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次代の食をつくる「フードテック」って?注目すべき取り組みとは

経済とお金のはなし 中新 大地

次代の食をつくる「フードテック」って?注目すべき取り組みとは

【画像出典元】「John Williams RUS/Shutterstock.com」

こんにちは、ライター/ランサーズ新しい働き方LABコミュニティマネージャーの中新大地です。

相次ぐ環境の変化や先の読めない世界情勢、そして価値観の多様化により、私たちの“食”は変わりつつあります。
今までなかった、あるいは今まであったものに代わる新しい食材や、食材の新しい流通方法が確立されようとしています。

そうした次代の食を創造しているのが「フードテック」と呼ばれる技術です。今回はそんな食の新しい情報とフードテックの取り組みについてご紹介します。

テクノロジーで可能性を広げる!フードテック企業とは?

フードテック(FoodTech)とは、その名前の通りテクノロジーの力によって、食の可能性を広げる技術、そして産業分野のことを指します。
農林水産省はこのフードテックを活用した企業の取り組みや技術への投資を奨励すべく、令和2年10月に「フードテック官民協議会」 を発足しました。

現在、私たちの食糧事情には地球規模で課題があり、今の日本のようにスーパーや飲食店でお金を払えば容易にお腹を満たせる状況はいずれ当たり前ではなくなるかもしれません。

環境の変化に伴って特定の魚の漁獲量が減る。
戦争により、輸送のルート確保が難しくなったり、物価が急騰したりする。
価値観や健康上の理由から、ベジタリアンやヴィーガンと呼ばれる人たちが増え、新しい需要が生まれる。
不明瞭な食の流通経路に不安を感じ、手に取りにくい。 

いずれも現在進行形で起こっている、もしくはこれから深刻化していく課題です。

フードテックはこうした課題を解決する手段として、注目を集めているのです。

フードテックが切り開いた可能性!ユニークな取り組みに迫る

フードテック
【画像出典元】「stock.adobe.com/wladimir1804」

それでは実際に企業がフードテックを活用した事例と、それによってもたらされる明るい未来についてご紹介します。

まるで本物の肉みたい?代替食品のミッション

フードテックを活用した取り組みの代表格として挙げられるのは、「代替食品」です。特に広く知られているのが代替肉。

ハンバーガーチェーンで有名なモスバーガーの「グリーンバーガー」 は、主要原材料に動物性食材を使用せず、野菜と穀物を主原料に作られています。一見すると本物の肉にしか見えないパティも、大豆由来の原料をベースに、こんにゃくやキャベツを加えて作られています。さらに、マヨネーズは卵を使わず、枝豆を使用して作るという徹底ぶりです。

また日清食品は、主力商品の「カップヌードル」の謎肉に、豚肉のほか大豆原料を使用してきた実績があり、その技術を活かして「培養ステーキ肉」 の開発に取り組んでいることも明らかにしています。
ほかにも無印良品の「コオロギせんべい」に代表される「昆虫食」も、食の新しい領域を開拓するとして注目を集めています。

動物性食材、つまり家畜を育てるためには、莫大なコストがかかることが知られています。さらに家畜が必要とする飼料を育てるためにも、水や肥料、広大な土地などの資源を必要とします。しかし、代替食品や従来は食べてこなかった新しい食材を食卓に取り入れることは、そうしたコストを削減するだけでなく、環境への負荷を抑えることにもつながります。

食材の生産から消費までを追跡!ブロックチェーンの透明性

仮想通貨の基盤を担う技術で知られるブロックチェーンは、食品流通業界でも活用され始めています。それが「食品トレーサビリティ」です。

なかでもIBM は、「IBM Food Trust」というブロックチェーンネットワークを開発しました。このネットワークによって、その食品がどこで手に入れられたものなのか、どのように育てられたのか、どのルートを通ってきて、現在どこにあるのかを証明書付きで確認することができます。

分かりやすく言うと、スーパーで販売している野菜で、生産者の顔写真付きで見かける『私たちが作りました』といった情報を、もっと詳細かつその過程のすべてが確認できるようになるイメージです。

これにより、流通や販売を担う企業はもちろん、私たち消費者も今以上に安心して食材を手に取れるようになります。

近年問題になっている盗難された果物の流通を阻止できるようになるでしょう。また私たちが、スマートフォンを食材に向けながら今よりもっと吟味して買い物をする時代が来るのかもしれませんね。

栽培と収穫の効率化!なんでもできるドローン

田畑の上空を飛ぶドローン
【画像出典元】「stock.adobe.com/Monopoly919」

フードテックの試みは、農作物の収穫分野にも及んでいます。
トラクタやコンバインなど農業機械を販売するクボタは、イスラエルのスタートアップであるTevel Aerobotics Technologiesに出資 。有線ドローンによる高所での果物収穫作業にも新しい可能性を見出しています。
これにより、人的リソースを削減できるだけでなく、従来は栽培が難しかった環境でも栽培可能になり、収穫量を増加させることも期待できます。

さまざまな業界で注目を集めるドローンは、このほかにも広大な土地での農薬散布や収穫時期の判別作業なども担っています。

フードテックで明日の食が変わる

ここまでご紹介した通り、フードテックは明日の食を変える技術であることは間違いありません。私たちがこれまで抱えていた課題を解決してくれるだけでなく、予想だにしなかった成果の獲得にもつながっています。

今以上に多様で美味しい。今以上に安心できる。今以上にたくさん食べられる。
そんな素敵で明るい食卓を人々に提供するために、これからもフードテックはさまざまな形で成長を遂げていくことでしょう。