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上がり続ける火災保険料の補償内容を吟味!意外なカバー範囲とは

そなえる 権藤 知弘

上がり続ける火災保険料の補償内容を吟味!意外なカバー範囲とは

【画像出典元】「stock.adobe.com/Fotolia RAW」

火災保険は火災以外の原因の補償もしてくれる

火災保険は建物や家財などに損傷が出たときに補償される保険です。火災という名前ですが、火事以外の原因でも補償してくれるのをご存じでしたか?
火災保険が補償する主なケースを見てみましょう。

  • 火災、落雷、破裂・爆発
    キッチンからの出火や隣家からのもらい火による火災の損害、落雷、ガス漏れによる爆発などによる損害を補償。
     
  • 風災、雪災、雹災
    台風、暴風などの風災や雹災(ひょうさい)、豪雪や雪崩(なだれ)等の雪災による損害を補償。
     
  • 外部からの衝突、水濡れ、盗難、等の補償
    盗難や漏水による水濡れ、自動車の飛び込み等による損害を補償
     
  • 水災
    台風などによる洪水(こうずい)で床上浸水した際の建物や家具の損傷や土砂崩れによる家屋の倒壊など水災による損害を補償
     
  • 不測かつ突発的事故による破損、汚損
    日々の暮らしの中で起こりがちな建物・家財の思わぬ破損・汚損など不測かつ突発的に生じた損害を補償

ご覧のように火災保険という名称ですが、それ以外の原因でも補償されるのが火災保険の特徴です。例えば不測かつ突発的事故による破損、汚損などを原因とした保険金の支払いは大部分の保険会社で支払件数が1位になっています。事故原因としては、部屋の模様替えをしている途中で壁に家具をぶつけて穴をあけた、子どもがテレビのリモコンを投げてテレビの液晶が割れたなど日常生活の中でありがちな事故を補償してくれます。

このように日常生活の中で発生する事故をカバーしてくれるのが火災保険ですが、地震の被害は地震保険に加入していなければ補償されません。なお地震保険は単独では加入できず、火災保険とセットで契約する必要があります。

*火災保険に限らず損害保険は契約内容により補償される範囲が異なります。上記の内容は火災保険で補償される一般的な例を表したものであり、すべての契約に含まれるものではありません。ご自身の契約内容が不明な場合は、必ず保険会社に確認してください。

続く火災保険料の値上げ

値上げ
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火災保険は都道府県によって保険料が違うことをご存じでしょうか。例えば木造住宅で保険金額2000万円の場合の保険料を比較してみると、かなりの違いがあることが分かります。(*地震保険は除いています)

  • 北海道・・・2万3440円/年
  • 東京・・・・2万930円/年
  • 福岡・・・・3万4500円/年
  • 沖縄・・・・4万1980円/年

上記は、ある損害保険会社の保険料を比較したものです。建物の広さや保険金額は全く同じ条件ですが、建物がどの都道府県にあるかによって保険料が大きく異なることが分かります。今回の4県で比較すると、台風や大雨の被害が発生しやすい九州や、大雪による被害が発生しやすい北海道は保険料が高めですが、東京は保険料が比較的安くなっています。つまり自然災害のリスクが高いということは、保険料が高くなることを表します。

また、ここ数年は特に、梅雨時の集中豪雨や台風、夏場のゲリラ豪雨など自然災害が増加しており、火災保険の支払件数や支払金額も上昇傾向です。


損害保険料率機構:
https://www.giroj.or.jp/publication/outline_k/k_2020.pdf#view=fitV

台風や豪雨、大雪など自然災害が少なければ支払件数や支払金額も少なくなりますが、最近は「50年に一度の大雨、観測史上最大級の台風」というニュースや被害をよく耳にします。このように自然災害が増加傾向で被害が激甚化(激しい被害)している影響で、損害保険各社も保険料を上げざるを得ない状況になっています。

