お金

ボーナス減、残業代減時代に考えておきたいお金の使い方と働き方

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

ボーナス減、残業代減時代に考えておきたいお金の使い方と働き方

時代の変化に応じた稼ぎ方や家計管理を考えていく事はこれからのマネープランそしてライフプランには欠かせません。今回はリアルタイムで起きている3つのお金の問題をお話してみたいと思います。

2020年冬ボーナスはかなりの厳冬 2つの改革が必須

まず当面の間は「ボーナスは厳しい」という共通認識を持っておく必要がありそうです。

2020年の冬ボーナスはかなり厳しいものとなりそうです。執筆時点でのシンクタンクの予想値を見ていますが、いずれも10%程度のダウンを予想しています。また「ボーナスゼロ企業」が増加する可能性を指摘しており、新型コロナウイルスの影響が大きいことを示しています。

あなたの会社のボーナス提示があったら、昨年と比べてどうであったかしっかり比較してみてください。幸いにして売り上げが伸びているような一部の企業、あるいは売り上げを維持できている企業では、ボーナスが前年並みということもあるでしょうが、「ボーナスが減った」あるいは「ボーナスが出ない」ということは珍しいものではなくなります。

ボーナスが厳しいということは2つの意味で家計管理に変革が必要になります。

1)毎月の家計の不足をボーナスで補う発想からの脱却

まず、「毎月のお給料では日常生活費がちょっと足りなくて、ボーナスから回している」という家計は見直しが急務です。

それが月1~2万円程度の取り崩しであっても、半年にすれば6~12万円をボーナスに依存することでなんとかやりくりしていたわけで、これは小さくない金額です。

気を引き締めて節約を行い、この半年はボーナスからの取り崩しがなくてもやりくりできるような体質に家計を改善していく必要があります。

それ以降も、できればボーナスに頼らない家計のやりくりを確立していきたいものです。ボーナス減少が続く可能性があるからです。

2)大型出費を安易にボーナスに依存する体質からの脱却

ボーナスと言えば大型出費の貴重な原資です。しかしボーナスが減った場合はそれどころではありません。今までの当たり前はしばらくリセットです。

旅行プランや家買い換えの計画(あるいは新作ゲーム機の購入など)については、凍結や予算カットを考えてみましょう。

「ボーナスからの貯金を少し減らして、大型出費予算も少し減らして、なんとか旅行は実現したい」というようなアレンジはあってもいいですが、できれば将来に向けた貯金はゼロにしないようにしてください。

また、「ボーナスは全部使い切る!」のような使い方をしていいのはせいぜい25歳までです。ボーナスから貯金をしていた人はボーナス減あるいはゼロの時期に自分の貯金を取り崩してこらえることができますが、そうでない人は厳しいやりくりとなります。ボーナスからしっかり貯める習慣を今から考えておきましょう。

そして同時に「毎月の給料からもちょっとずつ貯金して大型消費を実現する」という方法も考えていきましょう。「毎月1万円積み立てて、年に一度旅行に行く」のような感じです。

残業代は抑制傾向が続く 毎月の家計の収支改善を

さて、ボーナスダウンも家計にとっては厳しいところですが、実はみなさんのお金の流れには違う変化もあります。

実は毎月の給料についてもじわじわ下がっていないでしょうか。「今月、なんか今までより少ないな?」というようなことを気にしている人も多いと思います。

会社の給与体系に変化があったという話は聞かないし、何か会社が意図的に給料をカットしている風でもないのに、毎月の給料が1年前と比べて下がっていることは、実はあります。

それは「所定外給与」の減少です。私たちの給料は、基本給+諸手当のような組み合わせで最終的な支給額が決まります。

残業が生じれば残業時間に応じて割り増しされた時給が加算され(時間外手当、いわゆる残業代)、休日出勤を命じられれば休日出勤手当が出ます。

これ以外にも、食費の補助だったり様々な手当を福利厚生として設定している会社もあります。

賃金の支払い状況に関する公的な調査でも、こうした残業代などの支払いが減っていることが示されています。これはブラック企業であるから働かせているのに不払いをする、という性格のものではありません。「残業時間そのものが減ってその分所定外給与も減った」というものです。

会社から残業の禁止を通達されたり、出勤時間の調整(早朝出勤、早期退社など)をしたことで残業時間が消滅していることがあります。テレワークに移行した会社などでは、そもそも残業時間がカウントされない(定時で業務終了とみなす)こともあります。

