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円安の今注目の外貨建て保険、「やってはいけない」人の特徴とは?

ふやす 白浜 仁子

円安の今注目の外貨建て保険、「やってはいけない」人の特徴とは?

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インフレ、円安が進む今、何か資産の対策をしたいと考える人が増えています。その方法のひとつとして米ドル建てなどの外貨建て保険が気になるという声も。そこで今回は、外貨建て保険のリスクやデメリットを確認しながら、どのように付き合っていくと良いのか、その考え方を紹介します。

円安の今、外貨建て保険が人気?

急激に円安が進んでいる今、今年10月には一時1ドル151円台をつけるなど32年ぶりの水準を迎えました。11月の執筆時点では少し落ち着き、139円台半ば付近を推移していますが、1年前は113~114円くらいでしたので、依然として大幅な円安が続いていると言えます。円安となった主な理由は利上げです。新型コロナウイルス感染症やロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーや原材料不足などにより物価が上がり、主要国では、今、インフレ抑制のため利上げが行われています。

そんな中、日銀はコロナ前と変わらず低金利を維持し、利上げは行わない方針を打ち出しています。そのため、低金利でお金が増えない日本への魅力が薄れ、円が売られ、米ドルやユーロ、豪ドルなどの通貨が買われることで、円安になっているのです。

このような状況下で、外貨に関心を寄せる人が増えています。円安は日本で資産運用をする時にはプラスに働きます。仮に1ドル=110円の時にドルを買い、1ドル=150円と円安になった時に売却すると、1ドルあたり40円の儲け(為替差益)が出るためです。金利と円安傾向という流れに魅力を感じ、貯蓄タイプの外貨建て保険に目を向ける人もいます。

外貨建て保険とは?種類や日本円とどう違う?

外貨保険
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外貨建て保険とは、読んで字のごとく外貨で加入する保険です。対象となる外貨は米ドル、豪ドル、ユーロなどですが、ライフプラン相談で拝見する外貨建て保険では、数年前は豪ドルの保険、最近は米ドルの保険を多く目にするように思います。保険の種類は、終身保険や養老保険、年金保険など保障を得ながら貯蓄するというタイプです。(投資信託で運用する外貨建ての変額保険もありますがここでは掘り下げません)

通貨が円ではないため、保険料の支払いや保険金の受け取りは外貨で行います。外貨を持っている人は外貨で保険料を支払うことができますが、通常、私たちは円を多く保有しているため、保険料を支払う時は、円→外貨に換えて支払います。また保険金や解約返戻金の受け取り時も、外貨のまま受け取れる選択はありますが、一般的に外貨→円に換えて受け取ることが大半で、その手続きは保険会社が全てやってくれます。

このように円と外貨の交換が必要というのが外貨建て保険と円建て保険との大きな違いです。つまり、1ドルがいくらなのかという為替レートが、その都度関係してきます。

外貨建て保険のメリットは

では、外貨建て保険のメリットは何でしょうか?ひとつは、前述の金利水準の違いです。日本は、バブル崩壊から金利が低下し続け、さらに、アベノミクス以降の日銀による大規模な金融緩和により、地を這うような金利であることは言うまでもありません。

金利は、保険商品の設計にも影響します。なぜなら、契約者が支払う保険料は、保険金や満期金の支払いに備え、保険会社がその国の国債を中心に運用しているためです。保険会社が保険商品を設計する際は、その運用利回り(予定利率という)を想定して契約者が支払う保険料を決めます。

つまり、同じ保障を契約する場合でも、予定利率が低い場合は、保険金の支払いのために運用で資金を多く準備することができないため保険料は高めに、予定利率が高い場合は保険料を抑えられるというわけです。外貨建て保険のメリットは金利が高く予定利率が高いということになります。

外貨建て保険をやってはいけないと言われる理由は

YES・NO・チェック
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一方で、外貨建て保険についてネガティブな見解もあります。何でもそうですが、メリットがあればデメリットもあるのです。以下見ていきましょう。

リスク・デメリット

外貨建て保険のリスクは、為替レートの影響を受けることで為替リスクと言います。リスクとは不確実性のことを指しますので、為替リスクは良い方向にも悪い方向にも働きます。

米ドル建ての保険に加入し、毎月の保険料が100ドルだったとしましょう。1ドル110円の月の保険料は1万1000円ですが、円安になり1ドル150円になると約36%アップの1万5000円を支払わなければなりません。円高になってくれると保険料の負担は少なくなるため嬉しいですが、先々のレートは神様でなければ分からず、支払う保険料の総額は、円建て保険にくらべ不透明です。

一方、保険金の受け取り時は、円安になっていると増えます。死亡保険金が5万ドルの死亡保険に加入したとしましょう。死亡した時に、1ドル=110円なら受け取りは550万円、1ドル=150円なら750万円とその差は200万円。保険金額が大きくなるほど、少しのレートの違いでも円での受取額は大きく違ってきます。

また、円からドルへ、ドルから円へと通貨交換をする時に掛かるコストも知っておきましょう。通貨交換をする時は、同じタイミングでも、ドルを買う(円をドルに換える)時と、ドルを売る(ドルを円に換える)時とではレートが異なります。これは、交換する時のコストが、加味されているからです。

