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離婚後、がんが見つかりこれからのお金が不安…42歳女性FP相談

うちの家計簿 世継 祐子

離婚後、がんが見つかりこれからのお金が不安…42歳女性FP相談

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FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿を、mymoで診断する【うちの家計簿】。今回は会社員42歳女性、Kさんの家計簿です。

昨年離婚した42歳Kさんの相談内容

昨年離婚しシングルになりました。引っ越しも済み、これからのことをいろいろ考えていた矢先に、がんが見つかりました。毎年検診を受けていた中で見つかったので医師からは早期発見だと言われていますが、まさか自分ががんになるなんて考えてもみなかったので、今後の生活が急に不安になりました。来週、今後の治療について説明がある予定です。家計、お金のことで知っておいた方がいいこと、気をつけることなどありましたら教えてください。

Kさんの家計簿は・・・?

手取り23万8600円。つみたてNISAと貯金で合計4万1300円、手取りの約17%を資産形成にまわしています。生命保険は医療とがんの保障があるものに加入しています。年に2回のボーナスは帰省にかかる費用以外を資産形成にあてており、今は年収を超える貯金が準備できています。

がんの治療計画を確認しましょう

これから具体的な治療について説明があるのですね。まずは今後のがんの治療計画について、期間、治療内容を確認しましょう。がんの主な治療の種類には手術、抗がん剤治療、放射線治療があります。医療費は、健康保険適用、先進医療、自由診療といった治療内容によって負担額が変わります。

今後入院で治療するのか、通院での治療なのかだけでなく、治療の内容、期間の目安などを確認しておくと、治療にかかるお金などが具体的にイメージしやすくなります。治療計画の説明を受ける際に聞いておくと安心です。

がんの治療時に保障される保険にも、入院時に保障されるものや通院時に保障されるものなど様々な保障があります。治療計画と照らし合わせて、今後保険の給付の対象となるのか、事前にある程度確認しておけば治療費について支出の目安が立てやすくなります。

診察時はしっかり聞こうと思っていても、緊張して聞きもらしてしまったり、聞いたことを忘れることもあるので、ご自身でメモをとったり、家族などが同席し一緒に話を聞いてもらえると、聞きもらしも少なくなり、あとで内容も確認しやすくなります。

治療と仕事の両立のために

治療の内容によっては副作用が出ることがあり、仕事や家事に影響を及ぼすことも考えられます。令和2年4月発行の国立がん研究センターがん対策情報センターの調査ではがん患者の約3人に1人は、働き世代である20~60代の間にがんに罹患し、仕事を持ちながら通院している方が多くいると報告されています。働きながら治療を続けるために、仕事と治療が両立できる環境づくりのための支援が始まっています。

がん診療連携拠点病院等には、がんと診断されたときから、仕事と治療の両立について相談できる窓口があります。今、通っていらっしゃる病院にも確認してみましょう。

「がん制度ドック」で利用できる制度、保障を確認

病気治療と保険
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これからがん治療が始まりますが、利用できる公的保障や加入している民間の保険で給付対象となるものがあるか確認をしておきましょう。

がんになったら「がん保険」しか保障の対象とならないと思う方もいるかもしれませんが、健康保険等で利用できる制度を確認しておくことがとても大切です。

「がん制度ドック」は「NPO法人がんと暮らしを考える会」が運営しているサイトですが、下記項目を入力し、加入している健康保険の種類や、加入している年金の種類、がん罹患の収入の変動(「がん罹患前と比べて減少した」、「ローン・負債の返済が困難」など)を入力、選択していくだけで、利用できる公的制度などを幅広く確認できます。

①    年齢
②    性別
③    罹患したがんの部位
④    がんを発見するきっかけになった医療機関の受診日
⑤    主治医から、今後の治療方法の内容
⑥    現在の病状、体調
⑦    家族構成

がん制度ドック

生命保険の加入状況についても詳細に保障内容を入力できるので、まずこちらのサイトで確認されることをお勧めします。また今後、治療方法、体調の変化があった際は利用できる制度、保障も変わることが考えられますのでその都度確認をしてみましょう。

継続して続く治療費を抑える仕組み「高額療養費・多数回該当」

医療費と保険
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高額療養費制度により、医療費の自己負担限度額は、下表のように、年齢と所得に応じて決まります。

70歳未満の方の区分【平成27年1月診療分から】

注)「区分ア」または「区分イ」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での「区分ア」または「区分イ」の該当となります。

Kさんの年収は現在420万円で70歳未満ですので1カ月の医療費の自己負担限度額は下表の区分(ウ)に該当します。自己負担額の上限は下記の金額になります。

8万100円+(保険適用される医療費の総額-26万7000円)×1% 

たとえば、健康保険適用の医療費の10割負担分が月200万円かかった場合、通常の負担割合3割で計算すると、支払う医療費は、200万円×30%=60万円になります。しかし高額療養費の計算式で計算すると

8万100円+(200万円-26万7000円)×1%=9万7430円

となり、実際の医療費負担は10万円以下になります。

このように医療費の月額の上限額を具体的に把握しておくと安心です。また1年間で自己負担限度額を超える月が3カ月以上ある場合には、4カ月目から医療費の自己負担限度額をさらに軽減する「多数回該当」という制度があります。Kさんが「多数回該当」に該当するようになった場合、1カ月の医療費の上限は4万4400円となります。

今後の治療方針で、継続した治療が1年間で3カ月以上続く場合は、健康保険適用の医療費は、月額上限4万4400円であることを理解しておきましょう。

加入中の保険からの給付・保険料免除

現在Kさんが加入されている保険は、所定の治療について、初期のがんでも年に1回100万円給付され、今後の支払い回数は無制限です。給付金は年に一回ですので、年間の治療費の目安を念頭に置きながら計画的に治療費にあてることを考えておきましょう。がん罹患後は保険料が免除になる保険に加入していたので、保険料8660円の負担はなくなります。

この金額を貯めておくことができれば年間で10万円以上の余裕ができるので、不意な出費が発生した時にも対応しやすくなります。意識して貯めるようにしてみてください。

アドバイスを受けたKさん談

今まで入院もしたことがなかったので、医療費がどれだけかかるのか本当に心配でしたが、加入している医療保険の特約で、初期のがんの通院治療でも支払事由に該当すれば毎年100万円受け取れるものに加入していることが確認できました。高額療養費制度の多数回該当の仕組みも分かりましたので、お金のことは心配しすぎないようにしようと思います。

治療方法はこれから説明を聞いていきますが、働き方に影響がでる可能性などについても聞いてみようと思います。お金の不安が軽減されて治療にも少し前向きになれそうな気がします。

家計簿診断を終えて

早期発見でほんとうに何よりでした!仕事を継続して休み、給与が減額されるような場合は「傷病手当金」などの制度が利用できる場合があります。お金の不安と体の不安が重なると、心も不安定になってしまいます。Kさんが加入されていた医療保険は初期のがんでも罹患後は保険料が免除されるものでしたので、今後の医療保険料の負担がなくなり支出が抑えられて良かったです。

Kさんのようにこまめに健康診断や検診を受け、再検査などの指示をそのままにしておかず、ご自身の体のメンテナンスをしっかりされていたことが早期発見につながったと思います。早期発見であれば治療費も少なく治療期間も短くなる傾向があります。

命の代わりはありませんので、体のメンテナンスにも気を配りたいものですね。