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話題の「画像生成AI」どう楽しむ?著作権の整備はこれから?

経済とお金のはなし 中新 大地

話題の「画像生成AI」どう楽しむ?著作権の整備はこれから?

【画像出典元】「ArtemisDiana/Shutterstock.com」

こんにちは、ライター/ランサーズ新しい働き方LABコミュニティマネージャーの中新大地です。

今や当たり前となりつつある「AI(artificial intelligence)/人工知能」ですが、その始まりは1956年にアメリカの科学者であるジョン・マッカーシー氏によって提唱されたものでした。

『AIが人間の仕事や表現の豊かさを奪うかもしれない』

AIが誕生して以来、私たち人間はこの漠然とした恐怖を抱えながら、その発展に寄与してきました。そして近頃、この恐怖がまた一歩現実に近付いていると思わせるような技術がトレンドとなっています。

それが「画像生成AI」です。
簡単に一流アーティストのような芸術的作品も作れてしまうというこの技術。一体どのようなものなのか、私たちはどのように付き合っていくべきなのか。学芸員資格を持つ筆者の視点も交えて、わかりやすく解説いたします。

技術やセンスは必要なし?画像生成AIとは

端的に言いましょう。
「画像生成AI」は、芸術(アート)に関する、特別な技術やセンスのない“芸術初心者”であっても、一流のアーティストのように美しく繊細な作品を描くことができる新しい技術・サービスのことを指します。

すでにさまざまなサービスが登場していますが、その利用方法は至ってシンプルでほぼ共通しています。人間が任意のテキストを打ち込む→AIがテキストのイメージに合った画像(写真・イラスト)を生成するといったものです。

サービスによっては、単語などのテキストではなく複数のテキストを組み合わせることも可能。また、文章として成立しない、もしくは存在しないような造語からも画像を生成することが可能なものもあり、オリジナリティに富んだ作品を作れることも魅力です。故に、時として人間には想像しえないような、おどろおどろしい作品が生まれることもあります。

注目の画像生成AI、生まれた作品と論争

画像生成AI
【画像出典元】「stock.adobe.com/Rick」

現在、最も話題となっているサービスは、元NASAの技術者らが作りだした「Midjourney」です。1分で1枚のハイクオリティな画像が生成できると話題で、無料プランでも、1分で1枚の画像を生成でき、25分(=25回)無料で利用可能。しかも、入力したテキストのうち、どれを重視するかといった細かな設定も可能で、AIの動きを人間側がコントロールできる点も評価されています。

「お絵描きばりぐっどくん」は、多くの人が使っているLINEのチャット上でテキストを打ち込めば、そのままLINEのチャット上で画像を返送してきてくれるサービスです。前述のMidjourneyはDiscordという少し利用しづらいチャットツールを用いているのとは違い、誰でも簡単かつすぐに遊べるのが魅力。細かな設定は不要で、思わず感心させられるような画像の選択と加工を行ってくれます。

SNS上では、これら画像生成AIを用いて如何に美しく神秘的か、あるいは如何に不気味な画像を作れるかといった応酬が散見されました。どんなテキストで生成したのかといった情報交換だけでなく、なかには画像生成AIで作った画像だけで短編漫画を生み出すユーザーもあらわれています。

AIが作った作品は誰のもの?問題視される著作権のゆくえ

AIが素晴らしい作品を描く一方で、問題になっているのが著作権のゆくえ、そしてアーティストとの共存の問題です。この議論は前述の「Midjourney」が生成した作品が、米コロラド州で開催されたコンテストにおいて1位を獲得したことで、さらに過熱することになりました。

著作権は著作物を保護するための権利であり、この著作物とはそれを生み出した著作者の思想や感情が表現された、文芸・学術・美術・音楽などを指しています。
細かな解釈が難しいですが、今回のMidjourneyにおいてはその画像を生成するために、どれだけ著作者の思想や表現が盛り込まれているかが焦点になりそうです。

ただ、結論から言えば日本の著作権法においては、画像生成AIによって生み出された作品が著作物に該当するかどうかは、不透明な段階にあります。なお、作成した作品の商用利用の可否については、サービスの規約や利用プランに準ずるケースが多いです。

おそらく今後、法改正が行われる、あるいは裁判になり判例が生まれることで、徐々に扱い方が定まってくることでしょう。ちなみに米国の法曹界では、AIが作った作品に著作権が付与されるという認識はあまりなく、著作権審査委員会でも過去2回の申請が却下されているようです。 

画家やデザイナー、イラストレーターをはじめとした画像生成AIの登場に難色を示す人のなかには、『気まぐれで打ち込んだテキストで作った作品には、作者の思想や感情もなければ、技術も存在しない』といった意見もあります。

なかにはアーティスト向けに、自分の作った複数の作品をAIに記憶させることで、それ以降自分の作風と似た新しい作品を生み出せるといったサービスも登場しました。 しかし、第三者が無断で作品を使い、別の作品を作りだす行為、またその作品を不正利用する可能性が指摘され、このサービスはリリースからわずか1日で停止する事態となりました。 

人間とAI、今後は住みわけが進む?

人間とAI
【画像出典元】「stock.adobe.com/metamorworks」

心ばかりではありますが、芸術に関心を持ち続けてきた筆者から言わせれば、「芸術はアーティスト自身が紡ぎだしたストーリーや文脈と、彼ら自身の技術があって初めて成り立つものだ」と考えています。

アーティストが作品を生み出すには、楽しくもあり苦しくもある記憶や経験と、その作品を生み出すための技術を磨くためにかけてきた膨大な時間が必要です。そこにはアーティスト自身にしか説明できないような心の機微や人間臭さがあります。

対する画像生成AIが生み出した作品も素晴らしいものではありますが、あくまでも法則に従って導き出されたものに過ぎません。今でこそ表現のパターンも、美麗な作品も増えていますが、画像生成に用いるテキストを入力している人間の考えは刹那的である上、彼ら自身の技術を用いて作品を生み出しているわけではありません。

よって、今後は人間とAIの住みわけが進むと筆者は予想します。
作品の掲示にあたっては人間が作ったか、あるいはAIが作ったかの明示が推奨される、あるいはそれらを証明するための技術が紐づくようになるのではないでしょうか。もしかすると、相互に情報を結びつけることで存在の正当性や信頼を担保する「ブロックチェーン」などがその役割を担うかもしれませんね。作品を鑑賞する側も、どちらが作者であるかを理解した上で鑑賞する未来がやってくるかもしれません。

扱い方さえ注意すれば、画像生成AIは楽しいものです。自分の絵心が足りず上手く絵が描けなくても、自分の想像を遥かに超えてきたりする作品が出来上がった時の感動はとても新鮮です。『絵心がない』『普段は芸術にふれる機会がない』と思っている人のハードルを下げることもできるでしょう。その先にアート業界全体のさらなる賑わいも期待できるのではないでしょうか。