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自動車オートライト義務化で「思いやり」がアダに?あおり運転厳罰化前に変わっていた車の制度

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自動車オートライト義務化で「思いやり」がアダに?あおり運転厳罰化前に変わっていた車の制度

【画像出典元】「iStock.com/y_carfan」

自動車のあおり運転が社会問題となり、改正道路交通法で厳罰化されたことが話題となった2020年6月。危険行為には免許停止等の罰則が科せられます。しかし意外と知られていないのが、同じく4月に決まった自動車の「ライト」に関する事情です。

道路運送車両の保安基準が改正されたことにより、2020年4月以降に発売される新車に対して、「オートライト」の装着が義務化されています。

このことで、ドライバーにどんな影響があるか、また古い車種はどうなるのか、停車中の「思いやり消灯」はどのような扱いになるか、などの疑問についても解説します。

2020年4月より発売される新車は「オートライト」が義務化

夜道を青白いライトを付けて走行する白い乗用車
【画像出典元】「iStock.com/kurmyshov」

「オートライト」というのは、ヘッドライトのロービーム(すれ違い用前照灯)を、周囲の明度に応じて、自動(オート)で点灯&消灯する機能のことを指します。

オートライトは、実は意外と昔からある機能で、国内ではトヨタ・セルシオ(レクサス・LS)などの高級車が、平成初期頃から既に採用していました。

とはいえこれまでのオートライトは、高級車向けの豪華装備といった扱いであり、全ての車に搭載されていたわけではありません。

それが今回、「道路運送車両の保安基準」が改正されたことにより、2020年4月以降に発売される新車に対しては、高級車だけでなく基本的に全ての車に装着が「義務化」されます。

<オートライトの装着が義務化される対象車種>
・一般的な乗用車の場合、新型車は2020年4月以降、継続生産車は2021年10月以降に販売されるもの
・マイクロバスなどの定員11 人以上の乗用車、もしくは商用車で車両総重量 3.5t 超のものは、新型車が2021年4月以降、継続生産車の場合2023年10月以降に販売されるもの
・軽トラックやハイエースバンなど、小型商用車は対象外

また、従来のオートライトは、トヨタや日産、BMWなどメーカーごとに、「点灯時の明度」や「応答速度」などの仕様がバラバラでしたが、今回の法改正により、2020年以降に発売される新車では、メーカー問わず次のように統一されます。

<オートライトの仕様で統一化されるもの>
・周囲の照度が1000ルクス以下になると、ロービームが2秒以内に点灯しなければらない
・周囲の照度が7000ルクス以上になると、ロービームが5秒~300秒以内に消灯しなければらない
・ロービームの手動でのOFFは廃止(一部条件下を除く)

なぜ法改正されたの?

オートライトの義務化の背景には、夕方や冬季の交通事故の多発などが関係しているようです。

特に最近は、日夜問わず明るく見やすい「自発光メーター」を採用する車が増え、昔ながらの「夕方になってメーターが見づらくなったのでライトをONにする」という習慣が減りつつあります。そのため17時~19時頃に発生する事故が急増傾向にあります。

このような背景から、2016年10月、国土交通省により「道路運送車両の保安基準」の改正が行われ、今年2020年4月より晴れて施行されることになりました。

義務化によって変わることは何か、罰則あり?古い車はどうなる?

オートライトが義務化されることにより具体的に何が変わるのか、ドライバーにどのような影響があるのかを解説していきます。

古い車に乗っている人は特に影響なし

白いボディの古い外車のコンパクトカー(フォルクスワーゲン旧ビートル)
【画像出典元】「iStock.com/tupungato」

今回の法改正は、あくまで2020年4月以降に販売する「新車」に対してオートライトの装着を義務化するものであり、どちらかといえばドライバーよりも、製造メーカーに対する法令です。

2020年4月以前に発売された「古い車」に対しては、オートライトの装着は特に義務化されておらず、オートライトを装着していなくても車検などは問題なく通ります。

古い車の場合は、ライトの使用方法もこれまでと同じであり、夜間になったら手動操作でロービームを点灯させる形となります。

新車はロービームのOFFが自由にできなくなる

自動車のライトONOFFレバー
【画像出典元】「iStock.com/Birdlkportfolio」

2020年4月以降に発売される新車は、オートライト機能がありますので、従来のように自分の好きなタイミングでロービームをOFF(消灯)することはできなくなるようです。

ドライバーはライトの点灯&消灯を手動操作する必要はなくなり、夕暮れ時になり周囲の明度が下がればシステムが自動的にロービームを点灯、日中で周囲の明度が上がれば自動的にロービームが消灯する形となります。

ただし例外として、次のような条件下ではロービームを手動でOFFにすることができます。

<ロービームを手動でOFFにできる条件>
・駐停車時
・ハイビーム(ライト上向き)への切り替え時
・フォグランプの点灯時

「思いやり消灯」をした場合は違反になる?

雑居ビルの立ち並ぶ大通りで信号待ちするタクシー
【画像出典元】「iStock.com/Joel Papalini」

「思いやり消灯」というのは、夜間の交差点で信号待ち停止をする際などに、対向車や前走者に配慮するため、あえてロービームを消灯する行為のことを指します。都内の繁華街の交差点などでは、今もよく見かける行為ですね。

思いやり消灯を運転マナーとして行っている人も多いですが、夜間の道路上で消灯を行うと、交通違反に該当する可能性があります。

ー「車両等は、夜間、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない」ー(道路交通法 第52条第2項「灯火の制限」より引用)

ただし、実際のところは警察側も半ば容認しているグレーゾーンとなり、思いやり消灯で取り締まりに合うことは少ないようです。

今回の法改正でオートライトが義務化されたとしても、直接関係するものではなく、引き続きグレーゾーンという扱いとなるでしょう。

ただし今後オートライト装着車が普及すると、あえて手動で思いやり消灯をする車というのは必然的に減ってくると思われるので、そうした中で思いやり消灯をするとこれまでよりも目立ってしまうというリスクは生じてくるでしょう。

停車中の「思いやり消灯」も違反?ドライバーとしての注意点は

今後、オートライト装着車を運転することになった際における、ドライバーとしての注意点をいくつか紹介していきます。

「ハイビーム」への切り替えは手動であることを忘れずに

オートライトの機能で自動点灯するのはあくまでロービームです。

前方の視界が悪い時などには、状況に応じてロービーム→ハイビーム(ライト上向き)へ切り替える必要がありますが、こちらは従来通り手動で切り替える形となりますので、その点は覚えておく必要があります。

ちなみに、日本ではロービームでの走行が当たり前となっていますが、本来は道路交通法上でも、対向車がいる場合や先行車の直後を走行する場合などを除き、原則としてハイビームで走行するルールとなっています。

オートライト非装着車の運転時に注意

オートライト装着車に慣れてしまうと、従来のオートライト非装着車を運転することになった際に、ライトON/OFFの操作自体を忘れてしまう恐れがあります。

知人友人の車を運転する際や、旅行先でレンタカーを運転する際などには、オートライトが装着されているか否かを、運転前によく確認するようにしましょう。

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以上、オートライトの義務化について紹介しました。

今後、オートライト装着車が増えることにより、ライトを点灯し忘れて走る自動車が減り、より安全なクルマ社会が期待できます。とはいえ2020年4月以前の古い車は、これまで通りオートライトは非装着のまま走行することになるので、街ゆく車のほとんどがオートライトを装着する時代になるには、もう少し時間がかかりそうですね。