火災保険料、今後の見通し

火災保険の保険料算出の基準になる損害保険料率が毎年のように見直され、2019年、2020年、2021年と3年連続で火災保険料が変更されました。また2022年にも保険料が値上がりする予定で、契約期間も現在の最長10年から5年に変更される見込みです。

これは地球温暖化などの影響で自然災害の発生リスクが高まっていることや、被害地域が拡大化していることなどの影響と考えられます。なお地域の区分も現在は県単位ですが、将来的には市町村単位で設定され、地域ごとのリスクが今よりも細分化される可能性も検討されています。いずれにしても火災保険の保険料は値上がり傾向にあると考えてよさそうです。

火災保険について、FPへ相談された事例

いたずらでテレビを壊す男の子
【画像出典元】「stock.adobe.com/andras_csontos」

マンション購入時の火災保険に関する相談を受けた際、火災保険は建物だけでもよいという相談者へ、家財保険を付けることと突発的な事故による破損・汚損時の補償を提案しました。最終的に相談者は家財保険に加入し、突発的な事故を補償する内容で契約されました。

その後、子どもが走り回って液晶テレビを倒して壊れてしまったということで保険金が支払われた事例がありました。また別の方で、庭に置いていた自転車が盗難されて保険金が支払われたケースもありました。

いざというときに役立つのが火災保険です。もし自然災害や火災などで建物や家財が損害を被っても、残念ながら公的な援助は基本的にありません。そのため自助努力が求められますが、そんなときに役立つのが損害保険です。

過剰に保険に加入する必要はありませんが、いざというときに生活を再建できるだけの保険金額で契約することが重要です。また、契約期間が長い方が保険料が安くなることを見越して長期間で見積もりを取ったら予算として考えていた金額よりも高くなってしまうこともあると思います。その際は、長期間契約の割引は考えず、補償内容がきちんとしたものを一年更新で契約するという選択もあるでしょう。

災害時に知っておきたい、気をつけたいお金のこと

自然災害のリスクが高まっているときだけに限りませんが、自宅に非常用持ち出しカバンを用意しましょう。また持ち出しカバンの中には必ず1000円札と小銭を用意しておきましょう。

災害発生時は停電を伴うことも多く、クレジットカードや電子マネーは使えない可能性があります。災害の恐れがあるときや避難を考えるときは現金も忘れずに準備しましょう。

なお銀行などは災害が発生した際は、身分証明書があれば預金を引き出せる場合があります。また生命保険・損害保険も保険会社で本人確認ができれば証券がなくても対応可能です。

このように各金融機関は、災害発生などの非常時には本人確認ができれば柔軟に対応してくれることが多いので、運転免許証やマイナンバーカードなど写真付きの本人確認書類は忘れずに持っておきましょう。

また自然災害で建物に被害が出たときはスマートフォンなどで写真を撮っておくと保険の請求時に役立ちます。命を守ることが最優先ですが、もし可能であれば記録を残しておきましょう。

まとめ

今や、全国どこに住んでいても自然災害のリスクを無視することはできません。自治体が発行しているハザードマップを活用し、お住まいの地域で、どのような自然災害が発生する可能性があるのかを家族全員で確かめることをまずはおすすめします。

そして、賃貸・持ち家にかかわらず、自分が契約している火災保険の契約内容や補償内容を確認してください。火災だけではなく、水害が発生した場合や突発的な事故などが補償されるかどうかも忘れずに。また災害発生時は家財も被害を受けます。保険料が高くなるかもしれませんが、可能な限り家財保険にも加入することをおすすめします。

火災だけではなく日常での事故も補償してくれる火災保険。事故がないことが一番ですが、万が一事故が発生した際に火災保険が活用できるか一度確かめてみてください。

*今回の記事は一般的な火災保険の内容について解説したものです、すべての火災保険の補償内容を網羅したものではありません。契約内容が不明な場合はご契約の保険会社にお問い合わせください

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