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副業?複業?「ふたつの仕事」を持つ、新しい働き方の時代の心得

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

副業?複業?「ふたつの仕事」を持つ、新しい働き方の時代の心得

ライフプラン3.0の時代、ひとつの会社でひとつの仕事をすることが当たり前の時代も終わる

ライフプラン1.0といえば、基本的に終身雇用の時代でした。ライフプラン2.0の時代において転職はポピュラーなものとなりましたが、それでもひとつずつ会社を渡り歩いていくものであって、ふたつの会社を同時にまたがって働くということはまずありませんでした。

会社もまた、同時に違う仕事をすることについて禁止をすることが多くありました。兼業禁止規定というもので、違う仕事を同時にしてはいけないというルールを就業規則に定めていました。

例外として認められるのは、賃貸住宅の大家や兼業農家などで、これは多くの場合、親から引き継ぐこともあり、一定の範囲で認められていました。

しかし「ひとつの会社でひとつの仕事をする」というかつての当たり前のルールも変化しようとしています。
「同時に、複数の仕事をする時代」がやってきているのです。

「副業」~サブとして別の稼ぎを持つこと

近年、会社の就業規則から兼業禁止規定が削除されています。これは厚生労働省の議論を踏まえ除外の動きが高まっていることも反映されています。

会社が容認傾向にある、といっても、一定のルールはあります。たとえば、今の会社でこなしているのと同種の仕事を、かつ今の会社のクライアントからこっそりと引き受け、しかも就業時間中にやったりすれば、これはアウトです。簡単にいえば、プログラマーがこっそり取引先から直接受託案件をもらう「内職」のようなケースです。

しかし、きちんと業務時間外で、本業の仕事に支障が出ないように留意しつつ取り組むのであれば、もうひとつ仕事を持つことが許容されるようになってきています(会社によって届け出の必要があったり、一定の条件を課すこともあるので社内ルールを確認)。

実際、厚生労働省のWEBに掲載されている就業規則のモデル(創業時に参考とするために提示している)では、2018年1月から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という規定が削除されています。また、副業・兼業についての規定を新設、そのあり方を示しています。

ただし、サブとしてもうひとつの稼ぎを持つことが容認されたといっても、しばしば「時間をお金に換える」ことになりがちであることには注意が必要です。本業の会社を退社したあと、コンビニの制服に着替えて深夜勤をするようなやり方は「1時間あたりいくら」の収入を増やすには確実な方法ですが、一方で体力を削ります。

週末だけであればなんとか体調管理もできるかもしれませんが、あまりにも長時間労働になるため本業に支障をきたすと判断された場合、副業を会社が認めないこともあります。それよりも、副業をするなら専門知識や資格を活かして時給の高い仕事を考えたいものです。

宅建資格を取得し週末忙しい不動産屋で重要事項説明のバイトをするとか、お坊さんの資格をとって読経をあげるとか、専門性があると時給も高くなります。

近年では、YouTuberやブロガーのように、好きなことを追求して自己表現しつつ、動画広告収入やアフィリエイト広告の収入を得るような人も増えています。

こちらは、完全実績連動なので、駆け出しYouTuberやブロガーは無報酬からスタートしますが、「好き」を形に変えることができれば、徐々に実を結ぶことになるでしょう。新しい時代の働き方、稼ぎ方としてこうしたアプローチも考えてみるといいでしょう。

「複業」どちらも本気で、2つの仕事を持つこと

もうひとつ、近年注目されているのは、本気でもうひとつの仕事を持つようなスタイルです。「音」は同じでも、違う「漢字」を用いて、しばしば「複業」と呼ばれたりします。

例えば、今の会社には週3日勤務の契約見直しをしてもらい、週2日は違う会社に出社します。メインの仕事は大企業ですが、複業の仕事はベンチャー企業だったり、NPOだったりします。

先ほどの副業では明らかに「正と副」という仕事の濃淡が分かれていたわけですが、こちらはそのトーンが弱まり、2つの仕事を「複線」で同時進行して働いているようなイメージになります。

