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「45歳定年制」もあり?20・30代にFPが伝えたい人生設計

そなえる 内山 貴博

「45歳定年制」もあり?20・30代にFPが伝えたい人生設計

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話題になった「45歳定年制」とは

70歳定年、定年退職自体を廃止するなど、今の雇用を取り巻く環境は「私たちが長く働けるように」という方向にシフトしています。そんな中、2021年9月にサントリーの新浪剛史社長が、あるセミナーで「45歳定年制にする。個人が会社に頼らない仕組みが必要だ」と発言したことが物議を醸しました。

「働き盛りの45歳で会社を辞めないといけないのか?」「経営者が権力を使って退職させるのか?」と、いわゆる“炎上“となったため、すぐに「45歳でクビにするわけではない」と訂正する事態となりました。「45歳は体力や経験など非常に充実している時期であり、そういったタイミングで今後の人生をしっかり考えることが重要である。」というのが真意だったようです。

皆さんはこの「45歳定年制」についてどう思いますか?私は賛成です。厳密にいうと、定年退職を前期と後期の2つのタイミングに分け、その前期を45歳に設定すると良いのでは?と考えています。FPとして多くの方の相談や人生観を聞いた経験を踏まえ、今回は45歳定年の是非について考えてみたいと思います。

なお、法律(高年齢者雇用安定法第8条)では、従業員の定年を定める場合、その定年年齢を60歳以上とする必要があるため、45歳を定年とすることは現実的ではありません。今回は法律的な観点は考慮せず「45歳定年制」の可能性を探りたいと思います。

45歳前後を人生設計の一つの節目に

45歳を少し過ぎ、40代後半から50代前半となると、概して「リスクを取りにくい」状況となっていきます。子育て中の場合、子供が高校生や大学生になっていることが多く、最も教育費がかかる局面にあります。住宅ローンもまだ多く残っており、つい保守的になりがちです。

その後50代半ば以降になると、ようやく子供も独立し、余裕が生じてきたものの、今度は自分自身の体力の衰えや健康上の心配などを抱える人が増え、その結果、「若い時に思い切って〇〇をしておけば良かった」と後悔を口にする人が多い印象があります。

「もっとやりたいことがあった」という思いを抱えたまま、定年退職までその会社で勤務を続けるとモチベーションを保つことも難しくなります。一方で、勤続年数が長いがゆえに、要領よく日々をやり過ごしてしまい、「会社に貢献しよう」「自分を高めよう」という気持ちが、若い社員よりも低下してしまう場合もあるでしょう。そうなると、本人にとっても会社にとってもあまり良い状況とは言えません。

もちろん45歳以降でも長年勤務している会社でやりがいを感じながら活躍する人も多くいますが、「45歳定年」を肯定する上で考えられるのがこのようなシナリオとなりそうです。

よって45歳を節目に定年退職という選択肢があれば、退職金を早めに受け取り、自分のやりたいことをやるチャンスになるかもしれませんし、若い社員を中心とした企業から重要なポストとして声がかかることも考えられます。まったく違う業種に転職することで1から学びなおし、新たなやりがいを見出す人もいるでしょう。また会社側も、45歳定年制を導入することで積極的に20代や30代に重要な業務を任せるようになり、多くの人のキャリア、そして人生を活性化してくれそうです。

副業ができるスキルや働き方を

スキルアップを図る女性のイラスト
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現在、さまざまな産業で人手が不足しています。それと同時に副業を容認する企業も増えています。「1人2役」で働く人も徐々に増えており、柔軟な働き方がさまざまな労働問題の解決、改善につながると期待されています。

こういった社会環境も45歳定年制との相性が良さそうです。45歳まで1つの会社でビジネスマンとしてのスキルを磨き、45歳を節目に複数の会社から業務委託で仕事を受注し、1人何役もこなすという人がいてもいいですね。

「45歳定年制」が実現するかどうかは別にしても、実際に40~50歳位の社員を対象に大手企業が早期退職を促すというケースも見受けられます。辞めたくなくても辞めなければならないといった展開になることも視野に入れておかなければなりません。そういった際に「〇さんは辞めないでくださいね」と必要とされる人材になっておきたいですし、仮に辞めることになっても、次なるステージが明確に描ける状況にありたいものです。

貯蓄と投資のバランスを大切に

貯蓄と投資のバランス
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20代や30代といった若い人は「45歳で辞めても生きていける」と自信を持っていえるように、若いうちから失敗を恐れず積極的にさまざまなことに挑戦してください。若い時に得た知識、経験が、45歳以降、きっとじわじわと効いてきますよ。そのために重要なのが「貯蓄と投資のバランス」です。ここでいう投資とは株式などの資産運用ではなく自分自身に対する投資を意味します。

やりがいを見つけ、仕事を楽しみ、生活自体も充実している人は自分を高めるための投資を惜しまないという傾向にあります。例えば、どうしても勉強しておきたいセミナーがあった場合、遠方でも宿泊費や旅費を負担して受講に行くといった具合です。もちろんお金を使うため貯蓄はマイナスとなります。ただ、自己投資をしたことで長期的に見ると貯蓄にプラスに働くのです。

貯蓄と自己投資、どのようにバランスを取るか?そのためには一度、自分自身のライフプランを立ててみてください。なりたい自分、結婚や出産、住宅取得などこれから歩む上で直面するライフイベント。それぞれを具体的にイメージすることで、適正な貯蓄と自己投資のバランスが見えてきますよ。言い換えると、「やりたいこと」の優先順位を決めることにもなります。

上手にお金も貯めて自分自身の価値も高める。そうなれば、きっと何歳が定年退職になったとしても適応できる人材になっているはずです。