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国民年金保険料は免除できる!未婚のひとり親も対象に

そなえる 白浜 仁子

国民年金保険料は免除できる!未婚のひとり親も対象に

【画像出典元】「iStock.com/itasun」

国民年金を納める立場である自営業やフリーランスは、毎月1万6410円(平成31年度)の年金保険料を納めるようになっています。これは収入の大小に関係なく一律です。では、病気や障がいがあり、納付が難しい場合や、離婚や死別などによりシングルマザーやシングルファーザーとなり年金を支払えない場合はどうしたらいいでしょうか?

そのまま知らんぷりして滞納する…というのはあなたが思っている以上にリスキーなのでおすすめではありません。今回は、国民年金保険料の支払いが免除される、お得で助かる制度を紹介。申請の条件や手続き、必要なことをお伝えしていきます。

国民年金保険料の免除制度とは?

日本の公的年金制度は、国民皆年金といわれ、全員が必ず加入して年金保険料を納めなければなりません。しかし、毎月の支払額は1万6410円と決して安いとはいえません。年金は20歳から60歳になるまで加入義務があり、20歳になったばかりの大学生も同様です。でも、現実的にほとんど収入がない学生が、年金を納めなければならないのは酷な話。代わりに親が納めることもできますが、教育費がピークを迎える時期なので負担感は否めません。

他にも、たとえば失業して収入がなくなった人や、離婚によって専業主婦からパートとなるシングルマザーもいます。そんな状況でも国民年金保険料を納めなければならないのでしょうか?その場合は、支払いが見送られる免除制度があります。一定の要件を満たしている人は誰でも、手続きをすれば受けられるようになっています。

国民年金保険料を免除するメリット、デメリットは?

料金支払いの滞納
【画像出典元】「iStock.com/Rawpixel」

では、免除制度を利用した場合のメリットとデメリットをみていきましょう。

●メリット
毎月の負担が減るため、家計が安定する

●デメリット
保険料を納めている人に比べ年金が少なくなる

ただ、保険料を納めないといっても免除と滞納では全く意味が違います。前述のように、免除を受けると将来の年金は減額されますが、実は同じ未納でも滞納をしている人ほど減りません。これは非常に大きな違いです。

なぜ滞納している人ほど減らないかというと、あなたの年金の一部を国が支払ってくれているからです。毎月支払う年金保険料1万6410円は、個人が負担するものですが、実は同額が国から補填され将来の年金につながっているのです。免除の手続きをした人は、自分が支払う年金保険料は免除されるものの、国の補填分はこれまでと変わらないのです。

少し分かりにくいので、免除された場合と滞納した場合を、具体的な年金受給額で比較してみます。

国民年金は20歳から40年すべての期間納めた場合に年間78万100円(平成31年度)もらえます。このうち半分は国が負担してくれているわけですから、仮に40年間ずっと免除を受けて全額支払わなかったとしても半分の約39万円は受け取れるというわけです。滞納している人は国の補填もありません。つまり40年滞納が続けば年金はゼロ。そういう意味で、滞納に比べて免除の方がメリットは大きいのです。

もちろん払えるようになったら未納分を納めることも可能です。滞納は2年前までしかさかのぼれないのに対し、免除は10年前までさかのぼれます。また、年金は老後だけでなく遺族年金や障害年金として、万が一のときに生活を支えてくれるものでもあります。免除と違い滞納は加入期間として認められませんので、遺族年金や障害年金の受給要件を満たせなくなる可能性もあります。もちろんベストなのは保険料を納めることですが、払えないなら免除を受けることは大きなメリットであることが分かります。

国民年金免除のための条件や承認基準は?

免除制度は、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除と4種類あります。世帯の各々の所得で判断されるため利用できる免除は異なります。また、学生はこの免除制度は利用できず「学生納付特例制度」となります。その他にも免除制度より所得基準の対象となる範囲が世帯ではなく夫婦のみで良いという50歳未満が対象の「納付猶予制度」もあります。これは、所得が多い両親と暮らしているケースなどで免除制度の要件が満たせない場合に利用するといいでしょう。

以下が所得基準です。

<免除制度>

1.  全額免除
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

2.  4分の3免除
所得78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

3.  半額免除
所得118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

4.  4分の1免除
所得158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

*前年所得が、上記の範囲内であること
*本人・世帯主・配偶者 各々の所得審査が必要です。

<学生納付特例制度>
118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等
*本年度の本人の所得基準が上記の範囲内であること
*学生は免除制度は受けられずこちらの特例制度が適用されます

<納付猶予制度>
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
*本人・配偶者 各々の所得審査を行います

学生納付特例制度や納付猶予制度を受けた場合は、免除制度のような国庫負担分の年金額はありません。

シングルマザーは国民年金保険料が免除になるってホント?

母親と子供
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令和3年度から、寡夫や未婚のひとり親も全額免除の対象となる予定です。全額免除は所得要件以外に、①~➂に該当する場合も対象となります。

①世帯のいずれかが生活保護法による生活扶助以外の扶助等を受けるとき
②障害者・寡婦であって、年間の所得が125万円以下であるとき
➂その他保険料を納付することが著しく困難であると認められるとき(失業、天災等) など

今回、これらのうち②に「未婚のひとり親」や「寡夫」が対象に加わります。
以前は、女性が離婚や死別となった場合で前年の所得が125万円以下の場合は年金が免除されるという内容でしたが、近年は、結婚をせずに子供をもうける人も増えていることから、ひとり親で前述のような一定の所得以下の場合も年金が免除されるようになりました。

また、合わせて離婚や死別の女性(寡婦)しか受けられなかった本来の制度も見直され、同じ状況であれば男性(寡夫)も適用されるようになります。古くからある年金制度が、徐々に時代に合ったものに変化してることが分かります。

国民年金免除のための申請方法や必要書類は?

免除の申請は、最寄りの日本年金機構や役所の年金窓口で行います。書類を取り寄せて郵送で手続きすることもできるので、窓口に行く時間がない人でも安心です。

申請書類はこちらからもダウンロードできます
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kokunen.html

必要書類は、
・年金手帳または基礎年金番号通知書
・前年度の所得を証明できる書類
・雇用保険受給資格証、雇用保険被保険者離職票のコピー

などです。免除を受ける理由により異なりますので日本年金機構や役所に確認しましょう。

日本年金機構 電話での相談窓口はこちら
https://www.nenkin.go.jp/section/tel/index.html

国民年金が支払えなくなったら滞納ではなく必ず免除手続きを

これまで見てきた免除制度は、国民年金を支払う立場の人、つまり自営業者やフリーターなどの場合です。会社勤めで厚生年金に加入している人は、厚生年金保険料を給与(標準報酬月額)や賞与(標準報酬額)に対して18.3%の一定率を労使折半で納めるため免除制度自体ありません。

また、年金は10年以上加入していなければ1円ももらえません。免除の期間は通算で10年必要ですが、滞納はもちろん納付猶予制度や学生納付特例制度は通算されないのでこれも抑えておきましょう。いずれにしても、国民年金を支払えなくなったときには、滞納にせず必ず手続きをするのが賢明です。