交換レートの物差しになる基準レートをTTM(仲値)といいます。それを軸に円をドルに換える時にはコストが上乗せされ(TTS)、ドルを円に換える時には差し引かれます(TTB)。下記の例では、保険料を支払う時と受け取る時、どちらも基準レート(仲値)が同じでも2円の開きがあることが分かります。思ったより保険料が高い、思ったより受け取り額が少ないとならぬよう理解しておきましょう。実際のコストは、50銭や25銭のように保険会社ごとに上乗せ額が定められているので契約時に確認しておきましょう。

(例)
TTS(顧客電信売相場)=131円 ←円をドルに換える
TTM(仲値)1ドル=130円
TTB(顧客電信買相場)=129円 ←ドルを円に換える

よくあるトラブル事例

ここからは外貨建て保険の契約で起こるトラブルを紹介します。
一般社団法人生命保険協会が公表する「銀行等代理店で発生した外貨建て保険・年金の新契に関する苦情件数」によると、2014年度の苦情件数は922件。それに対し、2019年度には2822件と3倍超に増えています。

トラブル例としては、「元本保証と思っていたのに違った」「為替リスクがこんなに影響するとは知らなかった」など、損失が生じているケースで起こります。

これは、円建てより金利が高いという点に着目して外貨建て保険の販売が行われていることから、殖えるという印象が強く残るためと考えられます。円高に振れると前述のような為替リスクが悪い方に働くため、元本割れをしてしまい苦情に繋がるようです。

また、元本割れにならずとも、思ったより増えていないということから苦情に繋がるケースもあります。これは、為替レート以外にも生命保険に掛かる様々なコストが影響しています。

保険は、契約を維持していく上で諸費用が掛かっています。円建てでも同様に費用は掛かりますが、外貨建ての方がコスト高になる傾向にあります。以下が主な費用です。

保険関係費用は、契約を維持するのに必要な人件費、保障に対するコストです。また一時払いの場合は、契約時に払込みした保険料から4%や6%などと決められた手数料が差し引かれます。一定期間内に解約する場合は、市場の金利状況などが勘案され差し引かれる市場価格調整や解約控除などの手数料もあります。また、年金保険などは、受け取り時に年金管理費用が掛かるなどもあります。

外貨建て保険の普及とともにこのようなトラブルが増えましたが、2019年以後の苦情件数は減少へと転じ、2021年度には1375件でした。これは、説明義務などの販売体制が徐々に見直され、販売側と購入者の知識格差などに強く配慮をされるようになったからです。しかし、契約者も「何となく良さそう」という漠然とした契約をしないよう、きちんと内容を理解する必要があります。契約をする時に説明がありますが、パンフレットや保険の設計書などの後方にもリスクやコストのことがまとめて記載されているため確認しておきましょう。

外貨建て保険商品の選び方

プランABC
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これらメリット、デメリットを踏まえ、外貨建て保険を選ぶ場合のポイントを考えてみましょう。金融商品を選択する際には、「流動性」「収益性」「安全性」の3点のうち何を重視したいかという目線を持つと整理できます。

外貨建て保険は、一定期間内に途中解約すると(外貨ベースで)元本割れをするため、為替レートがかなり円安に振れていなければ円で受け取った時の手元の資金は目減りしてしまいます。そういう意味では、「流動性」に欠ける商品といえます。また、途中で資金が必要になり解約せざるを得ないという時に、保障も同時になくなってしまうのも難点です。ですので、契約金額はあまり無理のない範囲にとどめ、保障が不足する分は掛け捨て保険と併用するということも検討しましょう。

次に、「収益性」という視点です。外貨建てにすることで、円建てより 解約返戻金や満期金、保険金も期待できます。特に、相続対策などで一生涯死亡保障があった方が良い、資産を多く残したいという場合は、「払った金額より多くの資金が死亡保険金として遺族に残せる」「保険金を相続税の納税に使ってもらえる」などでレバレッジを効かせられるのが魅力です。一方で、保障にはコストが掛かっているため、人によってはそもそも保障がいるのかどうかも合わせて検討する必要があります。

また、貯蓄が苦手だから、敢えて保険で積み立てているというのもよくある話です。口座振替などで強制的に払い込みをし、解約する時も手間が掛かりそうという心のハードルがあることが、貯金が苦手な人にはかえって有効な手段かもしれません。

最後に、「安全性」。外貨建て保険は為替リスクを伴います。外貨の方が円より増えると思って外貨を保有しているのだから仕方ありません。リスクとリターンはトレードオフの関係ですから。保障が不要なら、つみたてNISAを検討するのも手です。なお、万一保険会社が破綻した場合は、生命保険契約者保護機構により保護されます。

まとめ

今回は、外貨建て保険についてメリット・デメリットをみてきました。今回のテーマである外貨建て保険をやってはいけない人はどんな人かをまとめます。 

外貨建て保険に限らず資産運用への関心が高まっていることは良い事です。世間の流行りに乗るのではなく自分には何が合っているのかを考え、最適な金融商品を見つけましょう。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。

外貨建て保険についてのQ&A

Q.ドル建て終身保険の加入を考えています。一時払いと定期払いはどちらが有利ですか?

A.損得は、後にならなければ分かりません。為替リスクが影響するため、長期的に円安が進むと考えるなら一時払い、そう思わない、または分からないというなら定期払いが安心です。

Q.円安で儲けが出ているため外貨建て保険を解約する予定です。解約控除がいくら掛かるか事前に分かりますか?

A.保険会社に確認すると現時点での受取額を教えてもらえます。ウェブサイトにログインして調べることも可能です。