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つみたてNISAの外国株式、選ぶべきは為替ヘッジ有り?無し?

FPにききたいお金のこと 白浜 仁子

つみたてNISAの外国株式、選ぶべきは為替ヘッジ有り?無し?

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今回は、つみたてNISAを始めたばかりのRさんからの相談です。外国株式の投資信託で「為替ヘッジあり」を選ぶべきかどうか迷っているとのこと。そんな疑問を感じる投資初心者も多いのではないでしょうか。為替がどんな場合に動くのか知っておくと自分の投資スタンスが見えてくるかもしれません。一緒に確認していきましょう。

40代男性Rさんからの相談内容

つみたてNISAを始めました。 外国株式インデックスファンドを考えていますが、為替変動の影響を抑えるための為替ヘッジありのファンド、なしのファンドがあります。 為替リスクを考えるとどちらを選ぶべきか迷っています。

為替はどのような理由で円安、円高になるのでしょうか? また、リーマンショックや東日本大震災の時、為替はどのように変動したのでしょうか。

円高、円安とは

つみたてNISAを始められたとのこと。おっしゃる通り、外国の資産に投資する投資信託を選ぶとき、「為替ヘッジあり」を選ぶべきか迷うのは良く分かります。

「どのような場合に円安、円高になるか?」ですが、そもそも為替は、対ドル、対ユーロ、対豪ドル、対ポンドのように、ある外国の通貨に対して、円が高くなっているのか、安くなっているのかをいいます。外国投資信託(インデックス型)で運用されている場合の通貨は、通常ドル、次いでユーロを中心に運用されていますので、これら通貨の動きが影響するということです。

とりわけ世界の基軸通貨であるドルとの関係性はより注視され経済ニュースなどではドル円の動きを中心に話題が展開されます。ですので、ここではドル円での円高、円安についてみていきたいと思います。

円高、円安になる理由

円高ドル安
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為替の変動は各通貨への需給で変化していきますが、その要因は4つに分けて考えることができます。

・貿易などの実需
・ファンダメンタルズ要因(各国の経済状況)
・政治など国ごとの地政学要因
・テクニカル要因(投資家の心理)

簡単に説明します。
1つ目は「貿易などの実需」です。日本が海外でモノを販売するときはドルで販売し、たくさん売れるとドルを多く手にすることができます。それを日本に持ち帰り、従業員に給与を払う際には円に換えなければなりません。この場合、円の需要が高まるため「円高ドル安」へと動きやすくなります。

一方で、最近はM&Aが盛んですが、この場合、円をドルに換えて企業を買収するので、円を売ってドルを買う、いわゆる「円安ドル高」の圧力が増すというわけです。

次に2つ目の「ファンダメンタルズ要因」です。これは、国の経済が好調かどうかが判断される経済指標によるもので、注目される経済資料としては、経済成長率(GDP)や雇用統計、インフレ率、国際収支などがあげられます。

機関投資家など投資のプロは、これらの指標をもとに投資先を吟味し売り買いをしています。機関投資家の代表格は、生命保険会社や銀行、年金の運用機関です。

例えば、米国の景気が過熱してくると、景気を抑制するため、日本でいう日銀のような役割を果たしているFRB(米連邦準備理事会)が利上げを決定します。金利が高い国の通貨は魅力的なので買われ、相対的にドル高円安となります。反対に米国の景気後退⇒利下げとなると、その反対が起こるわけです。

3つ目の「政治などの地政学要因」も同じ考え方です。例えば、新大統領が誕生し期待が高まるとドルの需要が高まってドル高円安になり、米国でテロが起きると不安要因となってドルが売られ、安全な円への需要が高まり、ドル安円高となる要因になります。

最後に、「テクニカル要因」です。これは短期売買をするトレーダーなどが、チャート分析をしながら売買を繰り返すことによるドル円の需給の影響をいいます。

リーマンショック時に円はどうなったか

リーマンショック時は、米国発の金融危機、いわゆる地政学リスクが火種となり、世界中の景気減速懸念へと派生しました。経済の落ち込みで貿易が縮小し、経済指標は下振れに。相場が荒れるとトレーダーが売り買いを繰り返すという事態になったため、結果として上記4つの要因すべてが影響することになりました。ドルが売られ、最終的には、87円台前半まで円高が進みました。

東日本大震災時の円の動きは

震災と株価
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一方で、2011年の東日本大震災でも、日本に大きな地政学要因が発生しました。当初は日本への不安から円安を予想する人もいましたが、実際は円高が進みました。これは、震災で生命保険会社が保険金の支払いをするため海外で運用している資金を円に戻す、という見方が強まり、多くの海外投資家は需要が高まる円を買いに走ったということが主な理由のようです。

その他にも、国や企業が立て直しのために海外で運用していた資金を国内へと巻き戻し、今後海外投資を控える(つまり、ドルの需要がなくなり円の需要が高まる)という見方などもありました。このようなさまざまな要因から、円高が75円台半ばまで進み、史上最高値を迎えましたが、日本銀行が介入して何度か円を買い、円高に歯止めを掛けました。そういう意味では、中央銀行の介入も為替の変動要因のひとつになるといえます。

まとめ

あげると切りがありませんが、このようにさまざまな要因、思惑が交錯しながらどの要素が強くなるかで為替は円高になったり円安になったりしますから面白いものです。

為替ヘッジあり、なし、に正解はありません。迷う場合は、投資信託に積み立てるのも良いと思います。自分の資金でそれぞれの推移を体感することで、投資スタンスが定まっていくのではないでしょうか。

なお、為替ヘッジありでは、為替の影響を軽減させるためのコスト(ヘッジコスト)が掛かり、これは投資信託の純資産から負担します。このコストは、ヘッジ先の通貨と自国通貨の金利差が開くほど負担が大きくなっていきます。ヘッジありを選択した場合は、株や為替の推移に加えその部分にも着目するとより深く投資を学ぶことができるでしょう。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。