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10月からマイナ保険証の窓口負担見直し、結局持ってた方がお得?

経済とお金のはなし 箕輪 健伸

10月からマイナ保険証の窓口負担見直し、結局持ってた方がお得?

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マイナンバーカードと健康保険証を紐づけた通称「マイナ保険証」。政府は普及を推進しようとしていますが、民間の調査会社の調査によると、「マイナ保険証を利用登録して既に使っている」という人はわずか3.3%。マイナ保険証が利用できるようになって1年ほどたちますが、まだまだ普及は進んでいません。

その理由の一つが、従来の保険証よりもマイナ保険証を利用した方が、医療機関での窓口負担が増えるというもの。そこで今回、政府は普及拡大のため、マイナ保険証利用時の窓口負担を見直しました。これまでとどのように変わったのでしょうか?

マイナ保険証のメリットとは?

マイナンバーカードを持っている方でも、わざわざ保険証と紐づけたくないと思う方も多いのではないでしょうか。マイナンバーカードと保険証を紐づけるには、インターネット上で完結するとは言っても、手間がかかることは事実です。手元に保険証があるのに手間をかけてまでマイナ保険証にする必要性を感じない方も多いと思います。

それだけマイナ保険証のメリットが、一般の国民に伝わっていないと言い換えても良いでしょう。そもそもマイナ保険証が導入されることによって、国民にどのようなメリットがあるのでしょうか。

マイナ保険証が導入されれば、就職や転職、引っ越しをした際も、健康保険証の新規発行を待たずに医療機関を受診できます。さらに、健診情報や診療情報、薬剤情報、医療費などが医療機関同士で共有されるため、初めて受診した医療機関でも、より迅速に、より適切な医療を受けられるようになるでしょう。

加えて、マイナンバーカードは顔写真付きのため、保険証の不正利用が発覚しやすくなる点もメリットです。また、医療費控除の確定申告をオンラインで簡単にでき、これまでのように一人ひとりが医療費の領収書を管理する必要がなくなります。

マイナ保険証の導入が進まない理由

病院の受付
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これだけメリットがある中、なぜなかなかマイナ保険証の普及が進まないのでしょうか。多くの医療機関がまだ対応できていないという点もありますが、マイナ保険証を利用した方が、従来の保険証を利用した時より医療費の窓口負担が増えてしまうという点も見逃せないポイントです。

医療機関がマイナ保険証に対応するためには、専用のカードリーダーやカルテの電子化などの設備投資が必要になります。医療機関の設備投資負担を補うため、マイナ保険証に対応する医療機関で受診する場合には、患者には追加負担が課せられています。

10月までの負担額は、初診時、従来の保険証を利用した人は9円、マイナ保険証を利用した人は21円でした。さらに再診時、従来の保険証を利用した人の追加負担はありませんが、マイナ保険証を利用した人には12円の追加負担がかかっていました。調剤の際も、従来の保険証を利用した人の追加負担は3円なのに対して、マイナ保険証を利用した人の追加負担は9円。手間をかけてマイナ保険証に切り替えたにもかかわらず、それによって自己負担が増えるようでは「マイナ保険証はいらない」と思う人が増えても仕方ないことでしょう。

結局、負担額がおトクなのは従来の保険証?それともマイナ保険証?

診察券の受け渡し
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こうした不公平感に国民の反発も大きく、政府は今年10月からマイナ保険証を利用した際の追加負担額を見直しました。

マイナ保険証を利用した場合、初診時の追加負担は21円から6円に引き下げ、反対に従来の保険証を利用した場合の初診時の追加負担は9円から12円に引き上げられました。再診時は、マイナ保険証、従来の保険証とも追加負担は発生しません。さらに、調剤時の追加負担は、マイナ保険証の9円と従来の保険証の3円を逆転させています。見直しの結果、従来の保険証と比べマイナ保険証の方がいずれの場合においても負担額は低くなり、おトクになりました。

●2022年10月までの追加負担額

●2022年10月からの追加負担額

 
政府は2024年秋に従来の健康保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化すると発表しています。その一方で、情報流出を心配する声や紛失時の懸念、認知症の方の申し込みをどうするのかといった課題の声も聞かれています。マイナ保険証には、前述したように数々のメリットがあり、普及が拡大すれば私たちの生活の利便性は向上するでしょう。政府には、国民の間の根強い反発や心配の声に対して、丁寧に説明していく姿勢を期待したいところです。