お金

テクノロジーの発展により生まれた「デジタル資産」とは?

お金をとことん増やしたい人のための「資産運用」超入門 泉 正人

テクノロジーの発展により生まれた「デジタル資産」とは?

そろそろ資産運用を始めてみたいと思っているみなさん。ようこそ、泉先生の「資産運用 超入門」講座へ。

この講座は、「お金をとことん増やしたい!」と考えてはいるものの、「まだ何もはじめていない」、「何からはじめていいかわからない……」という人に、自分に合った資産運用法を見つけ、実際に行動に移せる力を身につけてもらう講座です。

資産運用の方法をマスターできれば、夢や目標をかなえたり、老後にゆとりを持って暮らしたりするための資産を自分でつくることができるように。さぁ、心もお金も豊かに、自分らしいライフスタイルを楽しめる人生をここから手に入れましょう!

「暗号資産・仮想通貨」とは?

今回は、この直近10年くらいで新たに資産として扱われるようになった「デジタル資産」について学んでいこう。

「デジタル資産」って、どんなものを指すんですか?

代表的なものに、「暗号資産(仮想通貨)」や、「クラウドファンディング」があるんだけど、まずは暗号資産(仮想通貨)について話そうか。暗号資産(仮想通貨)とは、インターネット上でやり取りできる財産的価値のあるもの。「資金決済に関する法律」では、次の性質を持つものと定義されているよ。

「ビットコイン」、とかですかね?

そうだね。他には「イーサリアム」とか。名前は聞いたことがあるよね?

そうですね。でもいまだによくわからないところが多くて……。

暗号資産は、「交換所」や「取引所」と呼ばれる事業者(暗号資産交換業者)から入手・換金することができて、日本国内での暗号資産交換業は、金融庁・財務局の登録を受けた事業者のみが行えるようになっているんだ。送金や売買など、通貨としての利用は可能だけど、通貨といっても、日本円やドルなどと違って、国家やその中央銀行によって発行される法定通貨ではないものだよ。

法定通貨とそうでないものの大きな違いって、どこなんですか?

一般的な通貨では、為替変動が実体経済に悪影響があると判断される場合、為替の安定を図るために中央銀行の為替介入が行われる。でも管理主体が存在しない暗号資産(仮想通貨)では行われない。利用者の需要と供給だけで価格が変動するので、一方向に偏れば、その変動幅は大きくなりやすい傾向があって、価格変動の度合い、つまりボラティリティがかなり高い傾向があるんだ。

リスクはかなり高めですよね。

2017年に仮想通貨の価格が暴騰したことで、世界各国に多くの億万長者が誕生したことを覚えているかな?

覚えてます! 日本でも、仮想通貨投資で儲けたと言う人が続出して、SNSなんかでは「億り人(おくりびと)」っていう呼び名も話題になりましたよね。

あのとき、ビットコインには、1単位あたり100万円を超えるような値がついたんだ(グラフ参照)。ほかにも数多くの「○○コイン」という暗号資産が登場して、1単位あたり数円から数万円で購入することができるようになった。

リスクが高そうな暗号資産も、将来有望なものを見極めて投資できれば、資産を爆発的に増やすことができるってことですね!まぁ、でもそれが難しいんですけどね。

「クラウドファンディング」と「ソーシャルレンディング」

デジタル資産その2は、「クラウドファンディング」。

これもよく耳にするようになりましたよね。「群衆(Crowd)」と「資金調達(Funding)」を組みあわせた造語でしたっけ?

おっ、正解!どんなものかも大体わかるかな?

ネットで不特定多数の人に資金提供を呼びかけて、趣旨に賛同した人から資金を集める方法ですよね。

そうそう。では「ソーシャルレンディング」は?

えっ、「ソーシャルレンディング」ですか? えーっと……。

こちらは、「社会的な(Social)」と「資金を貸す(Lending)」を組み合わせた造語で、ネットを通じて不特定多数の人からお金を借りることを言うんだ。

へ~っ。お金を「借りる」。

 2つは混同してみられがちだけど、資金提供する出資者へのリターンの違いから、大きく次の3つに分けられるよ。

それぞれ、詳しく知りたいです。

まず「購入型クラウドファンディング」。これは、画期的な商品や、魅力的なサービスをつくりたいという人、つまり事業者が、その商品やサービスを世に出すまでの間に予約販売するという目的のもの。商品アイデアやビジネスプランをもとに、不特定多数に向けて購入権をつけて予約販売することで、事業者は資金を集め、その資金を元手に、商品やサービスをつくり、その商品の公開(発売)時に資金を提供した人が優先的に購入することができるという仕組みだね。買い手は、出資額に応じたモノやサービスを受け取ることができるので、資産運用や投資としてではなく、あくまでもショッピングとしてとらえるといいかな。

なるほど。ショッピング。

優先して商品を受け取ることができるというリターンや、割引購入としてのリターンがあるけれど、資産運用ではないので投資資金が増えることはない。画期的な商品開発に賛同したときや、ファンとして応援したいときに、参加してみてはどうだろう。

そうですね。では「投資型クラウドファンディング」とは?

「投資型」のなかでも、ここでは主に株式タイプに関して解説するね。

投資をすると、未上場企業の株式を受け取れるんだ。規模は小さくても、事業構想がすぐれていたり、技術力が高いなど、今後大きな成長が期待できる会社を、投資家として資金面から応援できるというメリットがある。

えぇ。

この「投資型クラウドファンディング」を用いて資金調達を行う会社は、会社設立後、間もないベンチャー企業が多い傾向がある。

と、いうことは?

