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Z世代が初めて経験する「物価上昇」とうまく付き合っていくコツ

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

Z世代が初めて経験する「物価上昇」とうまく付き合っていくコツ

人生で初めて、モノの値段が次々上がる?

あなたの子どもの頃のマンガ一冊と、今のマンガ一冊の値段はいくら変わったか覚えているでしょうか。あるいはジュース一本の値段はどうでしょうか。消費税の関係(端数あわせで10円上がるなど)を除けば、あまり値上がりした記憶はないと思います。

少なく見積もって20年、長めに捉えれば30年、日本ではモノの値段、物価はほとんど上がらないまま推移してきました。ライフプラン3.0世代はつまり、「値上がりを知らない世代」でもあります。

ところが、今年は「値上がりの年」になるかもしれません。昨年末、牛丼の値上がりがニュースになりましたが、今年に入って食パンや菓子パンがじわりと値上げされています。材料の小麦価格に値上がりがあったためです。カップ麺の値上げも話題になっています。

これからも食材、工業製品の原材料の値上がりが予定されています。人件費、輸送費なども値上がりが続いているので、今までと同じ値段のまま、とはいかなくなっています。

それでは、ライフプラン3.0世代は「値上がり」についてどう向き合っていくべきでしょうか。

世界的には年数%の値上がりは普通のこと

基本的にいえば、経済が回っていくと少しずつ物価も上がっていくのが普通の姿です。

世界的には年数%くらいの物価上昇はおかしなことではありません。経済成長が著しい新興国ではもっと高いインフレが生じることもあります。

ネットのコラムで「アメリカは食事が2000円くらいするのは当たり前。日本は安すぎる分、バイト代や社員の給料にしわよせが来ていないか心配だ」という話題が盛り上がったことがあります。日本の感覚でいえば「むしろアメリカは値段が高すぎるのではないか?」とびっくりする話です。

しかし、アメリカのコーヒーショップスタッフの時給が1900円くらいだというニュースがあります。つまり「日本なら時給1000円で、1000円のちょっといいランチ」のところ、「アメリカなら時給1900円で、2000円のランチ」と考えることもできるわけです。

信じられないかもしれませんが、物価が上がっていくというのはそういう変化が起きるということです。日本でも1000円のランチが物価の上昇に伴い、年4%の値上げを18年に渡って行われたとします。そうするとランチのお値段が2000円に値上がりすることになるのです。

値上がりは小さめに、できるだけ見えない形で起きる

牛丼の値上がりのように数百円の買い物が50円高くなるのは実は珍しいことです。実際の値上がりは「ステルス」、つまり目には見えにくいように起こります。

例えば「5円」ないし「10円」の値上がりはなかなかぴんときません。しかし、多くの値段が見直されれば一カ月の支出としては大きな値上がりになっていくことになります。小さな値上げは半年くらい間を空けながら、複数回行われる可能性もあるので注意が必要です。

あるいは「お値段そのまま」という値上げもあります。値上がりしたと思っていなかったら実は中身が減らされているというパターンです。お菓子の箱の大きさも、お店のお値段も同じなので油断をしていると、中身が10%減っているということがあるわけです。これは実質的には値上げです。

「新商品」も要注意です。ドラッグストアの洗剤やシャンプーなどは新商品、新パッケージへの切り替えが数年ごとに行われますが、高級感を出すことで値上げをしたり、容量を少なくして実質値上げをしていることがあります。

売り手側も、簡単に値上げをするわけではありません。原材料費や人件費が上がった分は値上げしたいところですが、一気に値上げをすると売り上げが下がる心配もあるからです。そこで、いろんな方法で値上げを模索することになります。

これからやってくる「値上がりの時代」は、こうした価格の変化をしっかり見極めていくことが問われる時代になっていくわけです。

若い世代ほどしっかり考えたいキャリアアップ

ところで、「値上がり分=年収増」となれば誰も困りません。実は長期的にはそういう関係は生じます。先ほどのアメリカの時給1900円でランチ2000円というのも、数十年をかけて物価と時給が追いかけっこのように上がり続けた結果だからです。

しかし、時給や月給のアップはすぐにはやってきません。特に正社員については翌年春にまとめてアップする、ということが多く、個人の家計では、物価の値上がりと給料のアップに「1年ズレ」のようなことが起こります。

また、インフレ時に気をつけないといけないのは「給料の金額がアップしているので、会社は自分を評価してくれているんだ!」というミスリードです。物価が上昇した分、給料がアップするだけなのですが、やはり金額がアップするとうれしくなってしまうわけです。

本来であれば、あなたの能力がアップするペースは基本的にインフレを上回っていきます。特に若い世代ほど「物価上昇率<給与上昇率」を目指していくことが大切です。

ライフプラン3.0世代は、キャリアにまだ十分な伸びしろがある世代でもあります。50歳代あるいは60歳になってから、ビジネススキルをさらに引き上げていくのはなかなか難しいですが、20~30歳代においては、「自分の能力を高める」余地がたくさんあります。

もしこれからインフレが始まったら、あなたの年収も徐々にアップしていくかどうかをしっかりチェックしてください。そのうえで、「インフレ以上に年収を増やす」ことに自覚的になることが大切です。

キャリアをしっかり見極めて、必要ならチャレンジするのはライフプラン3.0世代の課題ですが、しっかり年収をアップできるような舵取りを心がけてください。
もちろん、必要なら専門知識を習得したり、資格試験を受けるなどのお金を自分に投資することも忘れないようにしましょう。

物価上昇時、ますます重要になる家計管理

物価が上がると同時に、給料がアップするとは限らない(タイムラグが生じる)とすれば、目の前の家計のやりくりにも気を配る必要があります。物価上昇時代は毎日、毎月の家計をしっかり把握していかなければなりません。

ライフプラン3.0世代は、スマホの家計簿アプリを使って家計管理をしている人も多いと思います。アカウントアグリゲーション機能、つまり銀行、クレジットカード、ECサイトや電子マネーのアカウントを連携させることで自動記帳できる仕組みですが、物価上昇時代に役に立つのはこの「家計簿」です。

モノの値段の変化はメモを取ることが一番有効ですが、家計簿はまさにあなたの家計のデータベースとなります。「ここ数カ月、贅沢した感覚はないけれど、食費が増えているな」というようなことが続いたら、値上げが数字に反映されてきたということです。家計簿を使って検証してみてください。

また、「出費の比率」をチェックできるのも家計簿アプリの魅力です。全体的に物価が上がったとき、金額のみで判断するだけでは不十分です。「家計に占める割合」がキープされているならやむを得ない支出アップといえるからです。「今月も、先月も、食費の割合は変わっていない。つまり全体に物価上昇の影響があるみたいだ」というようなケースは気を引き締めて出費増に備えてください。

さて、状況把握ができたら、「出費が増えた金額分、その分の支出金額を抑える」つまり値上がり分の節約を考えていきましょう。

定期支出の項目(光熱費や通信費、クレジットカードから自動引き落としされる出費)などをチェックし、不要なものは解約、割安サービスがあれば乗り換えをして出費増への対策をします。

日々の買い物も、ムダな出費を削れば値上がり分をカバーすることができます。週に1000円くらいのカットができれば、当面の食費値上がりに対抗するくらいの力になるはずです。


あまりにも久しぶりにやってくる「値上がりの時代」は、もしかするとあなたのご両親も知らない世界かもしれません。今年は買い物のたび、値札に注目し、家計の赤字転落にならないよう、賢いやりくりを目指してみてください。