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株価乱高下…!こんな時、つみたてNISAはやめた方がいい?

経済とお金のはなし 山下 耕太郎

株価乱高下…!こんな時、つみたてNISAはやめた方がいい?

【画像出典元】「stock.adobe.com/Andrey Popov」

5月31日、岸田総理は、新しい資本主義の具体策として、「資産所得倍増プラン」を提唱しました。貯蓄から投資へ大胆にシフトし、資産所得の増加を推進する予定です。現在、「つみたてNISA」の非課税枠は年間40万円ですが、この枠の拡充などが想定されているそうです。

しかし、2021年末から2022年にかけて「つみたてNISA」をスタートした方の中には、米金利上昇やロシアのウクライナ侵攻などの影響を受け、わずかな利益しかでていない、もしくは損失を抱えているという人もいるのではないでしょうか。この記事では、乱高下する株式市場の中で、つみたてNISAの運用で注意すべきことについて解説します。

つみたてNISAとは

政府には、長期的な資産形成を一般の人々の間に定着させたいという強い意向があります。そのため、金融庁は「長期・積立・分散」の投資三原則を、多くの人に適した資産運用として強くアピールしているのです。

そのための制度として「つみたてNISA」が創設されました。「つみたてNISA」は、少額からの長期・積立・分散投資を支援するため、2018年1月から開始された非課税制度。対象商品は、手数料や分配金の面から長期・積立・分散投資に適していると判断された投資信託やETF(上場投資信託)に限定されています。

つみたてNISAで非課税となる投資額(非課税限度額)は毎年40万円。最長20年間非課税で運用できます。現在の制度では、2042年まで投資信託やETFの購入が可能です。つみたてNISAで購入した投資信託やETFは20年間非課税で保有できるので、2042年に購入した投資信託やETFは2061年まで非課税で保有できます。

ここまでつみたてNISAの制度について説明しましたが、日本証券業界によると、NISA(一般・つみたて)口座数がもっとも多い年代は、20~30代の若い世代です(2021年末時点)。

出典:日本証券業協会

そして、つみたてNISAにおける投資未経験者の割合は87.2%で、多くが投資を始めたばかりの人なのです。

つみたてNISAでは米国株式を中心とした外国株式ファンドが人気

外国株式ファンド
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つみたてNISAなどを利用した積立投資では、外国株式ファンドが人気です。たとえば、ネット証券最大手SBI証券の5月積立設定金額(つみたてNISA)が多いのは、以下のファンドです。

1.SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
2.eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
3.eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」や「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」のように、米国を代表する株価指数であるS&P500種株価指数を対象にしたファンドが人気の傾向にあるようです。しかし、その指標であるS&P500種株価指数は、4月末に4,131.93ポイントで取引を終了。昨年末4,766.18ポイントからの下落率は約14%となっています。そして、4月末時点における騰落率は、以下の通りです。 

1カ月 -8.8%
3カ月 -8.5%
6カ月  -10.3%
1年   -1.2%

では、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」も同様に大きく下がっているのでしょうか?4月末時点における騰落率は、以下の通りです。

1カ月 -4.21%
3カ月 5.63%
6カ月 3.72%
1年   18.69%

S&P500種株価指数に連動するにも関わらず、下がっていないことが分かります。この理由には為替が関係してきます。米国株は下がっていますが、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」は円建てのファンドです。円安・ドル高が進んでいるので基準価額は上がっているのです。外国株式ファンドでは、株価だけでなく為替動向にも注意する必要があります。

長期での資産形成を考える

乱高下する相場では、損失を出すことに抵抗を感じる人もいるでしょう。しかし、損失を恐れて売却したり、投資をやめたりしてしまうと、運用がうまくいかなくなります。

2000年以降も2001年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックなど、一時的に株価が大きく下落したものの、その後に回復しています。

つみたてNISAの保有期間は、最大20年です。投資の短期的な収益のブレは大きくても、長期で保有することでリターンは安定します。実際にシミュレーションしてみましょう。たとえば、1985年以降の各年において、毎月同額を積み立て分散投資したと仮定し、各年の購入後の保有期間終了時点の国内外の株式・債券の時価をもとに算出した運用成績は以下の通りです。

出典:金融審議会

保有期間が5年の場合はマイナスリターンになることもありますが、保有期間が20年の場合はプラスのリターンになり、そのバラつきも小さくなることが分かります。

長期・積立・分散投資を続けていれば、株価が下落する局面では口数を多く買うことができ、その後の上昇局面でのリターンも大きくなります。短期的な値動きに一喜一憂するのではなく、長期の資産形成を目的とし、乱高下する株式市場においても淡々と投資を続けることをおすすめします。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。