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誰もが主役、新時代の共同体、「DAO(分散型自立組織)」とは?

経済とお金のはなし 中新 大地

誰もが主役、新時代の共同体、「DAO(分散型自立組織)」とは?

【画像出典元】「azrin_aziri/Shutterstock.com」

こんにちは、ライター/ランサーズ新しい働き方LABコミュニティマネージャーの中新大地です。

年々進化するテクノロジーによって、私たちは常に誰かとつながっていることが当たり前になってきました。インターネットがあれば、会社や学校などのオフラインの場所に行かずとも、世界中の人とオンライン上でつながることができ、仕事も遊びもできる時代です。

この時代の進化によって登場した新しい組織形態が「DAO」です。最近では実業家の前澤友作氏が、『MZ DAO(エムズィーダオ)近日始動!』、『100万人くらい集まるといいな。』『なにやる??ってとこからみんなで決めていきます。』などとTwitterに投稿。 「DAO」という新時代の組織が一躍注目されるようになりました。今回はこのDAOについてご紹介します。

DAOとは?

「DAO」は「Decentralized Autonomous Organization」の略称で、日本語で「分散型自立組織」のことを指します。

分散型と聞いて察しが付く方もいるかもしれませんが、この組織はブロックチェーン上に成り立つ組織であり、組織が発行する「ガバナンストークン」を購入・所持することで参加可能となります。いわばこれは会員証のようなもの。

DAOは国・地域・人種・性別を問わず参加でき、特定のリーダーや規制当局がいないことが大きな特徴です。DAOに参加するメンバーは、全員がお互いに責任を持って情報や資金を管理し、みんなで「事業を行う」「交流する」といった独自のプロジェクトを行います。

プロジェクトを進めるための発言・投票・決定もDAO内で完結します。これらの行為は「スマートコントラクト」というプログラムによって、あらかじめ設定されたルールに則って自動的に処理される仕組みとなっています。

またその組織内で取り交わされる契約やメンバーのアクションのすべてが履歴として残るため不正が起こりにくく、また個人が明確に自分の意思を周囲に示すことができます。

会社とは全く違う?DAOの魅力と注意点

会議する人々
【画像出典元】「stock.adobe.com/metamorworks」

DAOの魅力は、その平等性と透明性です。前述の通り「トークンを所持すれば誰でも参加できる」、「特定のリーダーがいない」、「権限はシステム上で自動的に処理される」といった特性は、従来の組織の形とはだいぶ異なります。

会社をイメージするとその違いが分かりやすいでしょう。

会社には社長というリーダーがいて、どんな事業を行うのか、誰を役職につけるかなどを決める権限を持っています。そしてそれは配下にいる多くの社員の仕事と生活の行く末を大きく左右します。また、時としてその決定内容は、本社や取引先など別の会社の意向によって影響されることもあります。

DAOはそうした従来型の組織の対をなす組織と言えます。一人ひとりのパーソナリティをとやかく言われることはありません。そのDAOにいるひとだけが、情報を閲覧する権限を持っていますから、それ以外の組織・個人からの意見に左右されることもありません。

また、そんなDAOでの議論やそれに伴う選択・決定は、DAOのシステム上で公にされることで、透明性が担保されています。

しかし、DAOには注意点もあります。開かれている場所であるがゆえに、「意見がまとまるのに時間がかかる」、「どんな人が入ってくるか分からない」、「セキュリティに疑問が残る」といった点です。

DAOにもよりますが、何をするにもメンバー一人ひとりの意見を聞く必要があったり、決定のための過半数をとれない可能性があります。集まるビジョンが明確ではない場合、「集まるだけ集まって何も動かない」といったことも考えられます。

さらにDAOはブロックチェーン技術を用いた新しい組織の形のため、法整備やセキュリティがまだ整っていません。ユーザー一人ひとりの認識も曖昧なこの組織に、悪意を持ったユーザーが入ってくることもあり得ます。トークンや個人情報の流出を引き起こす可能性もゼロではありません。

ユニークなDAO事例

それでは実際にどのようなDAOがあるのでしょうか。ユニークな例をご紹介します。

Kinomisが7000万円を資金調達して立ち上げるDAO運営型店舗「DeStore」

NFT(非代替性トークン)を活用した事業を行うKinomis, Inc.(キノミス)は日本発のDAOとして、日本のベンチャーキャピタルなどから累計7000万円を調達。サンフランシスコに世界初となるDAO運営の小売店舗「DeStore」の立ち上げを発表しました。 
会員証代わりのNFT保有者が店舗の名付けや販売する商品の選定も行うとしており、新しい店舗運営の形を世の中に発信しています。

Kinomisの代表である大東樹生氏は『小売りのカギはコミュニティです。』と語り、トークンの存在がコミュニティを強固にするとしています。

通常、店舗の運営には莫大な資金が必要でリスクも伴いますが、DAOであればこうした不安を文字通り分散できます。こうした大勢で事業を興す取り組みは、今後も広がっていくかもしれません。

大勢なら高額NFTも買える、「PleasrDAO」

大勢で売るDAOがあれば、大勢で買うDAOもあります。それが「PleasrDAO」です。 
このDAOはひとりでは購入が難しい高額のNFTを、メンバーが資金を出し合い購入。その所有権もスマートコントラクトを通じて共有しています。所有している代表的なNFTは、アメリカ国家安全保障局の機密情報を暴いたことで知られる、エドワード・スノーデン氏のアート作品。これは前述の暴露事件における、NSAへの裁判所の判決から生じた文書を組み合わせて作られています。

NFT市場は今後拡大していくものと目されており、このDAOはその可能性に期待しているのです。これから伸びるであろうNFTを先行投資という形で購入するほか、すでに共同所有しているNFTが高騰した際には、みんなで売却するかどうかも検討できますね。

手を取り合い未来を考えるDAO

重ねられたたくさんの手
【画像出典元】「stock.adobe.com/Studio Romantic」

規模もビジョンもさまざまではありますが、今後DAOはもっと増えていくはずです。
従来の中央集権的な組織とは違い、平等で開かれた組織であるDAOは個の力を結集することで大きなプロジェクトの実現が可能に。そしてそこで得られた恩恵も、誰かひとりではなくみんなで共有することができます。

例えば現在の社会問題である「地球環境」や「世界平和」についても、みんなの力を集めることで具体的なアクションを起こせるでしょう。

皆さんもみんなで一丸となり何かに取り組みたいと思った時、あるいはボーダレスなつながりが欲しいと思った時、DAOへの加入を考えてみてはいかがでしょうか?