社会人になったら、一人暮らしを始めたいと思う人も多いですね。今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、初めての一人暮らしの際に単身者用のマンションの購入を考えておられる20代女性のご相談です。家賃を払い続ける必要がある賃貸と比べてコストはどうなのか、比較して考えてみましょう。

20代独身女性の相談内容

20代独身です。職場と実家が近いので現在は実家暮らしですが、そろそろ一人暮らしをしたいと思っています。しかし会社の家賃手当制度もないので、親からは「家賃がもったいない」と反対されています。それなら、賃貸ではなく、ワンルームのマンションを購入すれば、負債は抱えるものの自分の資産にもなるのではと思いました。しかし結婚や育児、キャリアなど、今後のライフプランに未確定要素が多く、分からないことも多いので踏み切れずにいます。

住居費以外の生活費はどれくらい必要なのかを考えましょう。

ご相談者の「そろそろ一人暮らしをしてみたい」という気持ち、よく分かります。一人暮らしをして初めて分かることも多く、やはり一度経験しておくことは大事だと思います。その上でご質問について考えていきましょう。

まずは住居費以外にどのような生活費が必要なのかを考えてみましょう。

ざっくりと挙げてみましたが、住居費以外にも諸々の費用がかかります。総務省が発表している2021年の家計調査／家計収支編単身世帯によると、34歳未満で単身世帯だと家賃以外の消費支出は約15万5000円です。あくまで全国の平均値ですので地域差や個人差が大きくなると思いますが、住居費以外でもかなりの支出が伴うと考えて良いでしょう。

マンション購入によってかかるコストを考える

「賃貸だと家賃がもったいないので、家を買って住宅ローンを払う」というのも一つの考え方です。ローンはあるにせよ、不動産という資産を持つことは魅力的です。ただし注意が必要なのは持ち家にもそれなりのコストが必要という点です。

例えば、マンションなら住宅ローンの他に毎月の管理費と修繕積立金、場合によっては自治会費等が必要です。金額としてはマンションの築年数や規模にもよりますが、管理費・修繕積立金で毎月1.5万円～3万円程度を支払っているケースが多いようです。また不動産を所有すると固定資産税の納税が毎年発生します。こちらも地域差が大きいのですが、年間10万円～15万円程度が必要です。

大まかにまとめると住宅ローンの他に2万円～3万円／月のランニングコストが必要です。

住居費をいくらぐらいで設定するか？

生活費と持ち家の場合のコストについて触れましたが、相談者さんのイメージと違いはなかったでしょうか？仮に賃貸物件に住むとしても毎月の手取り給料とのバランスもあります。賃貸であっても持ち家であっても、住居費は一般的に毎月の手取り金額の30％程度が一つの目安と言われます。例えば毎月5万円の賃貸物件の家賃を支払うのは相談者の方にとって、どれくらいの負担となりそうでしょうか？

一人暮らしの家賃は無駄？単身用でも購入したの方がいい？

個人的には、まず賃貸物件で一人暮らしをスタートさせることをおすすめします。理由は以下のとおりです。

まずは賃貸物件で一人暮らしを経験してみて、生活スタイルやお金のやりくりに自信が持てたら、単身者用のマンション購入を具体的に考えてみると良いでしょう。2～3年、賃貸住まいをして、前述した管理費や修繕積立金等のランニングコストを含め、資金面の心配がなくなってからでもマンション購入は遅くはありません。

仮にマンションを購入するとしても、単身者用のマンションも新築・中古といろいろあります。もし購入されるとすれば中古で駅近・もしくは地域の中心地の立地を選ぶことをおすすめします。一般的に中古物件の方が資産価値の下落が緩やかで、駅近など利便性が高いと売却しやすいからです。

まとめ

相談者さんが、一人暮らしをしたいのか資産として不動産を持ちたいのかにもよりますが、まずは賃貸物件で一人暮らしをスタートさせることをおすすめします。20代ということで、これから転職・結婚・子育てなどライフスタイルが大きく変わる可能性もあります。そんな中で持ち家の単身者用のマンションが足かせになることもあるでしょう。

もしかしたら「住めなくなったら貸せば良い」ということを考えておられるかもしれません。実は住宅ローン返済中の物件を第三者に貸し出すには、金融機関の許可が必要だったりして難しいことが多いです。そのため「貸す」よりも「売る」ということになるかもしれません。

一人暮らしが未経験ということであれば、いろいろと変更ができる賃貸物件でスタートし、経験を積んだ後にマンション購入を検討するでも遅くはないと思います。