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クリスマスこそ”お札寄付”デビューをする絶好のタイミング!

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

クリスマスこそ”お札寄付”デビューをする絶好のタイミング!

4つのお金の使い方「消費、貯蓄、投資」そして「寄付」

あなたの手にしたお金はどこに行くでしょう。「毎日の買い物やカードの引き落としに全部消えていきますよ!」という答えが返ってきますが、お金の行く先をもう少し広く捉えてみることが、ライフプラン3.0の時代のカギです。

1.Spend(消費):

買い物をしたお金として使うのは「消費」に回したお金です。日常生活を維持していくため、また生きがいやゆとりのために私たちは仕事をし、そのお金を使います。

お金を使うことは次の働きがいにつながることもあります。「推しのコンサート、楽しかった!これでまた仕事がんばれる!」というような感じです。

2.Save(貯蓄):

目の前の出費にすべてのお金を消費しきってはいけません。近い未来あるいは遠い未来のために今のお金を残しておくのが貯蓄の考え方です。

人生100歳時代はその場しのぎではなく、未来に備える意識が欠かせません。あなたの給与振込口座から自動的に積み立てが行われる積立定期預金を組んだり、給与天引きで直接銀行等に積み立てられる財形貯蓄をするのがオススメです。

3.Invest(投資):

お金を銀行に預けて利息がつくのが貯蓄ですが、もっとダイレクトに企業活動をサポートすることができます。それが投資です。株式あるいは債券を購入することで企業や国の取り組みを経済的に支えることができます。

債券であれば所定の利回り、株式であれば配当や株価の上昇益を手にすることでお金を増やすことができます。債券の利回り、株式の配当は銀行預金の利息より高いのが一般的です。

4.Donation(寄付):

そしてもう一つのお金の使い方があります。それが寄付です。

寄付はあなたにお金は戻ってきません。その点で消費とはまったく意味合いが異なります。また貯蓄や投資のように、経済活動に用いられても権利は自分に留保されているわけでもありません。

しかし、寄付を考えてみると、私たちの人生には彩りが生まれます。

年末調整の還付金を寄付に回してみてはいかが

寄付というとコインを募金箱に投入した経験は誰にもあるはずです。子どもの頃、親から小銭を受け取って、募金箱にいれて赤い羽根をもらった記憶や、募金活動をする側になって駅前で声をあげた記憶を思い起こす人もいるでしょう。

しかし寄付はコインでのみするものではありません。むしろ社会人となってから考えてみたいアプローチ、ライフプラン3.0の時代に考えたい寄付のスタイルは「1000円以上を振り込む」というものです。

1日2円を毎日寄付をしても年間730円にしかなりません。しかし、1年に一度、1万円を届けることができれば、大きな活動資金になります。

国連の取り組みのひとつである国連世界食糧計画(WFP)は2020年のノーベル平和賞となりましたが、災害や社会不安により難民になってしまった人への食料の配給を行ったり、学校給食を無償提供することで子どもの基礎教育を受ける通学機会を与える取り組みを行っています。

そこでは、3000円の寄付があれば100人の難民に緊急時の食料を提供できることや、5000円の寄付があれば1年間の給食が子ども1人に提供できることなどが紹介されています。

寄付をどれくらいすればいいかは難しい問題です。困っている人が助かったものの、自分の家計が赤字になってはいけません。

ひとつの目安として年収の0.5%~1.0%くらいを考えてみるのはどうでしょうか。海外先進国では、個人の年収や企業の利益の1%くらいを寄付するというような考え方があります。年収400~500万円であれば年4~5万円、月々にならせば3333~4166円くらいの金額が1%にあたります。

この金額に近いものとして、会社員の場合、年末調整の還付金があります。所得税の源泉徴収額が多すぎた場合に過払い分を12月に払い戻してくれる仕組みです。感覚的にも「臨時収入」の気分になるので、負担感が軽くてすみます。還付金をもらえたら、これをそのまま寄付に回してみると、寄付デビューもしやすいと思います。

あなたが応援したい団体に寄付をすると税金が少し戻ってくる

寄付が可能な団体はたくさんあります。先ほど紹介したWFPもそうですし、学術的な取り組みを支援することもできます。人工衛星はやぶさの活動に感動したなら、JAXAに寄付をして新たな取り組みのサポートをしてもいいのです(ホームページには、寄付金でどのような部品が調達され、はやぶさ2に組み込まれたか紹介されていたりします)。

自分が「これは」と思う団体を選んでお金を届けることができるのは寄付の醍醐味のひとつです。自分自身が関心のある社会的テーマを考えてみてください。検索するときっとその解決を目指してがんばっている団体がみつかるはずです。

ところで、あなたが「お札」で寄付をするとその何割かは実はキャッシュバックされて戻ってきます。日本では、寄付金について税制上の優遇措置が設けられており、これは寄付金控除という仕組みです。

寄付金税額控除 ((寄付金額)−(2000円))×(所得税分40%+住民税分10%)

公益社団法人等に寄附をしたとき

寄附金税額控除の概要(個人住民税)【pdf】

仮に1万円の寄付をして、税額控除を選択すると4000円が節税になります(所得税分が還付され、住民税分は翌年の納税額から減額)。これはつまり、国や自治体に払うはずだった税金4000円分の負担が減り、その分があなたの応援する団体に回ったと言い換えることもできます。

