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事故を起こしても2割は補償外、ウーバーイーツ配達者を取り巻く状況は

経済とお金のはなし 伊藤 寛

事故を起こしても2割は補償外、ウーバーイーツ配達者を取り巻く状況は

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監修・ライター

Uber Eats(ウーバーイーツ)の勢いはとどまることを知らない。日本国内でのUber Eatsの登録店舗数は今年に入って2万を超えた。配達パートナーに登録した20代の人も多いだろう。ただ、万が一の際の補償の少なさに不安を抱く人も多いのではないか。本場アメリカでの配達パートナーの待遇にも触れつつ、日本国内で安心して配達するための方策を探ろう。配送料定額化の影響にも言及した。我々は「配達パートナー」として食事を安全に運び、稼げるようになるのだろうか。

配達者は「2万人超え」登録店舗も2万店に

まずは配送でのお金の流れを改めて整理しよう。客からデリバリー注文を受けると、店舗側がデリバリー料金(メニュー代)のうち35%をUberに、配達料(店舗により異なる)を配達パートナーに渡す。

配達パートナーは受け取った配達料のうちの10%をUber Eats側に渡す形をとっているとされる。つまりUberは店舗からメニュー代の35%と、配達パートナーから配送料の10%を受け取っているのだ。

一連のお金のやりとりを代行するUber Eatsは時間帯や場所によって価格が変動するダイナミックプライシングを採用して報酬額を変動させているが、配達パートナーから徴収する10%の割合は変わらない。

Uber Eatsは新型コロナウイルスの感染拡大でスポットが当たり、9月末時点で28都道府県に参入している。日本でも今年7月時点で配達パートナー登録が2万人を超えた。登録店舗数が1万を超えたのは19年6月。わずか1年で1万店が新規登録したことになる。今年2~3月には一気に3000店舗が登録した。

日本国内での補償は「2割除外」

事故を起こす自転車ドライバー
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隆盛を見せるUber Eatsだが、配達パートナーが高速道路を自転車で走ったとの報道も続出。また、配達パートナーでつくる労働組合によると事故も32件報告された。

問題は件数ではなく、事故に対する補償だ。配達パートナーでつくる労働組合、ウーバーイーツユニオンの調査によると、事故に見舞われたケースのうち、2割が補償の対象外とされたという。配達パートナーとUber Eatsの間で、会社でいう「団体交渉」が未整備の状態。今後この率が劇的に改善するとも限らない。母数は少ないとはいえ、配達パートナーにとっては不安要素といえる。

アメリカでは従業員待遇への改善を促す動きも

本場アメリカでの待遇はどうなのだろうか。タクシー配車サービス「Uber」のドライバーに関する動きが参考になるだろう。

Uber Eatsが生まれたアメリカでは、配車サービスの「Uber」運転手として、業務委託で働くカリフォルニア州の配達者を正規雇用で扱うよう促す州の法律が2019年1月に出た。同州では業務委託で働く人にも従業員と同様の労働環境を整備するよう努めている。ただ現状、この州でも雇用形態や賃金、補償関連での改善は見られないようで、州の最高裁とUberの議論は続いており、サービス一時停止の可能性すらある。

日本で同様の動きが起こる可能性は未知数だが、いずれにせよ配達パートナーが「従業員」と見なされるにはかなりの月日が必要であることは間違いないだろう。

「配送定額化」によるマイナス影響はない

配達パートナーにとって、気になるのは配送料を一律に据え置く動きではないか。Uber Eatsは8月、月に980円を支払えば、 1200円以上を注文した際の配送料が無料になる「Eatsパス」の導入を発表した。

配送料定額化の配達パートナーの報酬への影響に関しUber Eatsは発表していないが、パートナーへの報酬体系は変化しないというのが大方の見方だ。その理由として、日本国内ではUber Eatsが、各都市で大きなシェアを握るために先行投資し、定額化しても取り分は変えず、仮に損が生じたとしてもUber Eats側で補填する見込みだからだ。

これは推測だが、競合が次々に参入する中、Uber Eatsも配達パートナーをとどめておくことは必須の課題。特に報酬面では配達する側に損をする印象を与える施策は打ちにくいのではないか。少なくとも「先行投資」の段階で報酬を引き下げるような動きはないだろう。

配達するなら自身でも備えを

お札と松葉杖をつく人のミニチュア
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とはいえ、補償制度が完備していない現在は配達する側にとって不安だろう。待遇改善に向けた動きはある。Uber Eatsは三井住友海上保険と組み、10月から障害補償制度を拡充した。ヘルメットを着けていれば事故時に2万円を給付するほか、入院時、もしくは手術時の給付金を拡充する。

配達パートナーにとってはうれしい話にも映るが、ウーバーイーツユニオンのいう「2割適用除外」は気になる。Uber Eats側が用意するものとは別の補償メニューも自身で用意しておきたい。

会社に属していなければ受けられないような福利厚生サービスを個人事業主などに提供しているフリーランス協会も、Uber Eatsと組んでサポートするプランを6月にスタートさせている。入院で1日1000円、通院日額500円を補償する。業務外に限るが、オプションで最大4000万円の補償も付く。額はもちろん小さいが、同協会が展開するフリーランス向けの福利厚生サービスが一通り受けられることを考えれば加入しても損はないのではないか。年会費は1万円とやや高めだが、業務委託で働く人をトータルでサポートする同協会のサポート内容はDiDiフードやWoltやfoodpandaなど別サービスで働くことになった際にも生きるはずだ。

また、「ウーバーイーツユニオン(https://www.ubereatsunion.org/)」など配達パートナーの支援組織がある。配達を始める前に使える支援がありそうだと判断したならば、ちゅうちょなく活用しておきたい。もちろん自転車で配達するならば、Uber Eatsの言う「ヘルメット」も忘れずに。

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