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40年ぶりのインフレと賃上げ対決、どちらの上げ幅が大きくなるのか

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

40年ぶりのインフレと賃上げ対決、どちらの上げ幅が大きくなるのか

はっきりと物価高で終わる2022年、2023年はどうなる?

2022年を象徴する言葉をひとつ選ぶとすれば、マネーの世界では「インフレ(物価高)」があげられます。

2021年後半あたりから兆しが現れていた物価高は、2022年に入って顕在化しました。光熱費やガソリン代などのエネルギーコストの上昇は20%以上となって家計を直撃しました。食品の値上げも10%以上の品目が数多くあらわれました。年内に2回値上げするようなことも近年なかったことです。

2022年10月は食品関係だけでも6700品目の値上げがあったとされ、これを反映した10月の物価上昇率は40年ぶりの上昇とされています(消費増税の影響で上昇した時期を除く)。

基本的には「人件費の上昇」「運送コストの上昇」「原材料費の上昇」といった物価上昇要因がそろって生じていることと、激しい円安基調、世界的な政情不安(ウクライナへのロシアの侵攻等)が起きたことも物価高に拍車をかけている格好です。

本来であれば、物価上昇が続くのが経済の標準的な姿であり、世界はこの20年もゆるやかなインフレとなっていました。日本は低インフレ~デフレ基調が長らく続いてきましたが、40年ぶりにそうした世界の流れに乗ることになるのかもしれません。

2023年、物価が上がった分、給料も上がらないと困る!


さて、経済学の教科書的には、物価上昇が生じる時、もうひとつ同時に生じるとされているのが賃金の上昇です。

物価が上昇した分、賃金上昇がなかった場合、これは実質的な給与減です。例えば月20万円の手取りであった人は、5%物価上昇したとすれば、月21万円なければ同じ生活ができないことになり、給与も5%分、1万円上げて欲しいと期待します。企業もこれに応じないと他社に人材が逃げられますから、物価上昇分の賃上げを検討することになります。

一般的には、3月末決算、4月年度始まりの企業が多いと思いますが、これは人事評価の区切りも4月にやってくることを意味します。それは同時に報酬制度の区切りでもあります。

要するに「4月は賃上げの季節」ということです。この賃上げ、ここ20年以上は物価上昇がほとんどみられなかったので、「物価上昇ほぼゼロ%、賃金上昇プラス0.5%」のような感じが続いていました。

2023年は、過去数十年なかった「物価上昇分の賃上げがないと生活に困る!」という年になります。2022年の物価上昇をカバーする賃上げが必要で、できればそれを上回った賃上げ率で2023年の値上げにも対応できるようにしたいところです。

賃上げを大きく分けると、個人ごとの昇格昇給にともなう給与増と、全従業員の給与を一律に引き上げるベア(ベースアップの略)があります。物価上昇に対応するのは後者のほうです。

まずは、物価上昇分に見合う賃上げが春に得られるかどうかをチェックしてみましょう。労働組合がある会社は労働組合のがんばりにも注目したいところです(労働組合なんて何の役に立つの?と思っているかもしれませんが、社員を代表してこういう交渉事のフロントに立つ役割があります)。

春に給料が増えたら インフレと賃上げ率の「丈比べ」を忘れずに


おそらく、2023年の春は「プラスの賃上げ」獲得は可能性大です。しかも過去数年と比べて高い率あるいは金額が示される可能性があります。

しかし気をつけなくちゃいけないことがあります。それは、インフレ率と賃上げ率とを「丈比べ」する感覚を持つことです。

以前、経済的に不安定な国に暮らしている人と話をしたら、ずいぶん楽観的だったので驚いたことがあります。理由を詳しく分析してみたところ、「金額としての給与は毎年増えているので大丈夫」という感覚を持っていたことが分かりました。

インフレが激しすぎるのは経済的に不安定な一面があるからですが、毎年10%ずつ「金額」で給料が増えていたとすればどうでしょうか。実際は「物価上昇率」も10%あったとすれば、プラマイゼロなのですが、やっぱりどんどん給料が増えているような気がして嬉しくなります。

月20万円の給与が21万円にアップしたとなれば、すごくいいことのように思います。しかし物価が5%上がっていたとすれば、21万円に上がってようやくトントンだという感覚を持って、賃上げ状況をチェックしていきましょう。

2022年10月の物価上昇率が前年同月比で+3.6%でした。光熱費などは+20%以上の上昇ですからそれ以上の賃上げになるかどうかを見守っていきたいところです。

この問題、40歳代の先輩達でも未経験の世界です。なにせ20年以上物価が上がらず、統計上は40年ぶりといわれるくらいですから。

ライフプラン3.0世代は、こうした視点をもって、賃上げを見据えてほしいと思います。

これからの時代、給料が増えるかどうかに自覚的になろう


「物価上昇率=賃上げ率(ベースアップ分)」についてチェックするのと同様に、自分の仕事がちゃんと評価されて昇格・昇給がされていくかどうかにも目を配っていきましょう。

物価上昇率以上に給料を大幅にアップさせることができるチャンスとして、昇格・昇給があります。社内の人事評価でいい反応が得られて、人事処遇がよくなればその分、人事報酬もアップすることになるからです(この、評価・処遇・報酬のサイクルを回すことが人事制度の基本なので、覚えておきましょう)。

2023年春に昇格・昇給できた人は、物価上昇率とは別に自分だけ給料がアップすることになります。2023年春は昇格にならなかった人は、何をがんばれば昇格のチャンスがあるか、社内制度をチェックしてみましょう。社員のことをちゃんと考えている会社なら、きちんとルールが示されています。上司に面談時などに質問してもいいでしょう。

あなたの能力が高まり、それを会社に評価してもらえれば、あなたの給料も増えていきます。できればその「流れ」にうまく乗りましょう。攻略本を読んでゲームを最短ルートで攻略するように、昇格昇給も社内のルール(規定)を理解しておくことをオススメします。

ところで、評価・処遇・報酬のルールが曖昧だったり不明確な会社は要注意です。仕事はさせても給与は増えないような会社は見切りをつけて、元気があってやる気のある社員を求めている会社に転職をするのも検討してみましょう。

あなたの働きぶり、能力をちゃんと評価して、それに見合った給料をしっかりくれる会社はきっとあります。諦めずにがんばりましょう。

——これからの時代、しばらく物価上昇が続くことになると私は予想しています。1000円の商品も5%値上げが5回繰り返されると1276円になります。10%の値上げが5回あるとなんと値段は1610円です。2022年、10%値上げが同一年内に2回行われた食品も多々ありました。

値上げに敏感になる必要がある時代は、自分の稼ぎのアップにも敏感になるべき時代なのです。