あなたが寄付という行動を起こすと、それは国にもお金を出してもらうことができるのです。「もっとJAXAに国は助成金を出すべきだ!」と思ってもなかなか動いてはくれませんが、あなたのアクションで国のお金は動いてくれます。これも寄付のちょっとおもしろいところです。

なお、寄付金控除の還付は、確定申告で行います。といっても難しいことはありません。寄付団体から領収証を受け取り、国税庁のサイトで必要事項を入力すると確定申告書は自動的に計算、作成されますので、印刷して送付すればOKです。

同じ寄付金控除でもふるさと納税はちょっと違う寄付の仕組み

ところで、寄付と言えば「ふるさと納税」を思い浮かべる人も多いと思います。なぜならふるさと納税も、寄付金控除の仕組みを用いて税金の計算をするからです。

しかし、ふるさと納税はここまで述べてきた寄付とは分けて考えておいた方がいいかもしれません。というのは、ふるさと納税は本質的に「納税額のつけかけ」の性格と「換金性のあるお礼目当て」という性格があるからです。

ふるさと納税を簡単にいえば、あなたが今住んでいる地域に本来納めるはずだった税金を、他の地域に移し替えることでおみやげをもらう仕組みです。特に首都圏の場合、その分税収が減少しており、行政サービスの維持に支障がでかねない状態です。

それでも「自分を幼少時育ててくれたふるさとに納税したい」「自分が老後には住むふるさとに納税したい」というのならまだ分かりますが、現在のふるさと納税は返礼品を目的としたサービス競争になっていることが問題視されています。またふるさと納税額の多くが、地域に還元されず広告宣伝費として流出しているともいわれます。

もちろんふるさと納税は法的に認められている制度ですから、利用が許されないわけではありません。しかしここでいう「寄付」の心とはちょっと違うものとなっていることは指摘しておきたいと思います。

”投資と寄付を分ける”という考え方もあり。スタイルは自分で選ぼう

前回の連載記事ではエシカルな投資としてESG投資の話をしました。投資をしつつ、それが世の中が良くなる取り組みの一助となるようにしてみよう、というテーマでした。こちらと寄付との関係はどうでしょうか。

エシカルな投資、ESG投資は、投資を通じて社会をよりよくしていこうというアプローチであり、社会をよりいいものにするという視点は寄付と近いところがあります。

しかし、寄付はあくまでリターンを求めないところに特徴があり、最終的には投資元本の増減や配当などを意識する投資とは性格が異なるものです。

あなたがもし、寄付をしているのであれば、投資は純粋に投資として行い、社会貢献の取り組みは寄付によることとして分担をする、という考え方もあります(私はこの方針を採用しています)。

もちろん寄付の取り組みも行いつつ、エシカルな投資のアプローチもあわせて行う方法もあります。

どちらを採用するかはみなさんの心次第です。ただしあまり無理をしすぎる必要はありません。自分の気持ちがよりスッキリする方を選択してみてください。

今年のクリスマスは、寄付デビューをしてみよう

寄付をするとそのお金は戻っては来ません。その分、何か買い物をする軍資金が減ってしまいます。配当も値上がりもありません。しかし、心が少し温かくなります。

寄付をする時期があるとしたら、私は年末だと思います。クリスマスシーズンになって、聖なる雰囲気とハッピーなイメージが高まってくるこの時期だからこそ、誰かにもその幸せをお裾分けしてみるのが寄付というわけです。

先に述べた年末調整の還付金が12月にも入ってくるというのもタイミングとして最適です。また、寄付金控除の手続きをするのは翌年の確定申告時なので、忘れないうちに2月に手続きをすませることもできます。

私も10年くらい、寄付を続けています。その年の売り上げはアップダウンするので金額は一定しませんが、気持ちだけでもと毎年12月の寄付を続けています。

私は「子どもが教育を受ける機会」を支援したいと考えていて、WFPの活動支援に行き着きました。WFPは新興国を支援するイメージがありますが、実は3.11の大災害時などは日本国内でも食糧支援を行ってもいます。

皆さんもぜひ、自分が寄付をしてみたいと思える団体や活動を見つけてみてください。そして、無理のない金額を寄付して、気持ちよくクリスマスを迎えてみてはいかがでしょうか。

さて、このコラムが掲載される頃には徐々にクリスマス気分に街が変わり始めます。友人や職場の仲間とパーティをしたり、プレゼントを交換するようなイベントは、クリスマスならではです。(今年は残念ながら感染抑止のため、パーティはいつもより控えることになりそうですが)

家族のある人は、夫婦で、あるいは子どもとクリスマスというイベントを楽しみます。サンタクロースを信じている子どものために内緒でプレゼントを購入し、眠っている子どもの枕元にそっと置くときの幸福感は他に代えがたいものです。

今年は、こうしたクリスマスイベントに「寄付」をひとつ加えてみてください。

金額はできる範囲でかまいません。しかし、その気持ちはきっと届きます。あなたや周囲の人たちの笑顔に、どこかに暮らす誰かの笑顔も加えて、クリスマスの聖なる日を迎えてみてはいかがでしょうか。