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「NISA恒久化」決定!新しいNISAの使い勝手はどうなる?

経済とお金のはなし 箕輪 健伸

「NISA恒久化」決定!新しいNISAの使い勝手はどうなる?

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12月16日、自民党と公明党の与党は、「令和5年度税制改正大綱」を取りまとめました。この中で多くの人の注目を浴びているのが「NISAの恒久化」です。現行のNISAでは、「一般NISA」、「つみたてNISA」のいずれも口座開設可能期間と非課税期間が限られていました。新たなNISAでは口座開設可能期間が恒久化、非課税期間は無期限化されます。新しいNISAはどのような制度なのでしょうか。そして、制度が新しくなることでどういったメリットが加わるのでしょうか。この機会に詳しく見ていきましょう。

NISA恒久化、今後のプロセスは?

少額投資非課税制度(NISA)の恒久化と非課税期間の無期限化は、今年8月に金融庁が要望を出していたものです。今回、与党の税制改正大綱に取りまとめられたことで、実施が確実なものとなりました。なぜ、まだ与党の税制改正大綱、いわゆる案の段階であるにも関わらず、NISAの恒久化が確実と言えるのでしょうか。それは、税制の改正が決まるプロセスからして、税制改正法案の可決成立が確実だからです。

ここで、税制の改正が決まるプロセスを見ていきましょう。まず、与党が取りまとめた税制改正大綱をもとに「税制改正の大綱」が閣議決定されます。その後、国税の改正案を財務省が、地方税の改正案を総務省が国会に提出。衆参両院とも、税制改正大綱を取りまとめた与党が過半数を占めているため、法案は確実に可決されます。

今後のスケジュールは、例年通りであれば、来年1月下旬に召集される通常国会で改正法案が提出される見通しです。衆参両院の委員会で審議を行った後、衆参両院の本会議に付され、可決成立すると見られています。

新制度により非課税期間が無期限化

ルールの変更
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それでは、制度が新しくなることで、NISAはどのように変わるのでしょうか。まず、NISAの新制度の適用開始は、2024年1月が予定されています。NISAは、投資先が投資信託に限定された「つみたてNISA」と、国内外の上場企業株から自由に投資先を選択できる「一般NISA」、「ジュニアNISA」の3種類に分かれます。このうち、「ジュニアNISA」は国内に住む未成年が対象の制度でしたが、2023年末での廃止が決定済みです。

これまでのNISAでは、口座開設可能期間と非課税期間が設けられており、「つみたてNISA」の口座開設可能期間は2042年まで、非課税期間は20年間。「一般NISA」の口座開設可能期間は2023年まで、非課税期間は5年でした。

これが、新しい制度になると、「つみたてNISA」「一般NISA」ともに口座開設可能期間は恒久化、非課税期間は無期限化されます。なお、「一般NISA」という呼称は2023年までで廃止され、2024年からは新しい呼称となる予定ですが、この記事では便宜上、「一般NISA」と表記します。

さらに、年間投資可能額も増額されます。これまで、年間投資可能額は「つみたてNISA」が40万円でしたが3倍の120万円に、「一般NISA」が120万円から240万円に増額される予定です。また、これまで、「つみたてNISA」と「一般NISA」の併用はできませんでしたが、新制度では併用可能になります。両者を併用した場合、年間投資可能額は最大360万円にアップされるわけです。

一方、投資可能金額が増えたとしても、多額の資金を投資できるのは資産のある、いわゆる「お金持ち」です。NISAは平たく言えば、投資を促進するための非課税制度です。おそらく、多額の資金を投資できる「金持ちを優遇しているのか」との反発に備えたのでしょう。新しいNISAでは、生涯投資可能額の上限が1800万円に設定されています。

若者ほどメリットは大きい

投資のことを考える女性
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新しい制度になることによる最大のメリットは、非課税期間が無期限化されることでしょう。特に、投資期間が長くとれる若年層ほど、享受できるメリットは大きくなります。超低金利の日本では、銀行にお金を預けていても、利子はほとんどつきません。一方、NISAでは、1年間の利回りが10%を大きく超える銘柄も少なくありません。ただし、NISAは投資ですので、リスクが伴う点には注意する必要があります。

また、企業側にもメリットはあります。現状、一般NISAの総買い付け額のうち、上場株式が7兆円を占めています。とはいえ、日本人の投資意欲は海外と比べて旺盛とは言えません。

日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」(2020年8月発行)によると、日本の家計金融資産のうち、54.2%が現金・預貯金、株式・出資金は約9.6%、投資信託は3.4%です。アメリカは、家計金融資産の現金・預貯金の割合は13.7%。株式・出資金の割合は32.5%で、12.3%の投資信託と合わせると50%近い資金が投資に流れていることになります。

アメリカ企業が成長する力の源泉の一つがアメリカ国民の旺盛な投資意欲にあると言われています。新しい制度になり、多くの人がNISAを利用することになれば、それだけ多くの成長資金が企業に流入することになるでしょう。NISAの恒久化によって、日本経済全体の成長も期待できるわけです。

確かにNISAは投資であるため、元本割れのリスクがないとは言えません。しかし、若い人ほど利用するメリットが大きくなることも事実です。NISAの利用を一度も考えたこともないという方は、この機会に検討だけでもしてみてはいかがでしょうか。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。