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ウェルビーイング視点で考える、お金と幸せの残高の上げ方とコツ!

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

ウェルビーイング視点で考える、お金と幸せの残高の上げ方とコツ!

「モーレツ」で「ブラック」だった大昔の職場環境

ライフプラン1.0世代(団塊世代)や2.0世代(バブル期入社~団塊ジュニア世代)においては、「モーレツ」という価値観がありました。

今の若い人には聞き慣れない言葉だと思いますが、最近で似た意味の言葉としては「ブラック労働」になるでしょうか。

残業は当たり前(午後5時からが仕事の本番、という雰囲気)、たまに早く終わったと思えば終業後に飲み会につきあわされて上司の愚痴やお小言を聞かされます。仕事に対する指導や評価も、ほとんどパワハラだったりしました(本人は愛のある指導と思っているから始末が悪い)。週末に接待でゴルフにつきあわされる(車で送迎もする)、タバコくさい雀荘で何時間も麻雀させられるなんてこともしばしばでした。

「猛烈」をわざわざカタカナにする時点で皮肉っぽいニュアンスなのは分かると思いますが、これが日本経済を高度成長させた一因になってしまったこともまた皮肉な事実です。

確かに、「モーレツ」な仕事ぶりが人を伸ばすこともあります。ハラスメントやサービス残業がなく、純粋に仕事が楽しくて夢中になれるのなら、モーレツに働くことは自分の潜在能力を開花させるからです。今までできなかった仕事ができるようになるためには、負荷の高い仕事に取り組み、時々限界を突破する試みが有効です。

中高生のときにスポーツをやっていた人は分かると思いますが、自分を追い込んでトレーニングをすると、タイムが上がることがあります。今までできないことをできるようにするためには努力が欠かせません。「基礎練だる~」のように思っていても、結局は基礎練の積み重ねが大事だったということは誰しも経験があるはずです。

仕事に専念し、能力を高めることが大切なことは今も昔も変わりません。しかし長時間労働やハラスメント抜きにそれを実現していくことが今の時代では重要になっています。

ウェルビーイングな視点が注目されている

近年、ウェルビーイングという考え方が注目されています。ウェルビーイングとは、直訳すれば「幸福」となりますが、特に「心身共に健康で良好な状態にあること」を重視した状態を意味します(定義は一律ではありません)。

最近ではホワイト企業のほうが生産性が高い理由として、会社が好きで仕事が楽しいほうが生産性が上がるということが分かってきています。ウェルビーイング経営などと呼ばれ、企業経営者が注目しているキーワードのひとつです(これを言い換えれば、長い時間強制的に働かせても生産性は下がるからブラック企業は実は儲からないということです)。

経営者が経営者の目線でウェルビーイング経営を考えれば、社員は働きやすくなるでしょうが、ここでは個人の目線で、自分の人生がウェルビーイングでいいものとなるようなヒントをいくつか考えてみたいと思います。

つまり、ファイナンシャル・ウェルビーイングの発想です。私たちは、自分の人生を幸せで楽しいものとする権利がありますが、それを上手くつかみ取っていくのは自分自身です。

それはライフプラン3.0世代にとってとても重要な視点なのです。

【働き方】しゃにむに稼ぐだけが稼ぎ方ではない ブラック企業からはすぐ逃避する

個人のお金は「稼ぐ」→「使う(節約する)」→「貯める(増やす)」の流れで動いており、どう最適化し、私たちの幸福につなげていくかが重要です。

まず仕事での稼ぎです。人生の多くの時間を過ごす職場がストレスがある状態は、あなたの幸福度にとって大きなマイナスです。

自分の能力をしっかり発揮でき、貢献度合いに見合う収入を得る職場を見つけることが「年収が多いか低いか」よりも大事なことです。

特に、今いる会社がブラック企業(あるいはややブラックな企業)であったら、退職をして違う会社に転職することを考えてみましょう。

残業代が出ないのに終電まで毎日働かされていたり、激しい叱責、ときには直接的な暴力を加えられるようなハラスメントのある会社で働き続けることは、皆さんの精神的健康を損ない、それは経済的損失を上回ります。さっさと飛び出し、気持ちよく働ける職場に移りましょう。