仮にリターンとして株式を受け取った会社が、その後上場すれば、多大な売却益を得ることができる可能性があるんだ。M&Aなどによって投資先会社が大手企業などに買収された場合でも、高い株価で株式を売却する機会を手にする可能性があるんだよ。

あれっ?前回出てきた「未公開株」にちょっと似てます?

よく覚えてたね~。未公開株は通常、当事者どうしで株式を売買する「相対(あいたい)取引」が基本だと伝えたよね。それがインターネットを通じたクラウドファンディングによって、条件を満たせば誰でも取引できるようになったんだ。

へぇ~。じゃあどんな会社でも投資型クラウドファンディングで資金を調達できるようになったんですか?

どんな会社も、というわけにはいかないかな。金融庁の監督もあるから、個人間で話を持ちかけられる未公開株よりは信用の高い会社が多いよ。

期待できるリターンはどんな感じなんですか?

「未公開株の期待リターン」とほぼ同じで、投資した会社が上場することで莫大な利益を手にする魅力がある反面、投資先が上場しなければ利益は1円も発生しないというギャンブル性の高い側面も。覚えておこう!

はい! そして最後に「融資型(貸付型)クラウドファンディング」、ですね。

これは、クラウドファンディングの運営会社を通して、お金が必要な会社・事業などへお金を貸すという形で投資すること。それぞれに、返済期間、金利などが設定されていて、返済するときに生じた金利を毎月の分配金として受け取ることができる。分配金の受け取り方法に関しては、一部、違う場合もあるけどね。

あれ?これはなんだか債券(社債)の仕組みに近いような……。

Kくん、今日は冴えてるね~。確かに近い性質を持っている。でも会社や投資家から見ると、それぞれ違いがあるんだ。

知りたいです。

会社から見ると、債券の発行にはある程度の信用力と準備期間が必要なんだ。未上場企業の債券はほとんど存在せず、資金調達にも数ヵ月はかかる。一方、ソーシャルレンディングの場合は、インターネットを通じて不特定多数の人から融資を集められるので、何億円もの資金調達には向いていないけど、上場していない会社が簡易的に資金を調達するのには向いているんだ。

投資家から見るとどんな違いがあるんですか?

利回りの高さが大きな違いといえるかな。債券の場合、5%以上の利回りというのは、それなりのリスクがあるといえるけど、「ソーシャルレンディング」では、比較的高い金利が設定されていることが多くて、5%以上、なかには10%を超える高い利回りが設定されていることもある。

世の中はどんどん変わっていきますね。

まずは、商品の特性や仕組みをしっかりと学ぼう。そのうえで、運営事業者、対象企業、事業などの違いを理解して、うまく投資先を分散しながら5~10%を目指してみよう。

わかりました!

それぞれ運用する場合のコストは?

そういえば、これらの「コスト」って、どんな感じなんですか?

それぞれの方法によって、まったく異なる性質を持つよ。だから、まずはしっかりと勉強することが大切。

どの辺りを重視した方が良いですか?

コストを把握するうえで最も大切な点は、資産運用の仕組みを理解すること。自分が投資したお金は、誰(どの会社)を経由して、どのような手続きをもって対象となる資産に変わるのか。その資産は、何を理由にどのくらい価格(価値)が変動するのか。現金に戻すときの手続きはどうなのか。これらを理解することで、かけるべきコストなのか、かけないほうがいいコストなのかがわかってくるよ。

そうだ。税金についても考えないといけないですよね。

そうだね。比較的新しい資産運用の方法では、納税方法が理解されていないケースもあって、ネットでは、「バレないから大丈夫」なんて発信されていることもあるけれど、納税は国民の義務。その義務を怠ることは犯罪になるから要注意だよ。

犯罪。そうです、犯罪です。

資産運用で得た利益をどのように納税すべきか。これもしっかりと調べて理解しておこう。

デジタル資産のデメリットは?

僕には「まだちょっとわからない」というところがデメリットだなぁ。

そうだね。比較的歴史が浅い資産運用の方法には、何が正確な情報なのかわからないというリスクがある。だから、まずは、情報の発信元を確認するようにしよう。

情報の発信元かぁ。ネットでいろんな情報が飛び交う中、これを探すのが一番大変そう。

大丈夫。資産運用についての情報は、金融庁が発信する情報が最も正確だといえるよ。

おぉ。それを知っていると安心ですね。

たとえば、融資型クラウドファンディングの運営会社についても、「金融商品取引業の登録を受けていない場合もあり、詐欺被害が発生している」と金融庁が発信してくれていたりする。まずは、誰が何のために発信している情報なのかを読み取る力をつけよう。発信者が利益を得るためだけの情報は、詐欺の可能性が高いから気をつけて!

正確な情報収集を心がけます!

まとめ

近年は、「暗号資産(仮想通貨)」や、「クラウドファンディング」、「ソーシャルレンディング」など、デジタルの分野で新たに資産として扱われるようになったものが続々と登場しています。

これらは、「億り人」といわれるような人々を生み出すような大きなリターンを得られる可能性を秘めている一方、法規制やルールが定まっていないことから、大きく損失を被る可能性も持っています。

大切なのは、これらの仕組みをしっかりと理解したうえでチャレンジすること。そのためには、信頼できる発信元の情報を確認すること。資産運用に関しては、金融庁が発信する情報を参考にすると良いでしょう。

次回は、「結果を出している人の資産運用法」について学んでいきます。お楽しみに!