ベンチャー企業が成長軌道に乗ってきたら、メインの仕事は退職し、全力で集中するようなことも視野に入れておくのが複業的考え方です。あるいは複業においては社会貢献を念頭に置き、正業のほうでしっかり年収を稼ぐという考え方もあります。

こちらも注意点は、休息時間の確保です。2つめの会社に思い入れがある分、平日の夜に顔を出して数時間働いたり、週末を全部仕事にしてしまうと、疲弊して体調を崩します。

一方で、週3日勤務あるいは4日勤務というような働き方を認めてもらうには、社内制度の整備が前提となります。大企業ではこうした裁量の余地を持ち始めているので、チャンスがあれば、そしてチャレンジしてみたい新しい仕事があれば複業を考えてみるといいでしょう。

2つの仕事を持つメリットとデメリット

さて、2つの仕事を持つことの最大のメリットは「稼ぎの柱が複線化する」ということです。

これはライフプラン3.0の時代の重要なキーワードでもあります。私たちにとってひとつの会社に人生の全てを依存することはリスクを集中させることでもあります。ちょっと会社の業績がダウンしたりするとボーナスがガクンと下がり、年収が数十万円以上変動することはしばしばあります。副業や複業はこれを軽減させる可能性を持ちます。

といっても、年収の比率でみればメインの仕事が8割以上を占めることがほとんどでしょうから、主たる仕事をしっかり励みキャリアを育てていくことが重要であることは間違いありません。

それでも、新しい世界が開ける可能性があるのも副業や複業のメリットです。複業でチャレンジしていた会社が急拡大して、一本に絞って頑張るというのは人生の大きな転換点になります。副業を趣味の延長で始めてみたら、趣味のブログが高じて定期収入(アフィリエイトなど)が入り出し、書籍出版や講師の仕事を得られたりすることもあります。

私の友人には、建築会社や広告代理店で実は偉い人なのに、ブラタモリのような街歩きのガイドをしている人がいます。とても気さくで、上場企業の管理職とは思えません。そして、本業も副業も楽しく取り組んでいることがうかがえます。

もちろんデメリットもあります。何度も指摘しているとおり、労働時間の管理が複雑になることは否めません。また、「2つの仕事を覚えていく」という苦労も伴います。違う仕事をするほど、まったく違う業務オペレーションに慣れるのは大変です。メインの仕事が中途半端にならないようにする必要があります。

また、社会的な認知がこれからであるため、メインの仕事の職場において悪印象を受ける恐れもあります。就業規則では緩和したものの、上司の人事評価などにマイナスの影響を及ぼしうることは考えられます(あまりにも古い体質の会社は、転職を検討したほうがいいかもしれません)。

副業・複業にチャレンジする人は、メインの仕事でもしっかり成果を残していくことが大切です。

家庭の理解も得ながら副業・複業してみよう

ところで、副業や複業を考えるとき、家族の理解が欠かせません。特に結婚している場合はそうです。

まず、副業でバイトを掛け持ちするような方法は、家族との時間を減らし、ひとり体力を削る心配があります。年収増の必要があってもひとりで抱え込まず、共働きで「世帯の合計年収」を増やすことを考えたり、「夫婦の家計全体」で節約などの収支改善を図るような取り組みも意識したいところです。

また、複業の場合は、メインの会社の年収が下がります(勤務日数が下がるため)。その分を必ずしも複業でチャレンジする会社の給料では補えないかもしれません。こうした冒険について家族の理解がないまま独断で進めるべきではありません。

働きがい・仕事のやりがいは複業をしたほうが高まるでしょうから(やりたいことがあって複業に踏み切るわけですから)、きちんと理解を得る努力が必要です。

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新しい時代の働き方として、副業や複業が注目されていますが、この流れは一過性にとどまるものではありません。また、単なる「年収を増やす選択肢」として考えるにはもったいないトレンドです。

皆さん自身のキャリア形成の一部としても位置づけながら、ぜひ副業や複業を検討してみてください。きっと、世界が広がってくるはずです。

なお、副業・複業は税金や社会保険の適用なども適切に行うことが大切です。今はまだ、制度のほうが十分に対応できていない部分もありますので、脱税などをして後々のトラブルにならないよう注意してください。