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転職時は住民税に注意!103万円ギリギリ狙いは課税されることも

ふやす 内山 貴博

転職時は住民税に注意!103万円ギリギリ狙いは課税されることも

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今回のテーマは転職・退職に伴う住民税についてです。所得税や住民税といった税金制度自体、難しくてよく分からない人も多いでしょう。転職した時の手続きとなると、よく分からないままでは、なおさら大変です。そこで、今回は転職時に知っておきたい住民税について、順を追ってお伝えします。新卒で社会人1年目の方も来年からかかる税金なので、参考にしてください。

「えっ、こんなに高いの!?」退職時の「住民税あるある」

住民税は、所得税の確定申告後に決まる地方税

税金
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私たちが納税している代表的な税金に所得税と住民税があります。大きな違いは、所得税は国税であり、住民税は1月1日時点に住んでいる地域に納める地方税であるということです。また所得税は5%~45%の超過累進税率となっていますが、住民税の場合は一律10%(道府県民税4%、市町村民税6%)となっており、また、所得金額に関係なく年額5000円程度の均等割が加算されます。それ以外にも細かい違いがいくつかあります(住民税の税率内訳や均等割額は自治体によって異なります)。

住民税の納付方法は?新卒1年目は0円のワケ

住民税は納付方法も所得税と異なります。所得税は1年の所得を確定申告する「申告納税方式」が原則ですが、住民税は「賦課課税方式」となっています。少し分かりにくいですよね?

所得税は、自分で「これだけもうけました」と申告してくださいというルールで、皆さんが申告したデータを各自治体が用いて、住民税を計算しています。よって、住民税の納税額は自治体が計算してくれて、納付書が自宅に届くのが原則です。これを「賦課課税方式」といいます。

この流れでもお分かりのように、所得税の確定申告シーズンは2月16日から3月15日。よって、3月中旬に確定した1人1人の所得データを自治体が利用して計算しているため、住民税は計算が終わった後、新年度の6月から納付することになるのです。

新卒1年目には住民税は課税されなかったのに2年目から住民税が課せられたという経験がある人は多いと思いますが、それはこういった事務・計算が関係しているのです。

住民税の原則は納付書が届く「普通徴収」、現在は天引きの「特別徴収」が一般的

ここまで読んで、「私は納付書が自宅に届いたことがない」そもそも「所得税を確定申告したことがない」という人が大半だと思います。そう感じた人は、おそらく会社勤めをしているからだと思います。

会社員や公務員の場合、毎月の給与から所得税が源泉徴収され、年末に年末調整を行うことで課税関係が終了する場合が多いため確定申告をする必要がないのです。言うなれば会社が代わりに申告手続きをしてくれているのです。そして、住民税も同様に会社に住民税額の通知が届き、会社が所得税と同じように徴収してくれるのです。

以前は、会社(事業所)の規模によっては住民税の天引きを行わないというケースもありましたが、現在は各自治体が事業所での天引きを推進しているため、「所得税・住民税どちらも天引き」という人が多く、自宅に納付書が届かないのです。

なお、納付書が届き自ら銀行などで納付する方法を「普通徴収」といい、会社が天引きして徴収してくれる方法を「特別徴収」といいます。この名前からも納付書が届く普通徴収の方が原則なのですが、特別に徴収をしてもらっているということが分かると思います。

転職・退職した場合の住民税はどうなる?所得の違いがポイント

転職したからといって転職先での住民税額が変わるということはありません。先述したように前年の所得をベースに、翌年の6月~5月で納付(天引き)しているため、転職後も、確定している納付額を次の5月まで払うことに変わりはありません。転職によって収入に変化がある場合は、転職した年の翌6月以降の住民税額が大きく変わる可能性があります。

転職先・退職のタイミングによって納付の方法が変わる

納税
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納付額はすぐに変わらなくても、毎月住民税を徴収してくれていた会社を辞めることになるため、納付方法が変わります。またそれに伴い手続きが必要になる場合もありますので、転職のパターンやタイミングによって以下紹介します。

・退職時点で次の転職先が決まっている場合

A社を辞めるとき、既にB社に入社することが決まっている場合は、A社・B社両方に必要書類を提出することで、A社で行っていた天引き(特別徴収)をB社でも継続することになります。この方法以外では「一括徴収」と「普通徴収への切り替え」という2つの方法が考えられます。一括徴収は退職時に給与や退職金からA社にまとめて住民税を徴収してもらう方法です。

A社は毎月天引きして納付するつもりでいましたが、あなたが退職したことによって、今後お給料から徴収することができなくなります。その分を辞める際に一括して徴収してもらうのです。あるいは、原則通り「普通徴収」に切り替えてもらうことで、退職後は自宅に納付書が届くようになります。上記いずれかを選ぶことになります。

・転職先が決まっていない場合

退職する際にまだ次の転職先が決まっていない場合も原則、一括徴収か普通徴収への切り替えということになりますが、1月~4月に退職する場合は「一括徴収」され、6月~12月に退職する場合は一括徴収か普通徴収のどちらかを選択するのが一般的です。一番分かりやすいのは5月退職の場合です。

<5月退職の場合>
5月1日~5月31日に退職した場合は、5月分の給与が最後となり、その給与で1年間の住民税の特別徴収もちょうど終わることになります。よって、6月以降は自宅に納付書が届くため「普通徴収」として納付することになります。一番分かりやすいパターンです。なお、天引きされるのは6月~翌年5月の12回ですが、普通徴収の場合は6月~翌年3月の10回で納付することになるため、1回あたりの納付額が多く感じられるかもしれません。

※実際は給与の締日の関係、また会社の対応などによって、この通りにならない場合があります。

「103万円の壁」ギリギリ超えていないのに住民税が課税されたワケは

住民税でよく聞かれるのが、「103万円以内で働いていたのに、なぜ住民税が課税されたのか?」という質問です。

皆さんは「103万円の壁」という言葉を一度は聞かれたことがあると思います。「103万円までであれば税金はかからないし、扶養控除や配偶者控除にも影響がないから、この金額の範囲でパートをしよう」と思っている人は少なくありません。ただし、注意してほしいのは、この考え方は所得税であり住民税ではないのです。

住民税の場合、均等割があるため、各自治体で均等割が課せられる水準が定めてあり、給与収入のみの場合、100万や96万5000円という自治体が多いのです。よって、103万円ギリギリを狙って働いていると、住民税が課税される場合があるのです。

えっ本当?住民税決定通知書をよく見て!「住民税を減らす控除テク3つ」

意外と知らない転職が住宅ローンに与える影響、借入や返済中の注意点

普通の会社員なら、所得税よりも住民税負担の方が大きい

少し複雑な制度ですが、住民税の仕組み、そして転職の場合の注意点、ご理解いただけたでしょうか。先述したように所得税の場合、最低税率は5%で最高税率は45%に及びます。一方、住民税は固定の10%です。会社員の場合、所得税率が5%の人が多いため、住民税の負担の方が大きいのです。1年遅れで納税することになり、しかも負担の大きい住民税ということになるため、しっかりその仕組みを把握しておきたいものです。

一方、所得の多い人にとっては税率が一律の住民税の方が、負担が軽いことになります。転職を検討している人は、その転職が成功して収入も増え、「住民税の方が、負担が軽い」と感じられるようになるといいですね。