お金

スポーツ界のNFT、どのように活用される?今後の可能性は?

経済とお金のはなし 中新 大地

スポーツ界のNFT、どのように活用される?今後の可能性は?

【画像出典元】「Koshiro K/Shutterstock.com」

こんにちは、ライター/ランサーズ新しい働き方LABコミュニティマネージャーの中新大地です。

実体のないデジタルデータに偽造・改ざんできない鑑定書のようなものを紐づけることができる、NFT(非代替性トークン)。

この新しい技術によって、私たちが親しんできたスポーツの世界でも新しい楽しみ方が可能になるかもしれません。
ある人はより多くのグッズを集めたり、ある人はクラブに意見を述べることでより近い存在になったり・・・。

今回はそんなスポーツクラブのNFT活用戦略についてご紹介します。

スポーツ界におけるNFTと、市場の高まりとは?

NFTとは「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」のことを指します。NFT化されることによって、そのデータを誰が持っているのか、誰がいつ取引したのかといった履歴をさかのぼることができ、唯一無二のデータとして証明できます。

このNFTがスポーツ界でも活用され、今後は「コレクション」需要が高まっていくことが予想されています。具体的には選手の写真(イラスト)付きカード、スーパープレー映像、スポーツを題材としたゲーム内のアイテムなどが考えられます。

これらはこれまでにもデジタル上で多く流通し、我々が当たり前のように楽しんできたものでした。ここにNFTという技術が加わることで、「他の誰でもない私だけが持つもの」として希少価値が生まれます。流通量が限られていれば価値はさらに高まり、多くの人が「私も欲しい」と考えるようになります。

2022年2月末に「Rakuten NFT」が、そして4月半ばには「LINE NFT」が、それぞれNFTマーケットプレイスをリリース。多くの企業がNFT市場に可能性を見出しており、今後は収集だけでなく、出品や売買を気軽に行えるような土壌が整備されるでしょう。

愛するクラブのために!NFTでクラブと近づける未来

スポーツ観戦する若者
【画像出典元】「stock.adobe.com/master1305」

自分だけが持つ価値を高め、コレクションをさらに楽しいものにしてくれるNFTですが、他にも活用できることがあります。

それが「クラブの限定企画への参加権限」です。限定企画とは、そのクラブのNFTを持つ人だけが参加できる交流イベントや、クラブの方針を決定するための投票機会などがあります。
従来のファンミーティングや企業の株主総会をイメージすると分かりやすいでしょう。

スポーツクラブのNFT活用事例

ダンクシュートするバスケ選手
【画像出典元】「stock.adobe.com/Andrey Burmakin」

少しずつ増えているスポーツクラブのNFT活用事例。そのなかでも今回はユニークな取り組みを一部ご紹介します。

新しい収入源とファン創出を目指して!プロ野球パ・リーグ

2021年12月、プロ野球パ・リーグ6球団は、株式会社メルカリと連携し、「パ・リーグ Exciting Moments β」を発表。これは6球団の歴史を彩る名場面やメモリアルシーンを捉えた映像、シーズン中に活躍した選手のプレー映像をNFT化するものです。

NFTの保有者は映像をダウンロードできるだけでなく、SNSでシェアすることなども認められています。また、このNFTにはそのシーンや選手の活躍によって、その最大供給量が異なります。これは「レアリティ」という言葉で表されており、最大供給量が少なくなればなるほど価値が高くなり、購入できるユーザーの数も限られてきます。今後予定しているという再販機能が搭載されれば、レアリティが高いNFTの価格はその希少性から高騰する可能性が高く、多くのユーザーが購入を期待するものとなるでしょう。

サービス提供の背景には、コロナウイルスの拡大による収益の急激な減少と、ファンが球場に訪れる機会の減少によりファンそのものが減ってしまうことへの懸念を挙げています。

マーケットプレイス運営において国内トップクラスのメルカリとの共同プロジェクトということもあって、今後の展開を楽しみにしている人は多いのではないでしょうか。
私たちがNFTを当たり前に取引してお互いに自慢し合うような未来も、あっという間にやってくるかもしれませんね。

実績多数!世界的に人気のNBA

NBA
【画像出典元】「stock.adobe.com/haizon」

世界中のファンを魅了するプロバスケットリーグのNBAは、すでにNFTの分野でかなりの実績があります。「NBA  TOP SHOT」は、先ほど紹介した「パ・リーグ Exciting Moments β」のバスケットボール版のようなNFTですが、立ち上げから数カ月で約2億ドル(約210億円)もの売り上げを記録。ある1日の新規ユーザー獲得数は約2万7000人となっており、その人気ぶりがうかがえます。

公式サイトには「Live Feed」という項目で取引されている選手のNFTと、その価格や買い手や売り手に関する情報が公開されており、眺めているだけで購入意欲をそそられます。

慈善活動の活動資金にも!南野拓実選手所属のリヴァプールFC

サッカー選手
【画像出典元】「stock.adobe.com/TandemBranding」

サッカー日本代表の南野拓実選手も所属する、イングランドプレミアリーグの強豪リヴァプールFCは、サッカー界でもNFT活用に熱心なクラブです。

「LFC ヒーローズ・クラブ」と題した作品群は、ランダムで選手の似顔絵が描かれたNFTアートが配布されるもの。コレクションして楽しめるのはもちろんのこと、今後はNFTを所有するファンだけが参加できる交流やコンペティション、グッズ購入時のディスカウントなどの特典が受けられるとのこと。

また、オークションに伴って発生する収益の半分は、同クラブの慈善団体の活動資金に充てられるとのこと。NFTを単なる経営戦略として利用するのではなく、より多角的な視点から活用したいという意気込みが感じられます。

今後は他業界にも!期待大のNFT市場

NFT
【画像出典元】「stock.adobe.com/Passakorn」

NFTを活用するスポーツクラブは、今後増えていくとみて良いでしょう。今回紹介したようにNFTを経営戦略として、あるいはファンとの関係強化のために用いるのは、デジタル社会においては至極自然な流れのように思えます。

また、スポーツクラブのNFTの活用例は、音楽や芸術などの別の業界にも応用されていくはずです。
例えば、熱烈なファンの多いアイドルとNFTとの組み合わせも抜群に良さそうです。NFTを所有するファンだけが参加できる握手会などの交流イベントも開催されるようになるかもしれませんね。

もっとも、投資対象としてビジネスライクな視点でかかわる人も増えてくるはずですが、個人的には愛あるファンが市場をけん引してくれることに期待したいところです。