当然ながら、時間外の労働時間が減っていれば残業代はもらえないことになります。しかし、残業代も込みで、給料だとイメージしていた人にとっては、一大事です。

残業時間や計算方法にもよりますが、月1万円以上あるいは2万円を超える給料ダウンになっている人もいます。

こちらも家計の改善が必要になります。こちらはとにかく「残業代頼みの家計のやりくりはしてはいけない」という風に毎月のやりくりをリセットするということです。

残業代が減ったら「毎月の赤字か黒字かの分岐点」を超えてしまい、毎月赤字になったという人がいます。これは本来であれば定時退社していたら、もらえなかったはずの残業代を頼みに、今までは毎月のやりくりをしていた、ということです。

まずは「残業代頼み」であった分の家計引き締めを意識してください。

残業代が日常生活費ではなく、ストレス発散の飲み代や散財に消えていたのなら、その分を打ち消せば収支はなんとかトントンになります。

近い将来、景気が戻ってきて残業代ももらえるようになったら、その分を貯金に回せるようになりたいものです。しかし「ポストコロナ時代は基本的に残業しない時代」になる可能性も今から考えておいたほうがいいと思います。

今はとにかく、「毎月の給料=毎月の生活費」を目指してみましょう。

早期退職制度の募集を打ち出す企業も!

また、心配な傾向はもうひとつあります。早期退職の募集を行うというニュースが散見されるようになってきていることです。

日本の労働法制では指名解雇(例えば100人減らしたいとき強制的に100人を名指しして辞めさせるやり方)のようなリストラは難しいようになっています。これは働く人にとってはいきなりクビにならずにすむ仕組みとなっています。

しかし、会社がそれでも人員削減をしたい場合、本人が希望するような形での提案をしてくることがあります。基本的には「期間限定、人数限定での募集をかけ」「応募者には退職金を上積みする」という方法を採ります。

上乗せの退職金は企業の状況に応じて決まりますが「年収の半年分」あるいはそれ以上を上乗せすることもあります。

しかし、半年くらいの給料相当額が上乗せされたところで、安易に喜んで応じてはいけません。

こうした早期退職募集の場合、自分で離職を申し出ても会社都合の退職となります。雇用保険の求職者給付(いわゆる失業給付)はすぐもらえるので、何カ月かは、割増退職金を取り崩さずにすみますが、そのあいだに次の仕事が見つからなければ意味がありません。

雇用保険がもらえなくなったあと、割増でもらった半年分の退職金がなくなるまでに再就職を決めなければならない、というのはプレッシャーです。前職と比べて条件の悪い、不満足な内定でも応じざるを得なくなるかもしれません。年収ダウンでの転職になれば元のまま働いていればよかったということです。

転職市場は今、厳しい状況になっています。1年前までは正社員の有効求人倍率が1.1倍を超えるというかつてないチャンスでしたが、今は0.79倍(令和2年10月分)までダウンしています。

希望退職の案内が出たときには、「次はそんなに簡単にみつからないかもしれないぞ」と、慎重に判断することが必要です。

ただし、「早期退職を募集しているということは、うちの会社は相当苦しい状況にありそうだから、転職を考えよう」という視点はもっておいたほうがいいでしょう。

このままではボーナスも少ないでしょうし、最悪の場合、倒産という可能性もあります。特に働き盛りの世代は、業績が悪化している会社で何年も過ごすより、伸びしろのある業績好調の会社で給料、賞与それぞれしっかりもらっておくことをオススメします。

早期退職に応募しない場合であっても、転職活動は密かに開始しておき、好条件がみつかれば、割増の退職金がなくても転職をしてしまうのも一考です。

なお「会社にお世話になったから」とか「育ててもらった会社だから」というような人情は禁物です。たとえ5年後に景気が回復したとしても、その時点でのボーナスが増えることはあれ、「5年分さかのぼって10ヶ月分のボーナスを上乗せしておくよ、ここまでありがとう!」なんてことは絶対にないからです。

苦しい時期こそマネーリテラシーが磨かれる

今回は「ボーナス」「給与」「雇用」という3つのキーワードを考えてみました。

確かに今は苦しい時期です。しかしこういう時期は皆さんのお金のリテラシーを磨くのにはもっとも適した時期でもあります。

余裕があるとき「節約を」といっても先延ばししてしまいます。会社が普通にボーナスを払ってくれているとき「転職を」といっても無理に急がなくてもいいかと考えてしまうものです。

しかし、ボーナスが減ったり、残業代がでなくて給与が下がれば、危機感は高まりますので、家計簿アプリを使った記帳をスタートさせたりする等、一気に節約スキルが磨かれたりします。

これから何年、こういう時期が続くかは分かりませんが、ぜひ前向きになって、この厳しい時期を乗り越えてみてください。