車やバイク、音楽、カメラ、映画など、好きなものに関してはどんどん掘り下げたい派。例えば、写真を撮ることが好きなら、どういう撮り方をしたら面白いかを突き詰めたいし、海外のクリエイターの作品も調べて、いろんな手法を試したくなります。

今から5年前に初めて一眼レフカメラを持ったときは、そりゃあもう楽しくて! 使い方もコツも分からないけど、中学生の頃に初めてエレキギター持った時の興奮に似た感じ。しかも、自分の写真をInstagramにアップしていたら、「カッコイイ!」と世界中からコメントがきて、そんな反応が嬉しくてさらにカメラにのめり込みました。リアルタイムのライク(いいね)やコメントは、ライヴ演奏中のオーディエンスの反響に近いスピード感があって面白かった。

最初にロックンローラーになりたいという夢がありましたが、会社を立ち上げたのも「自分で何かやりたい!」という思いが根源にあるんですよね。今思えば、音楽にしても、写真にしても、事業にしても、「これってカッコよくない!?」と世の中に投げかけたかったんだなと思います。カーシェアビジネスやレンタカー事業で遠回りしましたが(笑)、本質的にやりたいことだから本領発揮できるし、こうやって事業も軌道に乗り、経営を続けられているんでしょうね。

Q. クリエイティブ事業にかけたお金はどのくらいですか?

Q. クリエイティブ事業にかけたお金はどのくらいですか?

そんなに馬鹿高くなく、カメラと周辺機器、パソコンなど、今あるすべての機材を合わせて総額1000万円くらいかな。裸一貫で再スタートしたので、融資もストップするわけですよ。だから機材費も売り上げの中から捻出するしかない。「この案件の利益は、あのレンズ代に」なんて言いながら、その都度買い足していきました。今は年間で予算を立てて機材の投資額を決めていますが、新商品やアップデート版が出たら…、やっぱりすぐ試したくなっちゃいますね(笑)。

経営上、財務管理は強化すべきでしょうが、少しでも余裕があるなら、欲しいものを優先してもいいんじゃないかなと個人的に思います。「このスペックがあれば、もっといい作品ができるし、面白いことができるよね! そしたらクライアントも喜ぶよね!」みたいな考え方。クオリティーや価値を高めていくために必要な投資がありますから。

Q. いつも楽しそうに仕事している松尾さん。働く上でのモットーは?

Q. いつも楽しそうに仕事している松尾さん。働く上でのモットーは?

ここ1〜2年で「should(~すべき)」「must(〜しなければならない)」よりも、「want(〜したい)」をベースに動くようになりました。だって、やりたいことをする時ってエネルギーが無限に湧いてくるじゃないですか! 「want」ベースで仕事をする方が僕自身エネルギッシュになれるし、周りのスタッフにもそのパワーが伝播するんです。あと、「やりたいこと」に関してはポジティブかつ建設的に実行できますよね。逆に「やるべきこと」だと引き腰になって、懸念材料に気を取られて、想定内のパフォーマンスしかできない。もちろん、やらなきゃいけない作業は絶対にあります。そこは「やりたいことを実現するために、やるべきことを遂行する」という姿勢! また、経営者として気をつけているのは、企業としてやりたい方向性(ベクトル)を揃えること。

スタッフにもやりたいことがあるはず。各自のベクトルと企業のベクトルが同じ方向を向いているチームビルディングがベスト。

Q. 以前と今では、お金の価値観も変わりましたか?

Q. 以前と今では、お金の価値観も変わりましたか?

経営が軌道に乗る1〜2年前までは、1日でも長く会社を存続させるために、会社の目標は売り上げと利益のみでした。そうなると、社内でも予算や売り上げなど、お金の話が先に出るようになるんですよ。そして生産性を上げるためにただただ作り続ける製造工場みたいになって…。さすがに「こんな会社がやりたかったのか?」と自問自答しましたね。利益が上がってもクリエイティビティが死んだら元も子もないし、このままだと持続可能な会社ではなくなると思い、会社としての指標を改めて考えました。

そこで生まれた理念が、「クリエイターがハッピーになる会社」。“クリエイター”とは社員をはじめ、うちに関わる人々です。もっと大きくいうと、モノづくりをする全ての人々を指します。みんながハッピーになるものを創り続けたい。
そして仕事の価値も、以前は売り上げや利益だけを見ていましたが、「尖る。楽しむ。儲ける。」の3つを掲げました。各プロジェクトが終わったら“尖り値”“楽しみ値”“儲け値”を10段階で評価して、見直しながら次に繋げています。今は3つのバリューの評価がどの案件も高く、それに比例するように売り上げも利益も伸びてきているからスゴイなぁと感じます。

よく社内で「僕らの仕事ってラブレターの代筆家みたいだね」って言っています。

広告動画の制作で一番ポイントにしていることは、クライアントが誰に対して何を伝えたいのかをきちんと探り当てること。クライアントが抱く「自分たちの商品とサービスをお客さんに知ってもらいたい。好きになってほしい」という思いを、ウェブやSNSの動画で魅力的に伝えること。これが僕たちの使命ですね。

Q. これからの展望を教えてください。

Q. これからの展望を教えてください。

現在のクリエイティブ事業の先に、子会社をいくつか持つ組織になれたら、もっと面白くなりそう。例えば映画の制作やアバレル商品の製作、カフェ事業もやりたいよね、と社内で話しています。
映画は動画制作の最高峰だから、僕たちもやってみたいこと。アパレルの分野は、自分たちが投げかけたいメッセージ=アート作品をファッションで主張してみたくて。カフェ事業はクリエイター同士がセッションして、いろんなものが生まれていく場を事業として運営できたらなと思っています。

どんなに時代や環境が変わったとしても、僕らの軸は「クリエイターがハッピーになる会社」を創ること。幸せをいっぱい生み出すような永久機関ができたら、世の中に一つ価値を生むことができたと思えそうですね。

株式会社リーボ  代表取締役  松尾 龍馬

株式会社リーボ 代表取締役  松尾 龍馬

1982年生まれ、北九州市出身。大手自動車メーカーに製造エンジニアとして入社後、2011年に独立し、株式会社リーボを設立。複数の事業を立ち上げ、2015年よりクリエイティブ事業を開始。CEOとして会社経営をしつつ、チーフクリエイティブディレクターとして、社内のクリエイティブも統括する。自身も写真家/映像作家として撮影・編集することもある。ロックンロールが好き。

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