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果たして携帯料金はどこまで下がる?菅政権誕生の若者への影響は

経済とお金のはなし 伊藤 寛

果たして携帯料金はどこまで下がる?菅政権誕生の若者への影響は

監修・ライター

菅義偉首相の就任で若者の暮らしは変わるのか。主要政策の中で、最も分かりやすいのは携帯料金だろう。菅首相は就任するなり大手キャリアの携帯電話料金の引き下げを掲げた。早速大手各社は値下げしたプランを発表したが、今のところ大手キャリア本体の値下げには至っていない。政府の思惑通り料金は今後、容易に下がるのか。世界各国の料金や通話・通信品質を見ながら検証する。最後に政府の政策との「付き合い方」にも触れた。

大手キャリアは「子分」の値下げプランを発表。どこまで下がる?

菅首相の求めに応じて、大手各社は本体ではなく、自社が持つ格安SIMサービス、いわゆるサブブランドの携帯料金を下げることにした。

auはUQモバイルの料金を引き下げると発表。11月現在は月10ギガで月2480円だが、20ギガバイトのプランで3980円とする。ソフトバンクはワイモバイルの料金を月14ギガで4680円のところを、20ギガで4480円とした(いずれの料金も「縛り」なしのプラン)。なお、ドコモは新料金体系を発表していない。サブブランドがないドコモは新しいブランドを立ち上げるのではともささやかれている。

楽天モバイルの料金は一律で月2980円。通話、通信量は無制限とうたっている。ただ現在は300万人限定で、独自の回線を用いたサービスエリアは狭い。楽天は「2021年3月までに人口カバー率70%を目指す」としているが、この値がスムーズに実現するかは不明だ。

日本の携帯は「そこそこ通信しやすくそこそこ高い」

菅首相は就任記者会見で日本の携帯料金について「世界でも高い料金」と指摘した。そもそも菅首相の言う通り、日本の携帯電話料金は高いのか。電波は通じやすいのか。

ITなど市場調査を手掛けるICT総研の調査によると、日本の携帯料金はヨーロッパと比べれば高く、韓国、アメリカと比べれば安い。

ICT総研ではデータ容量ごとに平均価格を出しているが、いずれも日本はアメリカ、韓国と比べれば料金が安いし、ヨーロッパに比べれば高いことが分かる。

通信の速度でいえばアメリカ、ヨーロッパよりは質が良いと見なされる一方、韓国にはやや劣っている。総合すれば「日本の携帯電話は世界と比べればそこそこ通信しやすいが、その分そこそこ高い」と表現するのが妥当なところか。

スムーズに価格が下がるには楽天モバイルの普及が必要

政府は携帯電話料金の値下げを打ち出したが、法律をもとに料金を強制的に下げさせるのは難しい。ふたを開けてみれば、auとソフトバンクはサブブランドに値下げさせたのみで、本体のプランには大きなメスを入れなかった。

今後のカギは3社に次ぐ一角・楽天モバイルの基地局増設のペースだ。自社回線を全国に張り巡らせて利用者を増やし、「4強体制」になれば競争原理が働く。つまり「ウチも下げなければ競争に勝てない」と他の3社に思わせることができる。

基地局の遅れなどで昨年から、政府は楽天に行政指導を繰り返している。楽天側は明言していないものの、整備は進んでいないようにも見える。楽天の「本気度」がここにきて試されているのだ。

格安SIMは特典を見極めて利用する時代に?

SIMカード
【画像出典元】「stock.adobe.com/kelly marken」

現実に大手携帯会社が安いプランを投入するようになれば、格安SIMの各社は苦しくなる。そうであれば、そこを逆手に取って会社を選ぼう。格安SIM各社が取る策はおそらく、追加での値下げではなく、他サービスとの抱き合わせで売る戦略だ。

HISモバイルはGo To トラベルキャンペーンに合わせて「Go To アシストキャンペーン」を展開。抽選ではあるがGo To トラベルに合わせてHIS独自に割り引く方策を打ち出した。OCNモバイルなどインターネット回線業者の格安SIMは当然ながらインターネットとセットにすれば安くなるし、イオンモバイルは額こそ小さいものの契約時にイオンのWAONポイントの付与も受けられる。普段利用している他サービスと合わせてSIM選びをすればよりお得になってくる。

ライフスタイルに合わせた携帯プランを考えよ

新首相が「値下げせよ」と唱えたとしても、すぐに携帯料金が下がるわけではなさそうだ。そこかしこで言われていることだが、安く済ませたいのならばまず格安SIMに切り替えよう。

ただ、ライフスタイルは人それぞれ。これからの携帯電話の契約プランは、よりその人その人のライフスタイルに合わせたものになるはずだ。格安SIMで安く上げるもよし、大容量プランで動画を流しっぱなしの生活を送るのもいいだろう。

テザリングを用いパソコンで作業することが多い筆者はiPhone11を一括で購入し、年間契約を結ばずにプランを組んでいる。メリットは付随する無駄なサービスを契約しなくてもいいこと、また、契約に関係なく自分の好きなタイミングで新機種を購入するためだ(iPhone12は買わない予定だが…)。

菅政権誕生による若者への影響は?

2台のスマホを見比べる人
【画像出典元】「stock.adobe.com/Tiko」

心がけておきたいのは、携帯料金値下げが「若者向け政策」ではないということだ。菅首相は毎年携帯会社が上げる利益が高いことを問題視し、携帯会社に競争原理をもたらすことを目的としているとされる。

「料金値下げ」に喜んで安易に飛びついてはいけない。実際、auやソフトバンクが発表した格安プランは格安SIMの、しかも20ギガ近く活用した場合のプランだ。まずは自分に合ったコスパの良い携帯会社を見つけるべきだろう。今後の政策についても若者向けのものが非常に少ない可能性がある。少子高齢化が進み、高齢者に向けた政策が数多く打たれがちな昨今。否応なしに社会が変化する中で、若者はより損をしない身のあり方を模索するべきだ。

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