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子育て支援、住宅ローン控除延長、ハンコレス…生活に影響する「2021年度税制改正」

そなえる 内山 貴博

子育て支援、住宅ローン控除延長、ハンコレス…生活に影響する「2021年度税制改正」

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2020年末に2021年の税制改正大綱が発表されました。税制改正は私たちの生活にとってメリットになることもたくさんあります。ただ、税金と聞くと、特に若い世代の人をはじめ、「税金は給与から引かれて納めるもの」と思っている人も多く、関心の無い人も多いようです。せっかくのメリットも見逃しているかもしれませんよ。今回、私たちの生活に関係深い改正(予定)点を、分かりやすく紹介していきます。

税制改正は「政府から私たちへのメッセージ」

私たちは住む場所や職業選択など、自由が担保されており、政府が私たちの生活に口を挟んでくることはありません。例えば、「無駄遣いが目立ちます。もう少し貯蓄しなさい!」と政府から毎月指導されることなんてありませんよね。

ただ、間接的に政府が「できればこんな生活を送ってください」と、私たちの生活をコントロールする方法があるのです。それが税制であり、税制改正でもあるのです。
例えば、NISAやiDeCoといった税優遇措置を受けながら将来に向けてお金を運用する制度が定着しつつありますが、これもその1つですね。

「投資で利益が出ても非課税にしますよ。だから預貯金のみならず積極的に資産運用をしてください」と、政府からの声が聞こえてきそうです。

もう少し遡ると2007年には所得控除の1つ、従来の損害保険料控除に代わって「地震保険料控除」が創設されました。

「地震の多い日本。ぜひ皆さん、地震保険に加入して下さい。地震保険に加入すれば、保険料に応じて税金の負担を軽減しますよ」そういったメッセージだったのではないでしょうか。その年に新潟県中越沖地震、そして2011年には東日本大震災、2016年には熊本地震と大きな地震被害に見舞われました。地震保険に加入していたおかげで、住宅や家財など一定の被害を補償できたという人も多いと思います。

今回はどのようなメッセージが込められているのか?そんな目線で税制改正に注目してみてください。

私たちの生活に関わる主な税制改正点

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住宅ローン控除延長

従来10年間であった住宅ローン控除が、消費税率10%への引き上げに伴い控除期間が13年となりました。2020年末までの入居が条件でしたが、2022年末までに延長されました。住宅ローン控除は大きな税負担軽減措置です。現在、住宅購入を検討している人にとっては朗報です。

・住宅ローン控除とは?

住宅購入の際、多くの人が住宅ローンを組みます。年末までに住宅ローン残高の1%がその年の税額控除となります。ローン残高の上限は4000万円(耐久性や省エネ性能の高い認定住宅は5,000万円)です。

例えば年末時点で3000万円のローン残高がある場合、その1%であるため30万円がその年の所得税から控除されます。

つまり、会社員など所得税が毎月源泉徴収されている人は30万円還付されることになります。そして翌年末も同様に、仮にローン残高が2900万円であれば29万円の税額控除となります。これが10ではなく13年続くのです(11年目から13年目は別途計算方法あり)。
なお、住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下でなければならないなど、一定の条件があります。

・床面積要件も緩和

上記の住宅ローン控除期間の延長に伴い、住宅ローン控除が適用される物件の床面積要件が50㎡から40㎡に引き下げられます。従来であれば住宅ローン控除の対象にはならなかったワンルームのマンションなどが対象となるかもしれません。
なおこの場合、所得要件が3000万円ではなく1000万円となります。

住宅資金に関する贈与税の非課税措置

こちらも同じく住宅取得関連の改正です。
住宅を購入する際、両親や祖父母から資金援助をしてもらう場合もありますが、こういった場合、受け取った側つまり住宅を購入しようとしている人に贈与税の負担が生じることも考えられます。贈与税の基礎控除は110万円(年間)であるため、基礎控除を超えた場合、課税されるのです。ただし、一定の条件を満たした場合、一定額まで非課税とする措置が導入されています。その非課税枠は2021年4月より縮小する予定でしたが、今回の税制改正で据え置かれることとなりました。

「家を買う時は協力するから、何なりと言ってきなさい」
そんな優しい声をかけてくれる両親などがいる人にとっては、とってもうれしい制度ですね。

教育資金・結婚や子育て資金に関する贈与税の非課税措置

住宅同様、両親や祖父母が子供や孫のために贈与をする際、教育資金や結婚・子育て資金であれば基礎控除110万円に加え、以下の金額を非課税にするという制度が今年3月に終了予定でしたが、内容を見直し2年間延長されることとなりました。

現在、国内の金融資産の大半を高齢者が占めているため、若い世代に贈与しやすくすることで経済を活性化していきたいという狙いもあります。

自動車にかかる税金についての免除・軽減措置

自動車を購入する際と車検を受ける際にかかる「自動車重量税」が環境に優しい燃費性能を備えた自動車などに応じて免除、50%または25%の軽減措置が取られていますが、燃費性能などの要件が見直された上、2年間延長されます。車を所有したい人には、選ぶ車種によっては負担軽減となります。購入前に担当者に尋ねるなど、確認をしてください。

医療費のサポート制度
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セルフメディケーション税制5年間延長

・セルフメディケーション税制とは?

所得控除の1つに医療費控除があります。通常、年間の医療費が10万円を超えなければ医療費控除を受けることができないため、ある程度医療費はかかったものの、結局、医療費控除を受けることはできなかったというケースも想定されます。

一方、セルフメディケーション税制は月当たり1000円、年間1万2000円以上の医薬品等の購入で控除を受けることができるため、多くの人が対象になる可能性があります。

セルフメディケーション税制とは文字通り「セルフ」であるため、自分自身で薬局やドラッグストアに行き、購入した風邪薬など特定一般用医薬品等の購入費が以下の金額を超える場合、医療費控除の対象となります。

支払った特定一般用医薬品等購入費-保険金等で補てんされた金額-1万2000円

通常の医療費控除との併用はできませんので、その点注意してください。また、セルフメディケーション税制を適用しようとしている人は定期健康診断などを受診していることが条件になり、今まで確定申告書の際に健康診断を受けたことを明らかにする書面を添える必要がありましたが、2022年の確定申告分から、書面が不要となり、手元に保存しておけばよいという位置づけに変わります。

子育て関連の助成措置

国や自治体が子育て世代にベビーシッター代や認可外保育所の費用を助成する場合がありますが、従来は「雑所得」として課税対象となっていました。今回の税制改正で非課税となるため、税金の心配をすることなく助成してもらえることになります。

書類の押印不要措置

現在、デジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されています。
ロボットや人工知能(AI)、モノのインターネット化(IOT)などの新しいデジタル技術を使ってビジネスや生活の質を高めていくことがDXといわれていますが、それは税務でも同様です。

今回の税制改正では電子化についても触れてあるため、上記押印不要以外にも税務手続き、税務書類の保存方法などどんどん電子化が加速していくことが想定されます。「会社に行かないと押印できない」、「自宅に印鑑を忘れた」こういった経験が一度はあるのではないでしょうか?

リモートワークが促進される中で、改めて押印の必要性が見直されていますが、今回の税制改正で一定の税務書類を除き、押印不要となります。「わざわざ税務署に行ったのに、印鑑が無く手続きがやり直しに・・・」こういったケースが無くなるのはうれしいですね。

なお、「施行日前においても、運用上、押印がなくとも改めて求めない」とされています。よって、2020年分の確定申告(2021年2月16日~)から押印がなくても受理してもらえそうです。

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