不思議なことですが、いい会社というのは、居心地がよく、やりがいがある仕事ができるのに、年収も高かったりするのです。

また、派遣社員や契約社員の場合は、正社員に転職をする努力を続けていきましょう。

【お金の使い方】ただ支出を削ればいいわけではなく、その質を考える

次に考えるのはお金の使い方です。基本的には節約を意識し、赤字にならないよう家計をやりくりすることになります。赤字は精神的不安を招きますので、まずはしっかり家計管理することが大切です。

ただし、何もかも削ってコストをダウンさせればいい、と考えすぎないことも大事です。幸せとは貯金の残高だけで決まるものではないからです。

時々、メリハリを意識しながら自分にご褒美をあげたり、生きがいやゆとりのためにお金を使いましょう。

例えば、一年間がんばった自分に、ご褒美として誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントはあげていいのです。高額ですがふかふかのソファーを買ったら幸せ感がアップし、仕事への張り合いがもう一度生まれたのならその出費は決してムダではありません。

高額の「推し課金」だって、家計がしっかりキープされているならあってもいいのです。もちろん、なるべく無課金で動画を観たりゲームをするような工夫はしてみてください。

うまくメリハリをつけて、上手に自分の「幸福を買う」ことを意識してみてください。

【貯める・増やす】未来の自分の幸せにもお金を回すため 投資も視野に入れてみる

最後のステップは、節約して残ったお金をしっかり貯めて、あるいは資産運用をして増やすステップです。

こちらはまず発想の転換をしてみましょう。例えば「老後が怖いからお金を貯めなくちゃいけない」と考えるのはプレッシャーです。そうではなく、

「公的年金で日常生活はなんとかやりくりする。自分で貯めたお金で老後にやりたいこと(旅行とか趣味とか)をやるために、今からがんばってお金を貯めていこう!」

のように頭を切り替えてみます。そうすれば、資産形成は「未来の幸せ」のための準備になります。ここでは基本的なマネーリテラシーがあるほど、理解度と安心が確保されます。

「家を買いたい」「子どもをしっかり学校に通わせてあげたい」など、未来の夢や幸福感のために、今のガマンがつながっていると考えていくといいでしょう。

リスクを取った資産運用も、そうした夢に近づいていくためのひとつの選択肢なのだと考えてみてください。きっとやる気が違ってくるはずです。

まとめ:楽しく、幸せに日本で生きていこう

ある調査によれば、日本は世界的にも安全な国のひとつです。インフラも整備されており、社会保障制度の充実でもトップクラスとされています。これらはウェルビーイングの指標にも使われていますが、日本人の幸福度ランキングはあまり高くないそうです(2022年世界幸福度ランキングは54位)。

皆さん自身が考える、主観的な部分でのウェルビーイングが低いこと、寛容性(他者への優しさ、寄付など)、および国への信頼度が低いことが影響しているそうで、これは私たちが解決していく必要がありそうです。

もしかすると、日本人の幸せ感は、私たちの気持ちが切り替われば、世界でもトップクラスに向上するかもしれません。

ライフプラン3.0世代において重要なのは、自分自身の幸福感を大切にすることです。

まずは働きがいを感じられる仕事をし、今と未来のウェルビーイングを自分なりに感じられるようなマネープランを心がけ、そこから自分なりの幸せを上手に買い集めていくことです。そこにはやはりお金の問題への理解と安心もセットです。

お金に関係なく得られる無償の幸福感も大切です。家族や友人との絆や愛情、ボランティアで得られる満足感なども考えながら「ウェルビーイング」を考えてみてください。

ある研究では、にっこり笑って、挨拶やお礼を言うだけでも、個人の幸福度がアップするそうです。自身の幸福度を変えられるのは、自分の小さな行動、ちょっとした変化なのです。